Inter BEE 2019

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Special 2019.08.19 UP

【Inter BEE 2019】境目のないメディア総合イベントへの集大成〜鹿野理事に聞く2019年のInter BEE〜

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今年も11月13日から15日の3日間、幕張メッセで開催されるInter BEE。国際放送機器展として55年を超える歴史を重ねてきたが、ここ数年は新しい空気が会場を包み始めている。Inter BEEをBroadmedia & Entertainment Exhibitionと位置づけ、メディアの境界を超えたエンターテインメントの総合イベントとして新たな道のりを歩み始めているのだ。その考え方や、奥底にある理念について運営事務局である日本エレクトロニクスショー協会の鹿野清理事に聞いてみた。鹿野氏は長らくソニーで国内外の営業部門を束ねてきた経験をもとに、理事就任以来Inter BEEの新しい像を作るべく奔走してきた。このイベントに込めた想いも含めて、じっくり語ってもらった。
(聞き手・文:メディアコンサルタント 境 治)

放送機器展をベースにメディア総合イベントへ

記者:今年のInter BEEはどのような方向性をめざしているのでしょう?
鹿野清氏(以下、鹿野):私どもはInter BEEについて2017年から3年間のプランを立て、放送機器展の基本は守りながらも、メディア総合イベントとしての新しい姿へ脱皮させることを目指してきました。今年はその集大成として、新しいInter BEEの形を完成させる年だと考えています。昨年は4K8Kのローンチに向けたわかりやすい変化がお見せできましたが、今年は2020のオリンピック・パラリンピックを控えてどうイベントを演出するかがポイントになりそうです。3年間かけたメディア総合イベントへのトランスフォーメーションをお見せしたいと考えています。

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記者:メディア総合イベントということは放送だけではない、ということでしょうか?
鹿野:ネットの普及に伴い放送と通信の連携は当然のことです。互いの歩み寄りや技術的シナジーをInter BEEという場でも実現したい。さらには映画やCM、WEB向けの映像などももちろん含まれます。そしてサウンドも重要です。INTER BEE EXPERIENCEでは音声の最新技術を体感してもらえますが、映像と同じようにサウンドも重視しているのはInterBEEの大きな特徴でしょう。映像と音にこだわるあらゆるメディアのイベントがInter BEEなのです。

記者:Broadmedia & Entertainment を掲げておられますね?
鹿野:国際放送機器展として歴史あるInterBEEですが、BにはBroadcastingだけでなくBroad-mediaの意味もあるのだという私どものメッセージです。3年間の計画を象徴する言葉として2017年から掲げてきました。もちろん来場者の中心は放送業界のみなさんですが、最近は例えばYouTuberのみなさんのようにカジュアルな映像制作を楽しんでいる若い方々にも来ていただいています。放送に限らず多様な分野のみなさんが垣根を越えて会話できる場にしたいです。

スポーツは今年の目玉、5Gも注目ポイント

記者:展示では何に重点を置くのでしょうか?
鹿野:ここ数年新たに加えてきた特別企画を重視しています。CONNECTED、CREATIVE、IGNITIONなど幅を広げてきました。今年は2020Tokyoを目前に、最大のテーマとしてスポーツを掲げました。INTER BEE SPORTにはとくに注目していただきたいです。スポーツは放送にとってのキラーコンテンツの一つ。それを最新の技術でどう見せてどう楽しんでもらえるか。多彩に会場でご紹介できるようにして、魅力ある展示会としてみなさんに見ていただきたいと思っています。

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記者:最大のテーマとなるスポーツでプッシュしたい要素はありますか?
鹿野:INTER BEE SPORTでは、最新のスポーツコンテンツの技術を見てもらえるように準備中です。最近はスポーツでもAIを使ったデータ分析もできるようになっているので、そうした展示も楽しみです。また初日にはセレモニーを行い、それに続いてスポーツに特化したカンファレンスを一日かけて開催する予定です。Inter BEEは国際色豊かで出展の6割が海外企業の製品、ソリューションです。スポーツは世界共通の言葉。カンファレンスでは欧米の方を招いて、キラーコンテンツとしてのスポーツについて語っていただけると思います。

記者:今年は5Gへの注目もひときわ高いと思いますが。
鹿野:そうですね。5Gは一度に送れる情報量ばかり言及されますが、大量のユーザーが一度に使えることと遅延がほとんどないことも大きなメリットです。Inter BEEは体験型の要素を重視しているので、5Gもそのメリットを体験してもらえるといいと思っています。昨年も、ドコモさんが5Gのデモができるトレーラーを持ち込んで、13Kの超ワイド映像を電送して見せていました。サッカースタジアムが周りに出現したような感覚が味わえる展示でした。今回どこまでできるかはまだ未定ですが、そうした体験をしてもらうことで、制作者の方に「だったらこんなこともやってみたい」というインスピレーションになればいいなと思います。技術先行になりがちですが、できるだけアプリケーションの形で具体的にお見せしたいです。

領域の境目をなくしてオープンイノベーションの場にしたい

記者:Inter BEEはどうしても放送業界の技術部門の人が行くイメージがあり制作など他の部門のみなさんには縁遠い感覚があるようです
鹿野:そこで今年はまずWEBサイトをリニューアルし、これまでより情報にアクセスしやすくまたこちらからのアピールも展開できるよう改良しました。またここ数年はSNSに力を入れており、Twitter、FacebookそしてInstagramでも情報発信しています。それらを通してInter BEEの新しい魅力を発信し、制作などソフト寄りの方々にも来ていただければと思っています。

記者:最近は学生さんの姿も見かけるようになりました。
鹿野:昨年、デジタルコンテンツEXPOと同時開催にしたことが大きかったと思います。あちらからお声がけいただき、同じ場所と日程で開催したことで、Inter BEEにも学生さんが来られるようになりました。関係業界のプロの来場者が多い中、Tシャツにジーンズの学生さんたちが雰囲気を変えてくれて明るくなったのではないでしょうか。昨年はあちらの会場でパーティもあったようですが、そういう交流の場ができるといいかもしれません。

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記者:プロの作り手と学生さんたちが交流すると何かが生まれるかもしれませんね
鹿野:個人的なお話をしてしまうと、私の夢は様々な境目をなくすことです。Inter BEEがそんな場になれば、本当の意味でのメディアの総合イベントになると思います。大きいところでいうと、放送と通信の境目をなくしたい。通信業界の先頭を切っている企業さんにももっと出展してもらいたいと考えています。もちろん放送業界の皆さんも既に通信について考えておられますが、課題は同じです。手を組めば新たな成長も可能のはずなのに、まだまだ壁がある。それを取っ払うチャンスとして、直接会って交流してもらえるような場を作りたいのです。INTER BEE CREATIVE MEET-UPという企画は、そんな思いから生まれた空間です。またSociety5.0を形にするにはオープンイノベーションが欠かせません。Inter BEEで映像と音を軸にしたオープンイノベーションを実現するのが、私のささやかな夢です。

記者:素晴らしいお考えだと思います。Inter BEEがそんな夢の場所になるといいですね。



鹿野氏は、物腰は柔らかで落ち着きあるキャラクターだが、湧き出てくる言葉は意外にも熱く胸に響くものがあった。境目をなくしたい。様々なメディアに関わる人びとが集まるInterBEEならかなう夢のはずだ。今年のInter BEEがそんな交流の場にもなるかどうか。それは結局、来場者次第かもしれない。新しい技術、新しい人との出会いが、幕張に訪れた一人ひとりにきっと起こるだろう。今年も、11月を楽しみにしてもらえればと思う。

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