InterBEE REVIEW2016
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映画監督樋口 真嗣 氏15最初のステップは、SDRのHDR化 『精霊の守り人』は、制作発表の段階では、HDR化は予定されていなかった。ところが、前田氏をはじめとする技術スタッフの「今やっておかなければならない」という強い思いと、フランスで行われたMIPCOMで4Kドラマの制作の見本として出展した際にHDR化を強く望まれたことなどが相まって、シーズン1の放送直前となった時期に、HDR化が行われることに決まったという。 「まずはテストを行ったんです。色や質感が非常にリアルになったり、SDRでは白飛びしてしまうハイライトにも色が乗るといったことがわかりました。逆にいうと、ライトの減衰もはっきりわかってしまったり、明暗差も大きく見え、今までのやり方そのままでは難しいこともわかりました。そもそも放送ですから、SDRでちゃんとした映像を作るのが第一です。そのため、3つのステップでHDR化することに決まりました」(前田氏) それが、「シーズン1:4K/SDRのクリーンをベースに、グレーディングで4K/HDR化」「シーズン2:4K/SDRと4K/HDR、両フォーマットで撮影」「シーズン3:4K/HDRで撮影し、放送用の4K/SDRを作る」というプランだ。 シーズン1のHDR化を担当したのが丸山氏だ。シーズン2や3の撮影スケジュールの都合から、HDR化の時間が1か月と限られてしまうことなどから、4K/SDRでグレーディングしたものをベースに、ハイライト部分を伸長、色味を調整などしてHDR用のグレーディングを行った。ただし、破綻があったり手を加えたいというものはS-Log3の撮影データに立ち返って、HDRグレーディングし直したという。 「立体感&豊かな色彩が表現できるようになりましたね。ただ、金属の光沢などがHDRでは非常に美しいので見せたくなるんですが、逆にそこが目立って、本来見せたい俳優さんに目がいかなくなる事がある。そのバランスを考える必要がありますね」(丸山氏)ノウハウの蓄積でよりよいHDRを目指す シーズン2では、HDR担当のVEとHDRモニターを用意して、SDRと同時にHDRでの撮影を行っている。ただしまだ未知な部分が多いため、SDRでの印象を判断のベースにしているという。 「ロケだと光が潤沢に入るので、夕景や空の色がSDRの印象と大きく変わります。HDRとSDRで世界観を変えないためにVEが苦労しています。ですが逆に言えばHDRは非常に面白い画作りができるということでもありますね」(前田氏) 細かい光の強弱がていねいに描写されるのもおもしろいという。例えばスモークなどはSDRでは一様な靄になってしまうところが、HDRでは粒子の1つ1つの明暗が表現されたりする。また、人の肌や服の質感の違いもはっきりわかるため、実在感も強いという。 それらの経験を踏まえ、シーズン3では、HDRからSDRを作成するトライアル を行う予定だ。「明部や暗部を活かした画作り、という従来と違うアプローチをするだろうし、SDRでやっていた影や光の際立たせ方は HDR→SDR変換では破たんする可能性もあるので再グレーディングも考えられる」という前田氏。 シーズン2での5か月の撮影を通して蓄積したノウハウをシーズン3に生かしていく予定だ。日本放送協会技術局 番組施設部丸山 祐太 氏日本放送協会放送技術局 制作技術センター制作・開発推進部前田 貢作 氏

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