Inter BEE 2021

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Special 2021.05.11 UP

【INTER BEE CURATION】生活時間とメディア利用のその後-“巣ごもり”やや解消もコロナの影響は色濃く

森下 真理子/ WEB電通報

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、InterBEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、WEB電通報に4月20日に掲載された森下真理子氏の連載記事「コロナ禍を受けてメディア接触はどう変わった?」のNo.3。昨年のINTER BEE CONNECTEDでの電通メディアイノベーションラボによるセッションで森下氏が発表した調査結果の詳細と言える内容です。NO.1と2も最後にリンクを置くので併せて読んではいかがでしょう。

電通メディアイノベーションラボ編「情報メディア白書2021」(ダイヤモンド社刊)の巻頭特集の内容を一部紹介する本連載。前回は、MCR/ex調査(※1)の2020年上期・東京50km圏データを基に、2020年6月にコロナの影響下でネット系メディアへのニーズの強さとラジオや新聞が「再発見」された様子をお伝えしました。

その後、生活行動やメディア利用はどのように変化したのでしょうか?連載最終回となる今回は半年後の様子を紹介します。2020年下期調査が行われたのは、コロナ感染拡大の第3波にさしかかる時期の2020年12月7~13日です。本連載第1回記事と併せてお読みください。

6月と12月の行動データを比較する際には季節性の違いに気をつけなければならないのはもちろんですが、コロナ禍が生活行動全般に及ぼす影響が甚大であることを鑑み、本記事では2020年の2つの時点を比較しました。

※1=MCR/ex調査
ビデオリサーチ社が特定の1週間に行う日記式調査。生活者の行動を基本的な生活行動、メディア接触等の視点から、曜日別に時間軸に沿って最小15分単位で捕捉する。

生活パターンはコロナ以前へと少し戻るものの、2019年水準には至らず

2020年6月データでは、多くの人が外出を控え、「巣ごもり」ともいえる状況が見られました。半年後の基本的な生活行動を確認する目的で、図表1は個人全体(12~69歳)の、2020年6月と12月における1日当たり(週平均)の起床在宅、睡眠、外出時間を示しています。

2020年12月に外出時間は半年前より79.1分増え、逆に起床在宅時間は76.2分減少し、585.3分になりました。よって、極端な「巣ごもり」傾向が解消されている様子ですが、コロナ以前の2019年6月の起床在宅時間は519.8分であったので、生活パターンはコロナ前の水準に戻っているとは言えません。

一方、睡眠時間は2019年(441.0分)から大幅に増加した2020年6月(458.6分)から3.0分の減少にとどまっています。

【図表1】1日あたりの起床在宅・睡眠・外出時間(週平均/12~69歳)

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出典:ビデオリサーチ社MCR/ex東京50km圏(2020年6月、12月)を基に作成

自宅内メディア利用時間にも揺り戻し傾向

起床在宅時間と連動するように、自宅における各メディアへの接触時間も以前の状態へやや戻る様相を見せています。図表2は2020年6月、12月の個人全体の1日当たりの自宅内メディア接触時間(週平均)を示しています。各メディアへの接触時間の合計(重複接触を含む)は延べ370.0分から延べ325.2分に減少しました。しかし、コロナ前の2019年6月は延べ295.3分だったので、コロナ前より高い水準で自宅内メディア接触が生じていると言えます。

2020年6月との比較では減少傾向ですが、2019年6月の接触状況から比べるとインターネット、特にモバイル経由のインターネット利用に勢いがあります。また、コロナ禍において自宅での接触時間増が確認されていたラジオ聴取やテレビ受像機でのネット動画視聴(テレビ動画)に充てる時間は半年前よりわずかに減少しているものの、2019年6月水準を依然として上回っています。つまり、揺り戻しつつも徐々に増えているという結果です。

一方、2020年6月より接触時間が増えたメディアとして録画再生があります。その背景として、図表1で確認した生活行動時間の変化を挙げることができそうです。すなわち、外出機会が増えたことによりテレビ番組をリアルタイムで視聴することが難しくなった状況を反映していると推察されます。

