【Inter BEE CURATION】AI画像広告は生活者に受け入れられるのか?~生成AIを活用した広告クリエイティブへの生活者の反応を分析
VR Digest編集部 VRダイジェスト+
※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。
生成AIによる広告クリエイティブが広告効果へ与える影響やリスク
生成AIサービスはここ数年で急速に普及し、広告・メディア業界でも導入が進んでいます。特に、経費削減や作業効率化の観点から、広告クリエイティブ制作に生成AIを活用する事例が増えています。
一方で、生成AIを用いて制作した広告クリエイティブが、広告効果に何かしら影響を与えるのか、また、それに伴うリスクがあるのかどうかについては、まだ十分に検証されていません。
そこで今回、生成AIを用いて制作した広告クリエイティブが、広告効果へ与える影響やリスクを明らかにするため、実験調査を行いました。本記事では、その検証結果を紹介します。
<検証方法>
今回の検証では、ファストフード/ミネラルウォーター/旅行の3つの商品カテゴリーで、それぞれ2種類の広告クリエイティブを用意しました(図1)。
上段の3つは、フリー素材の写真画像をもとに制作した架空の広告で、これらを「実写広告」とします。
対して下段の3つは、同じフリー写真画像を生成AIに読み込ませて再現した画像を使用したもので、「AI画像広告」とします。
なお、キャッチコピーやロゴなどのクリエイティブ要素はすべて、ひと研究所が独自に制作し、実写広告とAI画像広告で共通のものを使用しています。
写真画像以外のすべての条件を揃えた上で、「購買・利用喚起」について、実写広告とAI画像広告のスコアを比較しました。
生活者は、実写広告とAI画像広告を見分けることは難しい
まず、「生活者はAI画像広告を見分けられるのか」という点について確認します。
今回の検証では、回答者一人ひとりに6つの広告の中からランダムに1枚だけを提示し、そのうえで、広告効果とクリエイティブ評価の順に聴取しました。最後に「実写広告とAI画像広告をランダムに表示していた」ことを説明したうえで、自身に提示された広告は実写広告とAI画像広告のどちらだと思ったかを質問しました。その結果が図2です。
棒グラフは、青色が正解者の割合、グレーが不正解者の割合を示しています。まず、下段のAI画像広告を提示したグループでは、「AI画像広告だった」と正解した人が6割弱〜7割となり、一定程度の正答が確認されました。一方、上段の実写広告を提示したグループでも、「AI画像広告だった」と回答(すなわち不正解だった人)が5割〜7割程度出現していました。つまり、「AI画像広告かどうか」を問うと、実写広告・AI画像広告どちらを提示した場合でも、「AIなのではないか?」と考える人が多く存在することがわかります。
このように、商品カテゴリーによって傾向の違いは見られるものの、生活者は実写広告とAI画像広告の見分けが必ずしもついていないと解釈できる結果です。
生活者にAI画像広告だと認識されると広告効果は低下する
次に、広告効果について見ていきます。
本検証では、「購入・利用喚起」を7段階で評価してもらい、その平均スコア(加重平均)を分析しています。分析は、
• 自分に表示された広告は「実写広告だった」と回答した人
• 自分に表示された広告は「AI画像広告だった」と回答した人
の2つのグループに分け、商品カテゴリーごとに比較しました(図3)。
その結果、実写広告・AI画像広告いずれのグループにおいても、自身に表示された広告は「AI画像広告だった」と回答した人の「購入・利用喚起」スコアが低い傾向が確認されました。この傾向は、「購入・利用喚起」だけでなく、「広告の印象度」や「好意度」の指標においても同様に見られました(スコアは本記事未掲載)。
これらの結果から、
• AI画像広告でAI画像広告だと認識されること
• 実写広告でAI画像広告だと誤認されること
が、それぞれの広告における広告効果の低下につながる可能性が考えられます。
したがって今後の対策としては、
• AI画像広告の場合:AI画像広告だと思われないくらい実写に近いクリエイティブなど、クオリティのコントロールや表現の工夫を行うこと
• 実写広告の場合:AI画像広告と誤認されないよう、制作過程の公開など"実写"であることを"あえて"示す取り組みを行うこと
などのアプローチが必要になってくるかもしれません。
AI画像広告を認識した人は「全体的な違和感」と「人物や背景の要素」で見分けている
AI画像広告を正しく見分けられた人は、どのような要素を手がかりに見分けていたのでしょうか。
ここでは、先ほどの実写広告とAI画像広告の判別状況(図2)のうち、下段のAI画像広告が提示されたグループの中で、表示した広告を正しく「AI画像広告と判別できた人」を対象に、どの要素からAI画像広告だと判断したのかを聴取した結果を紹介します。
