11月18日~2021年2月26日

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Special 2019.12.16 UP

【INTER BEE CONNECTED 2019セッションレポート】「5Gが放送ビジネスに与えるインパクト」〜イノベーションではなくレボリューションだ〜

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「高速・大容量・低遅延」の5G商用サービスが来年にも始まろうとしている。4Gをはるかに凌駕するそのスペックに期待が寄せられているが、人々の暮らしやビジネスにどのような変化をもたらすかについては共有されているとは言いがたい。このセッションでは、放送ビジネスが5Gによってどう変わっていくのかを占った。5G時代でも、放送は放送でいられるのか。
(関根禎嘉)

重要なのは、社会がどう変わるか

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モデレーターを務めるのは毎日放送経営戦略室 メディア戦略部長の齊藤浩史氏。齊藤氏を挟んで、向かって左手にインフォシティ代表取締役であり、5Gモバイル推進フォーラムアプリケーション委員会委員長の任にも就いている岩浪剛太氏。総務省の放送諸課題検討会のメンバーでもある。右手にはスタイル株式会社代表取締役でWebメディア『WirelessWire News』発行人である竹田茂氏が座った。齊藤氏が「技術とサービスのオーソリティに挟まれて私が5Gについて教えてもらう」と言うとおりの配置だ。

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「高速・大容量・低遅延」が5Gの特長だ

 岩浪氏は、かねてより「5Gはイノベーションではなくてレボリューション」と提唱している。超高速、超低遅延、多数同時接続が特徴とする5Gは、各側面において「だいたい今の10倍」を実現するのだが、単に早く・多くなるだけではない。5Gがあらゆるデバイスを繋げることによって、人間と機械、現実世界、そして人間内部のインターフェースが拡大し、すべてが繋がる世界が到来する。異分野が繋がり技術革新を起こして、次々に新しいサービスが生まれていく。とは言え、4Gから5Gへの移行が一気に起こるわけではない。4Gとの混在期を経て徐々に移行していく。2024年には北米で63%、アジアでは50%が5Gに移行すると予想されている。

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5Gはインターフェースを拡大し新サービスを生む

随時会場から質問を募りながらセッションは進行した。放送と通信の垣根がなくなることを心配する質問が多く寄せられた。「社会がどう変わるかをお話しいただきたい」と齊藤氏は武田氏に振ったが、開口一番「私の立場からすると5Gが普及してほしいわけではないし、放送業界と利害関係がない。ユーザーとしては5Gかどうかはどうでもいい」と切れ味が鋭い。すでに先進国ではなく、周りの国に追い上げられることを前提とせざるを得ない日本では、放送にこだわるのではなく通信の伝送路を活用するべきだという。齊藤氏は「放送の伝送路が5Gに置き換わるか?」と、客席の多くが気になっていたであろう質問を竹田氏に投げかけた。氏の答えは「置き換わると思う」というものだ。そうなった時に生き残るのは地方局だと言い、画面を見ていなくても伝わる「音」が重要になってくると述べる。
 

記号ではなくフィジカルで繋がる時代へ

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5Gは多様な映像サービスが実現する

5Gの低遅延技術によって伝送されるのは映像や音だけではない。たとえば、触覚情報もそうだ。人間の指先の鋭敏な感覚を伝送することも5Gでは現実的になると竹田氏が岩浪氏との共通の意見として見解を紹介した。齊藤氏はこの変化を「記号で繋がる時代からフィジカルの時代」と表現した。そうなれば当然、人の物の感じ方は変わっていく。民放が生業にする広告は記号表現だった。5Gの時代になると「広告ビジネスがなくなるんですよ。電通みたいな会社はいらなくなる」と竹田氏は直言。フィジカルな感覚で伝送される時代は、森羅万象すべてが広告になる時代だ。こうした変化を、実は私たちはすでに経験している。それはスマホの出現だ。岩浪氏は「スマホを持っているユーザは超能力を持っているのに近い。なにしろいろんなものがトラッキングされ、フィードバックが常にかかる」と語る。行動トラッキングの問題は起こってはいるが、最適化の結果、広告を超えてユーザーを動かすことを保証するビジネスが生まれてきてもおかしくないと岩浪氏は予測する。

議論が佳境に入り、竹田氏から齊藤氏に「5G時代に放送局はこう変わったらおもしろいというのがあるなら、それは何ですか?」と逆質問が繰り出された。齊藤氏は戸惑いながら「関西の人間がプライドを持って繋がれることをやりたい」と答えるが、「抽象的なことを言うが具体的には?」と竹田氏は突っ込む。「その地域で忘れていることを伝え続けることも繋がること。25年前の地震を伝えることも、地域のベンチャーを取り上げることも。そういう持続性、土着性は繋がり」と齊藤氏が応じた。「それ、5Gが役に立つ気がするじゃないですか」と竹田氏が我が意を得たりとばかりに反応。そのときにビジネスモデルがどうなるのかが重要だ。5Gがコミュニケーションの形を変えれば、ビジネスも変わる。その先にあるのは、現在のマス広告主体のビジネスではなく、竹田氏の言うような「マイクロコンテンツに対する課金」かもしれない。齊藤氏も「限られた電波リソースの中で広告枠を売るということが、多品種少品目でできるようになったときに、放送局はいままでと違うことをすることになる」と展望する。「ゼロからものを作ることをやってきたという自負はある。世の中に提供する価値に戻れば生き残れる」(齊藤氏)
 放送にとっての5Gのインパクトは単なるインフラの置き換えに留まらない。「全然違う秩序が5Gによって現れるということがわかった」と齊藤氏はセッションのまとめとして述べた。来たるべき新たな秩序の下で、価値観をどう転換させていくかが放送ビジネスに求められている。

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