InterBEE REVIEW2012 (JP)
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79家庭でテレビを見ている家族こそが大切にすべき“本当の顧客”家庭のTV視聴者が満足する音づくり沢口:「Inter BEE 2012におけるセッションで、最もアピールしたかったポイントは何ですか」バクスター:「大きなポイントは、家庭における視聴者を忘れないで欲しいということです。家庭内でのテレビ視聴は大きな割合を占めています。音響設備も整っていない、機材の組み合わせなどセットアップについてなされていない、というのが実際の状況です。我々プロは、それらの人々を常に念頭においておくべきなのです。その環境のための完璧なサラウンドというものに私はまだ着手できていません」 「私が提案しているのは、そのような環境でも十分なインパクトが感じられる4.0ミックスです。LFEは誤解されることがたびたびあります。映画におけるLFEの本来の意味は“low frequency eect”です。テレビ業界の人たちがまれに理解している“low frequency enhancement”ではありません。LFEは否定的な意見もあるようですが、私はサウンドの発展は4.0を経過していくと思います。細かい部分まで表現したサウンドさえあれば、完璧な視聴席などは必要ありません」 「今、私は、昔に戻ってステレオ3DサウンドのDSPを使うべきだと思っています。それをサラウンドフォーマットに変えるのです。後部スピーカーに装置を追加してもっとサウンドを拡げ、シアターのようにします。どこに座っていても非常にバランスのよいサウンドを得ることができます」 「この論法には反対意見もあるのですが、私は視聴位置の限界を減らす手法だと思います。全員がシアター環境にあるのでしたら必要ないのでしょうが、現実の家庭内では違います。我々は、本当の顧客、主な視聴者を忘れてはならないのです」沢口:「それは大切なポイントですね」バクスター:「一般家庭でテレビを見ている家族、これが私の本当の顧客なのです。顧客が気に入ってもらえればすべてよし。私は視聴者のためにミキシングを行っており、楽しんでもらうために、できる限りのことをするつもりです」 「この仕事は、ペインターやアーティストのように、芸術性の高いクリエイティブな仕事であると思っています。違うマイクロフォンを使用すれば、違うカラーが描けるというように。私の妻はアーティストです。そしてその妻よりサウンドはカラーであるという類似論を学びました。私達は、サウンドという美しいペイント作業を行っているサウンドスケープ(音景)クリエーターといえるでしょう」
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