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Special 2025.03.06 UP

【Hollywood Report】続報:VFX大手MPC世界9カ所の全拠点を閉鎖 1万人以上が解雇へ

鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター

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2月28日の本欄で「テクニカラー、米国内にある全VFX制作拠点(コマーシャル、アニメーション)を閉鎖へ」という記事をお届けしたが、その続報である。

MPCが世界9カ所の全拠点を閉鎖

ハリウッドの各メディアの報道によれば、親会社であるテクニカラーが破綻したあおりを受け、傘下にあるVFX大手MPC(本社:ロンドン)は、世界9カ所にある全VFX制作拠点を閉鎖するという。

今回閉鎖となるのは、MPCの下記VFX制作拠点。

アデレード/オーストラリア
バンガロール/インド
リエージュ/ベルギー
ロンドン/イギリス
ロサンゼルス/アメリカ合衆国
モントリオール/カナダ
ムンバイ/インド
パリ/フランス
トロント/カナダ

この中でも、特にロンドン、モントリオール、ムンバイ、バンガロールはハリウッド映画のVFX制作拠点として知られ、大勢のクルーが勤務していた。

報道によれば、この閉鎖によって世界各地の拠点で解雇されるクルーの人数は、推定で14,600人以上に上ると見られており、まさにVFX業界史上最大規模のスタジオ閉鎖となる。

インド国内だけでも2,000人のクルーが勤務しており、現在2月分の給与が未だ支払らわれておらず、テクニカラー側とも満足に連絡が取れない状況が続いているという。

今回の一連のスタジオ閉鎖を報道する インドの報道機関NEWS 9
Massive Layoff | 10,000 Artists Lose Jobs Overnight | Technicolor Creative Studios

MPCは数々のマーベル作品に加え、映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(2019)、ディズニー映画「ジャングル・ブック」(2016)、「ライオン・キング」(2019)、「ライオン・キング:ムファサ」(2024)等のハリウッド大作のVFXを手掛けた事でも知られる。数々の受賞歴を持ち、実質的にVFX業界の最大手スタジオであった。

The Millは新会社設立へ

先日の本欄で、テクニカラー傘下でアメリカ国内に拠点を持つ The Millが閉鎖されるというニュースをお伝えしたが、その後、事態に進展が見られた。幸いな事にThe Mill はハイエンドVFX企業Dream Machine FX と提携し、新会社Arc Creativeを設立する運びとなったという。

Dream Machine FX は、複数のVFX ブランドを持つグループ企業で、Arc Creativeは高品質の広告、ゲーム シネマティクス、予告編などの短編作品に主眼を置いて設立されるという。

The Millのブランド名が継続されるかどうかは未定の状態ではあるものの、この状況下で唯一、明るいニュースと言えるだろう。

VFX業界内でも支援の動き

今回のテクニカラーの破綻の影響を受け、VFX業界内ではテクニカラー傘下のVFXやアニメーションのスタジオ閉鎖で失業した人材に対し、いち早く支援の動きが始まっている。

ハリウッドの大手VFX各社はSNS上で、「世界各地でのグローバル規模で、有能な人材を幅広く受け入れる準備がある」という告知をアナウンスしていた。

また、世界最大のVFXの協会であるVES(本部:ロサンゼルス)も、会員や企業に向けて、人材雇用を促すメールを配信するなど、業界内でのサポートを呼び掛けていた。

おわりに

2025年3月現在のハリウッドVFX業界は、ストライキの影響が依然として大きく、まだ完全に元気を取り戻したとは言えない状況にある。しかしながら、徐々に受注作品も増え始め、人材募集の投稿件数も少しずつではあるが、復活しつつある印象を受ける。

そんな中で起こった、今回の類を見ない大規模なスタジオ閉鎖は、しばらくの間はVFX業界内に大きな影と混乱を残す事が予想される。しかしながら、失業された皆様が1日も早く新しいポジションを見つけられる事を願うばかりである。

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