Inter BEE 2021

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Special 2024.10.11 UP

【INTER BEE CINEMA】InterBEE 開催60回を記念して映画制作技術に特化した新設エリア、 INTER BEE CINEMAが登場! 本格的な映画ロケセットを設置、映画・ドラマ制作現場のリアルを再現!

石川幸宏:映像ジャーナリスト/INTER BEE CINEMA コーディネーター

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 今年のInter BEE 2024では、開催60回目を記念した特設エリア、INTER BEE CINEMA(インタービーシネマ)が新たにホール3に設置されます。近年、映画やドラマ作品は、ネット配信動画などテレビ以外のメディアでも作品を観る機会が増えました。特にネット上の有料動画配信サービスにおいては、人気の高いオリジナルドラマ作品は、TVドラマはもちろん、国内映画作品以上の多額の制作予算を掛けています。様々な放送の枠を越えられることから作品のモチーフや時間の概念などを越えられるので、当然ながらその品質も、より映画的な手法を用いているものが多く、撮影手法もハリウッド映画作品に劣らず、そのクオリティの高さはいまや誰の目にも明らかでしょう。

 特に2020年のコロナ禍以降、NETFLIXやAmazonプライム・ビデオ、ディズニープラス等を中心に、2018年末時点で1750万人(※)だった有料動画配信サービスの国内利用者数は、2020年末には2630万人、2023年末には3560万人へと増加しています。さらに2022年の国内における定額制動画配信(SVOD)の市場規模も約4,508億円となり、その市場シェアはNETFLIXが4年連続首位、U-NEXTが2位となりました。また利用者のコンテンツ視聴の満足度も、U-NEXTの87.5%を筆頭に、dアニメストア、YouTube Premium、Netflix、Disney+、Amazon プライム・ビデオなど、軒並み80%を超えています。これを結果を見ても、視聴されている映画・ドラマ系のコンテンツは、これまでのテレビコンテンツの質感から視聴者側も動画配信サービスのクオリティの高い質感に慣れ、それをより求めているのが現状のようです。
(※統計数字は、ICT総研2023年4月の調査資料より)

 こうした流れを受けて、2021年あたりからテレビドラマでも、映画的な撮影方法を取り入れるなど、制作手法におけるクオリティアップが試されていますが、そもそもスケジュールと予算の関係から、編集や詳細なカラー調整等が行われないことが基本だったテレビコンテンツ制作現場に、映画的な制作スタイルを導入することは難しく、これまでには無かった多くの制作プロセスや技術を変更・追加することになってきています。

 しかしそこには、いくつかの障壁があり、そもそもの使用する機材の違いもあります。例えばシネマカメラやシネマ用レンズなどの撮影機材の違いや照明技術や照明機材の違い、さらに収録後の細密な編集作業やカラーグレーディングなどの色調整などのポストプロダクション工程の違いなどです。さらに最近ではインカメラVFXや生成AIなどの新技術の導入など、品質の高い映画クオリティを実現するには多くの技術的な障壁が存在します。

 今回のINTER BEE CINEMAでは、映画・ドラマ・CM撮影等の、特にプロダクション(ロケ撮影)の制作技術にフォーカスしています。撮影・照明・美術などが実際に映画の現場で使われているプロフェッショナルな仕様を再現することで、映画とテレビの技術・製品アプローチと交流の場を創出すると共に、映画のプロの現場に直接触れることで、映像・映画を学ぶ若手クリエイターや学生など次の世代を触発し、これからの日本の映画産業・映像産業の発展を支える次世代の育成にも貢献できる場として設置されたエリアです。

⬛︎映画制作現場を革新する機材を一堂に展示

 出展対象は、映画・映像の撮影現場で使われているシネマカメラ、シネマレンズを展示。またソニー、キヤノン、富士フイルム、ブラックマジックデザインなどの最新のシネマカメラが並びます。またレンズバーコーナーでは現在、世界の制作現場で話題となっている新しい世代のシネマレンズを中心に展示され、実際にシネマカメラに様々なシネマレンズを装着しながら、その表現やルックをテスト・比較することができます。その他、プロダクション展示エリアでは、周辺機材やソフトウエアなど映画ドラマ撮影に関連する幅広い機材・技術が出展対象となっています。

 さらに想定される来場者も、映画監督、制作スタッフをはじめとする関係者を中心に、映画制作全般に関わるスタッフ関係者、メーカー技術者、カメラユーザーおよび、映像業界に興味を持つ若手クリエイターや専門学校生、大学生など、広範囲な来場者層をターゲットにしています。