【図表2】1日あたりの自宅内メディア接触時間(週平均/12~69歳)

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出典:ビデオリサーチ社MCR/ex東京50km圏(2020年6月、12月)を基に作成

依然として高いモバイルネットの利用率

一日の流れの中でのメディアの利用状況についても見てみましょう。図表3は朝5時から始まる24時間(週平均)における個人全体の起床在宅、睡眠、移動、外出の行動率と各メディアへの接触率(60分単位)の推移を表しています。

図表1では生活パターンの変動を時間量で確認しましたが、一日を通しての行動率からもその変化を読み取ることができます。2020年12月には黄色で示す起床在宅率の日中にかけての谷間がより明らかになり、逆に水色で示す外出率の面積が6月より広がりを見せています。より多くの人が日中に自宅の外で活動するようになり、「巣ごもり」はやや解消されている様子です。また、自宅ではテレビ(リアルタイム視聴)とモバイルネットが最もよく利用されていますが、いずれも6月と比べると夜のピーク時の接触率はやや減少という結果です。

自宅外でのメディア利用はどうでしょうか。2020年6月、12月の自宅外でのモバイルネットの接触率は、通勤・通学の時間帯にあたる朝8時台にかけて1.6%から2.3%に、接触ピークの12時台では4.3%から4.8%へと伸長しています。外に出かける機会が増え、それに伴いモバイルネットの利用にも変化が見られます。

【図表3】生活行動率とメディア接触率(週平均/12~69歳)

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出典:ビデオリサーチ社MCR/ex東京50km圏(2020年6月、12月)を基に作成。

モバイルネットが生活の中心にある高校生

第1回記事ではリモート授業等の措置により高校生の生活パターンが大きく変化し、日中を通してモバイルネットの利用率が極めて高くなった様子を紹介しました。あれから半年が経過して、高校生の生活はどのように変化したのでしょうか。

図表4は2020年6月、12月の高校生の一日(週平均)の様子を表しています。この半年で生活パターンは大きく変化し、まず外出機会が増えました。そして、外出先ではモバイルネットを活発に利用している様子が見られます。

自宅内のメディア接触率にも変化が見られます。朝の時間帯ではテレビ(リアルタイム視聴)への接触率(青線)が際立っていますが、日中、夜間ではモバイルネットへの接触率(ピンク線)がテレビを上回ります。6月と12月を比較すると、ピーク時のモバイルネット接触率は32.6%(21時台)から29.9%(22時台)へと減少しています。テレビへの接触率のピークも23.4%(19時台)から16.9%(20時台)へと減少しています。テレビの下げ幅の方がやや大きいという結果です。よって、2020年12月データでは、自宅内外においてモバイルネットが高校生にとって極めて身近なメディアであることが示されています。

【図表4】生活行動率とメディア接触率(週平均/高校生)

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出典:ビデオリサーチ社MCR/ex東京50km圏(2020年6月、12月)を基に作成

コロナ禍は私たちの生活に大きな影響を及ぼし、その影響度や収束時期を見通すことは容易ではありません。また、情報やエンターテイメントに対するニーズへの影響もこれまでの調査から感じられます。「新しい日常」への模索が続く中、人々のメディアとの関わり方に今後も注視していく必要がありそうです。

【調査概要】
 調査名:MCR/ex(エム シー アール エクス)
 実施時期:毎年6月、12月
 調査手法:電子調査票による調査
 調査エリア:東京50km圏、関西地区、名古屋地区、北部九州地区、札幌地区、仙台地区、広島地区
 調査対象者:男女12~69歳の個人(エリア・ランダム・サンプリング)
 調査会社:ビデオリサーチ



※WEB電通報よりの森下氏の連載「コロナ禍を受けてメディア接触はどう変わった?」、ぜひNo.1、No2も併せてお読みください。下のリンクから直接ジャンプできます。また、3月に発行された「情報メディア白書2021」にはこのデータだけでなく、メディア研究の最新版がより深く書かれています。ご興味あれば下のリンクからご購入ください。Kindle版もあります。

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