商品カテゴリー別に見ると、まずファストフードやミネラルウォーターのように「人物」や「商品」がメインとなる広告では、
• 人物の肌や質感
• 表情や目の不自然さ
• 背景の構造
• 背景の色味・質感
といった項目が上位となり、人物や背景に対する違和感からAI画像広告だと判別していたことが分かりました。
一方、旅行のように背景がメインとなる広告では、
• 背景の構造
• 背景の色味や質感
• 画像全体の色味
などの項目が上位となり、背景や画像全体のトーンからAI画像広告だと判別していたことが分かりました。
また、すべての商品カテゴリーで共通して「全体的な違和感」という回答が約40ポイントと高く、明確にどことは言えなくても、漠然とした違和感をもとにAI画像広告と判別しているケースが多いことも明らかになりました。こうした「全体的な違和感」による判別は、広告クリエイティブに対する曖昧な印象からもAI画像広告だと認識・誤認されてしまう可能性につながり、明確な対策が現時点では難しいですが、今後注意すべきポイントといえそうです。
広告制作へのAI利用には「広告の無個性化」への懸念がある一方で、「先進的」との評価も
最後に、生成AIを広告クリエイティブ制作に用いることに対する、生活者の評価について紹介します。
広告クリエイティブ制作における生成AI利用に対する評価(図5)で、ネガティブ評価の項目に注目すると、「同じような広告ばかりになりそう」と3割の人が回答しており、「広告の無個性化」について特に懸念をされていることが分かります。
さらに、「手抜き感」や「信頼性の欠如」の項目についても一定の割合で懸念が見られました。これらの結果から、生成AIの活用方法によっては、広告に対する生活者の評価にマイナスの影響を及ぼす可能性があることがうかがえます。
一方で、ポジティブ評価の項目では、生成AIを活用すること自体については、「先進的である」「柔軟な考えだ」といった肯定的な評価が一定程度得られていることが分かります。
今回の調査結果を総合的に見ると、生成AIを広告クリエイティブの制作に活用することには注意すべき点がある一方で、ポジティブな受け止め方も確かに存在するという、両面性が確認されました。
まとめ 実写広告 vs AI画像広告 の検証
今回の検証結果から、生成AIを用いて広告クリエイティブを制作することの影響とリスクを整理します。
まず、生活者は実写広告とAI画像広告の見分けが必ずしもついていないと考えられます。
そして、広告が「AI画像広告だ」と認識されることは、実際にAIで作られていたかどうかにかかわらず、広告効果を押し下げる方向に作用する可能性が考えられる結果でした。
さらに、生活者がAI画像広告を見分ける際には、「全体的な違和感」に加え、人物の肌や表情、背景の構造や色味といった要素が上位に挙がりました。広告クリエイティブ制作における生成AI活用に対しては、「広告の無個性化」などの懸念がある一方で、「先進的」「柔軟な考え方」といったポジティブな評価も得られていることが分かりました。
以上を踏まえると、今回の検証から得られる示唆は以下のようになります。
実写の代わりに生成AIによる画像を使用する場合、生活者に「AI画像広告だ」と認識されないほどの精巧さを確保することが重要になります。逆に、実写を使用する際には、「実写であること」をあえて強調するメッセージを添えることで、AI画像広告との差別化として有効に働く可能性もあるといえます。生成AIのクオリティが飛躍的に伸びているからこそ、"あえて実写"であることが価値になっていくという考え方です。
また、AI画像広告を活用する場合は、商品カテゴリーとの相性も重要になります。「先進的」といったイメージが求められるカテゴリー、例えば家電やAIサービスなどとの組み合わせにおいては、AI画像広告であること自体が肯定的に受け取られる可能性があります。
本記事では、生成AIを用いて広告クリエイティブを制作することの影響とリスクについて検証を行いました。生成AIの精度向上と活用の広がりは今後さらに加速すると考えられるため、広告クリエイティブ制作における生成AI活用のメリットとリスクを適切に把握することは、広告業界において重要な課題となっていきます。
ひと研究所では、AI画像広告がどのように評価され、その背景にどのようなメカニズムがあるのかをより包括的に理解することを目指し、今後も継続的に調査結果の分析を進めてまいります。
【ひと研究所 AI画像広告調査2025年12月 調査概要】
調査日:2025年12月5日(金)~12月6日(日)
調査手法:Web調査
調査エリア:全国
サンプル:2,593
対象者属性:男女15~69才
商品カテゴリー関与:
・ファストフード広告提示グループ:ハンバーガーショップなどのファストフード店を3ヶ月に1回以上利用
・ミネラルウォーター広告提示グループ:200㎖から500㎖程度のペットボトル入りの水(ミネラルウォーター・天然水)を3ヶ月に1回以上飲用
・旅行広告提示グループ:5年に1回以上宿泊旅行に行く