⬛︎スタジオセットで有名撮影監督が毎日デモンストレーション

 INTER BEE CINEMAエリアの中心には、実際の撮影現場のロケセットを再現した『スタジオセット』を設置。毎日15時過ぎから、実際に第一線で活躍する撮影、照明、美術のプロスタッフを配して、本番さながらの映画撮影のデモンストレーションを実施予定です。
今回メインとなる撮影監督(DP)には、『HANA-BI』(北野武監督)、『パッチギ!』(井筒和幸監督)、『フラガール』(李相日監督)、『THE 有頂天ホテル』(三谷幸喜監督)、『のだめカンタービレ』シリーズなど、近年の日本映画でも多くの有名映画作品の撮影を担当された、山本英夫(JSC)氏に、実際のデモ撮影実演して頂きます。

 また照明技師には、数多くの映画、CM、ミュージックビデオで活躍されている中須岳士(JSL)氏、監督には最新ショートフィルム作品『Shoe Lover』が多くの映画祭でノミネートされている若手女流作家の、松本サキ監督を起用し、オリジナル脚本を制作。この絵コンテに沿って実際の撮影を進行しながら、毎日違ったシーンをカットに合わせた機材を変えて撮影します。特機を使った撮影法やカメラやレンズなど機材の使用法などを交えた解説ライブショーを行います。

⬛︎オープンステージでは、映画制作の現場を多視点で捉えた様々なプログラムを実施

 トークショーや企画セッションを展開するオープンステージでは、最前線で活躍する撮影・照明などのプロスタッフによるトークセッションや、幅広いクリエイターに有益な最新情報の発信、また最新の業界関連動向についてのエデュケーショナルなセッションや、次世代を触発するワークショップセッションを展開します。

 日本では珍しい撮影監督方式で撮影されている、TVドラマ『相棒』シリーズの撮影監督 会田正裕(JSC)による、TVドラマにおける撮影監督方式による効率的かつ効果的な撮影収録ワークフローの解説や、今春に米アカデミー賞の視覚効果賞のオスカー受賞に輝いた「ゴジラ-1.0」のVFXシーンの撮影現場でも活用された最新アプリの紹介、いま最前線のクリエイティブディレクター森本千絵さんと、そのクリエイティブ現場を支える照明技師の中須岳士(JSL)氏、撮影の重森豊太郎(JSC)氏による、最新CMやミュージックビデオ制作の舞台裏の紹介、さらに映像業界の働き方を改革すべく立ち上げられた「映像適正化機構」の紹介など、毎日注目のステージが展開されます。

⬛︎テーマは「Japanese Production System」

 今回のテーマとして日本映画界がこれまで構築して来た、独自ともいえる『Japanese Production System』をポジティブに体現できる場を提供します。 日本の映画制作の紹介とその伝統的な映画制作技術を発信しつつ、エンターテインメント産業分野強化の一環として、映画・ドラマに代表されるハイエンド映像コンテンツ制作分野にフォーカスし、現役の映画業界のプロフェッショナル達にアプローチしつつ、次世代も触発するシネマコミュニティーを創出します。

 従来のInter BEEのメインターゲットである放送分野からさらに拡張し、広く映画・ドラマ、CM、MVなどの分野へも、機材メーカーとエキスパートユーザーとの交流やビジネス機会の創出、次代を担う人材に向けた発信等、映画産業の発展・活性化の貢献、また海外への発信も考慮した展示内容になっています。

⬛︎次世代に向けた、新たなHUBとなる展示エリアを目指して

 開催に向けては、特にスタジオセットの設置に関して、JSC(日本映画撮影監督協会)、JSL(日本映画・テレビ照明協会)、APDJ(日本映画・テレビ美術監督協会)の業界団体の協力、後援を得て、本格的な映画セットを設計施工することで、本格的な映画撮影の現場を体現することができます。こうした狙いは、若手の映像クリエイターが大きな現場を体現することが難しい現状や、どの分野においても慢性的な助手不足が起きている現状から、業界全体への若手世代の進出を促すことも目的としてます。また様々な意味で、従来からのフィルムメーカーや映画産業関係者と、放送局関係、またWebネット系の映像制作分野などをつなげるHUB(ハブ)として役割を担えるような、コミュニティエリアとしての構築を目指します。

 映画やドラマ制作に携わる人々がINTER BEE CIANEMAに一堂に介して、アイデアの交換や新製品機材等とのタッチポイントとして、また業界人同士の交流の場として、映画制作分野の新たなコミュニティとして、一つの新たな交流のHUBとなる事を願っています。

INTER BEE CINEMA 協力業界団体
日本映画撮影監督協会(JSC)
日本映画・テレビ照明協会(JSL)
日本映画・テレビ美術監督協会(APDJ)
日本映像適正化機構

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