InterBEE REVIEW2012 (JP)
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78ロンドンからデジタルサウンドを導入沢口:「オリンピックにおいて、今後のバクスターさんの役割はどのようなものですか」バクスター:「これまで長い間、オリンピックのサウンド・デザインだけでなく、サウンド・プロダクション、そしてその関連技術など複数の仕事を一人で担当してきました。しかし、ロンドン・オリンピックからスタッフを増やしました。こなす仕事量が増え続けているからです。ロンドンオリンピックからは、サウンド・プロダクションのみに注力しました。将来につながっていく高品質なオリンピックサウンドにフォーカスをおいて全体を見据えています」 「ロンドンオリンピックでは、初めて中継車や関連機材をすべてデジタルで揃えました。ある人が『今までのオリンピックで最高のサウンドだった』とコメントしてくれました。それに対し、私は『そうでしょう。すべてがデジタルサウンドだったから最高の品質に仕上がったのです』と答えました」 「ロンドン・オリンピックが終わった今、次のブラジルオリンピックに向けてよりよい案を練っているところです。オリンピックの詳細を見ているうちに、自分が何をしたいかというビジョンが明確になってきます。そのビジョンに応じて技術の改善、アプリケーションの向上、各スポーツ競技団体との協力関係などを進めていきます。放送をよくするため、スポーツ競技団体に新たな提案をしていきます」沢口:「長年にわたり、オリンピックをはじめとした大規模なスポーツイベントのサウンド・デザインを続けてこれた要因はなんでしょうか」バクスター:「チャレンジ精神でしょう。簡単でないことはわかっていましたからね。そして、なぜ簡単でないのか、という理由を理解するには長い年月がかかりました。自分なりに今までと違うもっと進化させた方法で放送の仕事に携わり、またオリンピックに対してそのような思いを持ち続け、その結果として今の自分に至っており、新たに何か違った方法を!の思いもまだ生きています」 「オリンピックは人々にとって特別なイベントです。オリンピックと共により発展してきたものの一つがサウンドです。オリンピックと共に映像は目を見張るような発展を遂げてきましたが、サウンドの進化も映像に劣らぬ存在となり、多くの注目を浴びています。プロデューサーはよりよい作品作りのためにサウンドが不可欠なものであることを認識すべきでしょう」オリンピックの作業で信頼を深めたオーディオテクニカ沢口:「日本のメーカーとの連携はありますか」バクスター:「1997年に、パナソニックからの紹介でオーディオテクニカという企業を紹介され、それ以来、共同作業をしています。このときの出会いは、お互いにとってよい機会となりました。私はとても感謝しており、このよい関係をとても誇りに思います」 「私が何かを提案すると即答でOKをくれ、それに対し共に何ができるかを考えてくれました。アトランタオリンピックではじめて共同作業をし、シドニーでも行いました。例えば私が、もっとステレオマイクロフォンが必要だとリクエストすれば、1年後には用意してくれていたりと。オーディオテクニカは、私の将来に向けたビジョンに多大なる信頼を寄せてくれました」
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