米シネフェックス誌が41年間の歴史に幕
米シネフェックス誌(Cinefex 以降シネフェックス)が、今年2月に41年間の歴史に幕を降ろした。その最終号は2021年2月の発売で、172号であった。当レポートでは、筆者独自の視点から、シネフェックスの偉業や歴史、過去の広告に見るVFX業界の移り変わりなどを織り交ぜつつ、シネフェックスへのトリビュート記事として、お届けしたいと思う。
シネフェックスは映画の視覚効果&特殊効果に特化した稀有な雑誌で、1980年にドン・シェイ(Don Shay)によって随筆&創刊された。ドン・シェイは60〜70年代、視覚効果に関する記事をアメリカ及びイギリスの複数の映像雑誌に寄稿していた事で知られていた。シネフェックスの記念すべき第1号は1980年3月に発売され、当時ヒットしていた映画「スタートレック」と「エイリアン」の視覚効果の特集であった。
80年代、視覚効果はSFX(スペシャル・エフェクツ)と呼ばれていた。SFXは、ミニチュア撮影やオプチカル・プリンターによる光学合成などを駆使する事によって「普通の撮影では表現不可能な映像」を表現する技法の総称(注:現在は、爆炎やパペット操演、アニマトロニクスなど、撮影時に一緒に収録する特殊効果を差す場合が多い)であった。発刊当初のシネフェックスは、日本で言うところの「特撮好き」の読者層と映像業界のプロを対象に、SFXのメイキングを深く掘り下げ、制作したアーティストやスーパーバイザへのインタビューも踏まえて、非常に詳しく紹介していくというマニアックな雑誌であった。
書籍のサイズが、これまた独特だった。アメリカの書店で販売されている一般的な雑誌のサイズではなく、23cmX20cmという、どちらかと言えば正方形に近い特殊な形状をしていた。これは、大手ブックストアの棚に並んだ沢山の雑誌の中でも、キャッチーで目につき易く、しかもその表紙は旬のSF映画の宇宙船やキャラクターで飾られていた。この独特の書籍フォーマットは、ドン・シェイが「35mm映画フィルムのフレームのアスペクト比に近い」という理由で選んだという、心ニクいエピソードも残されている。