InterBEE REVIEW2016
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膨大な資料から生まれたジャングル 劇中のジャングルは実在せず、この映画のためにデザインされたものだ。イメージボードを基に、インドにて動物や植物を葉やコケに至るまで細かく丁寧に大量に撮影し、CGのリファレンスとした。 足元の小枝や葉、小石に至るまですべてCGで作り、それらを組み上げて巨大なジャングルが組み上げられている。撮影したいカットに合わせた森や川や岩場などが、1つの巨大なセットになっているというものだ。この制作にあたり、どのような苦労や工夫があったのかを聞いた。オードリー氏 「まず仕事量が多いことに圧倒されました。数多くのセットを作り込まなければいけなかったので、パニック障害になるくらいにたくさんやることがあるなって思いました。ただ、いったんセットを作りはじめると、なんとかなって、ある日魔法がかかったように終りまでこぎつけたんです」。アダム氏 「本物らしく見せるための入念な計画が、とても大切だったなと思います。少年が、ジャングルの中で動物のキャラクターと一緒にいる様子が、非常に自然でないといけないので、計画や準備を入念にやりました。 照明の当たり、少年がどこを見ているか、動物に触れているところ、動物にまたがっているところなど、少年がその世界にいるという感触を持ってもらうことが必要でした。現実感を出すところが、一番大変で、そのために入念な計画が必要でした」 プリプロダクションは2年間に及び、制作アーティストは800名以上。インドでは43カ所でリファレンスの撮影を行い、最終的にマスターセットと呼ばれる巨大なジャングルのセットを58作成。その総面積は30km2に及んでいる。 膨大な物量をベースに、非常にフォトリアリスティックなビジュアルを作り、そこに光や植物の微細な揺れなど細かなディテールを加えることで圧倒的な実在感を描いた本作。このチャレンジをおえて、次に挑みたいものを二人に聞いた。オードリー氏 「次のプロジェクトでは、今回より、もっとリアルにもっと改善したより良いものを作りたい。なぜなら、今映画を見返すと自分にとっての課題……あらが見えてしまうんです。もう少し事前に計画をちゃんとやって、そういうところがないようにしていきたいですね」アダム氏 「今回、ゲーム業界からいろいろインスピレーションをもらっています。ゲームでは、世界全体を作り上げるという部分で、非常に長けています。そのやり方を踏襲しようとして、結構難しいと気がつきました。これからリアルタイムグラフィックスなど、ゲームの技術を使って説得力を持つ映像を作りたいですね。たとえば、ライティングなども、科学的な根拠があるような作りにしたいと思っています」11世界全体を作り上げるという手法Moving Picture CompanyVFXスーパーバイザーアダム・ヴァルデス 氏Moving Picture Companyエンバイロンメント・スーパーバイザーオードリー・フェラーラ 氏
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