InterBEE REVIEW2012 (JP)
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13 日本との交流も長く、過去20年以上にわたり地上デジタル放送の標準化に関する情報交換を日本のメーカ、技術者・研究者と交わしてきた。長期間にわたる密接な情報交流を経て、ブラジルの地上デジタル方式の基になる技術として、 日本の地上デジタル放送方式であるISDB-Tが採用されている。最近では2010年から、日本とブラジルの放送・通信の技術者・研究者により「ブラジル・日本デジタル放送推進シンポジウム」(主催:サンパウロ大学)が毎年開催されており、 SET会長(当時)のリリアナ・ナコネチニジ氏が昨年は講演を行った。■「放送市場で、より近い関係を構築へ」 今回の3社の協力について、フランコ氏は次のように語り、期待をにじませた。 「両国の関係強化は、大変緊密になっております。これまで20年にわたり、規格化についてのたくさんの情報交換・情報共有が行われてきました。日本からたくさんのことを学ばせていただきました。今回の覚え書きの取り交わしによって、さらに機会が広がると感じています。効果は早く出るのではないかと期待しています」 「昨年、日本大使館、日本領事館とともに、ブラジルでの展示会へ日本からの企業の参加を呼びかけたところ、多くの企業から反響をもらいました。ブラジルにおけるマーケティングやプロモーションについての基本的な質問もあり、多くの企業がブラジル市場に関心を持ってくれていることがわかりました」 女子美術大学 大学院教授の為ヶ谷秀一氏は「ブラジル・日本デジタル放送推進シンポジウム」に2010年から運営委員(ステアリング・コミッティー)のメンバーとして参加し、日本の放送技術を紹介するとともに、日本からのシンポジウム招待講演者のまとめ役でもある。今回の提携の意義について、為ヶ谷氏は、次のように評価する。 「ブラジルは、地理的には大変遠い国であるため、移動や輸送に負担がかかると見られ、これまで、放送・通信関係ではあまり強いつながりがあまりありませんでした。しかし、ブラジルのデジタル放送の規格に日本のISDB-Tを採用していただいて以来、日本の関連企業も頻繁にブラジルへ行き、展示会などに参加したり、ビジネスを行うようになり、非常に近い国になったというのが私の印象です」 「すでに何社かの日本のメーカがブラジルで活躍しており、SETの展示会でも日本の企業が大きな役割を果たしていると思います。今年は、日本パビリオンができましたが、そういう形でもいろいろなつながりができると思います。今後、SETとのコラボレーションによって、両国の産業界がより近づくものと期待しています」■「次世代の放送技術開発には、 両者の知恵と時間が必要」 フランコ氏はまた、展示会場での日本メーカの技術にも関心を示した。来る2014年のFITAワールドカップ・ブラジル大会や、2016年のリオデジャネイロ オリンピックなどで新たなメディアを導入する可能性について言及し、日本からの企業の参加を促した。 「ブラジルではこの10年間成長を続けております。ただし、現状ではまだ、インフラの問題を解決しなければなりません。通信もまだ整備が不十分、道路網、空港の整備などたくさんやらねばならない。乗り越えなければいけないこともたくさんありますが、同時に機会もたくさんあると考えています」 「日本は、本当にたくさんの先進技術を持っていると思います。オーディオもそうですし、ビデオもそうですが、撮影・録音関係の周辺機材についても、高精度のものがあると感じました。4Kやスーパーハイビジョンの技術も関心があります。近い将来という点で、必ず、確実にその方向に進んでいることは間違いないと思います」 「ワールドカップやオリンピックと言った大きなイベントでは、そうした新しい技術を適用していく機会があるかもしれません。そのためには、技術に加え、経済的な妥当性や、権利処理、ビジネスの構造なども含めて考えねばならず、そのためにも、より緊密に話しあう必要があると思います」 「やはり投資の金額を考えると、徐々に一歩一歩、時間をかけながら進んでいくと思うのです。国際的な規格の標準化や、さまざまな定義が必要であり、デモやセミナーによる告知、学会や説明会などの会合を経て、10年といった時間を経て進化していくことになるでしょう」 「将来技術はそうした手続きが必要ですが、まずは、今の日本の技術・製品で、私たちの展示会に参加してもらいたいと思います。参加していただくことで、いろいろなクライアントやカスタマーに会うチャンスができます。会場で会うことができれば、さまざまなアイデア交換ができます。ぜひ日本の中小企業のみなさんにも参加していただきたいと思います」
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