Inter BEE 2021

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Special 2023.02.28 UP

【Inter BEE CURATION】多様化時代を生き抜く ローカル局のこれから【VR FORUM 2022 レポート】

VR Digest編集部 VRダイジェスト+

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。

[登壇者](右から)
株式会社仙台放送 代表取締役社長 稲木 甲二 氏
南海放送株式会社 代表取締役社長 大西 康司 氏
株式会社静岡朝日テレビ 代表取締役社長 平城 隆司 氏
株式会社中国放送 代表取締役社長 宮迫 良己 氏
株式会社ビデオリサーチ 執行役員ネットワークユニットマネージャー 加治佐 康代

コロナ禍を背景にメディア環境も生活行動も急速に変化している今、ローカル放送が抱える課題やその対応策、また将来に向けた取り組みなど、全国の放送局のヒントや応援となるお話を4人の経営者にうかがいました。

目次
生活時間が変わり、メディア利用の多様化も進む

変化する環境の中、各局はどう対応しているのか

コンテンツ制作能力を、時代に合わせて横展開することに活路

当社への要望

ローカル局がこれからの時代をサバイバルするために

生活時間が変わり、メディア利用の多様化も進む

最初のテーマである「ローカル局の現状」の前に、その背景となるデータを加治佐から紹介しました。
全日のPUT(総個人視聴率)は、エリアを問わず3年連続で低下してきています。その一方で、空きチャンネルの利用率(放送波以外でテレビモニターを利用している割合)は増加傾向で、タイムシフト視聴やゲーム利用、動画サービスをテレビ画面で見る人が増えていることがうかがえます。また、生活行動では外出時間がコロナ前の水準に戻ってきています。

加治佐は「コロナに振り回されたこの3年間で、生活そのもののリズムが変わり、メディアの利用も多様化して、テレビも大きな影響を受けている」とまとめ、このような環境下で、各局がどのような取り組みをされているのかをお聞きしました。

変化する環境の中、各局はどう対応しているのか

「ローカル局を取り巻く環境は、いろいろな意味で厳しくなっている。テレビはもちろん、放送を取り巻く環境が以前とは変わってきている」と南海放送 大西氏。その中で、自社独自の取り組みと地域連携による取り組みの2つを紹介。その1つが『ワンマンDJ』です。ディレクターもなくワンマンでオペレートしながら自分で話して送出もする生番組のため、コスト削減だけでなく、話し手の個性が出ていて、ラジオ接触者が増えているということです。もう1つは愛媛民放4局による八幡浜支局の共同化という取り組みです。これによって「余裕の出た人材を特色ある企画などに回せるようになった」と大西氏。他にも4局が連携を図った動きが出てきていると言います。

中国放送 宮迫氏は、以前より年間を通したさまざまなイベントを仕掛けてきたものの、コロナ禍で思うように開催できていない中、工夫を重ねた事例を紹介。まず事業イベントでは、年末恒例の第九を歌う『第九ひろしま』をオンラインでの合唱に変えたところ、参加人数は5分の1ほどまで減少した一方、海外からの応募があるなど思わぬ成果が生まれたと言います。また、ラジオでは『ごぜん様さま』という番組の企画で、「有料(イベント)入場者+課金で配信+オリジナルグッズ販売」を試み、営業成績も良好な結果に。他にもテレビの情報番組での企画で「視聴者・生産者・販売店・放送局」各々にメリットが生まれた事例などを紹介し、コロナ禍という事もあり、配信を絡ませた事例が多くなっている中、「新しいことをやれば、新しい結果が出てくる」(宮迫氏)と述べ、手応えを感じられていました。 

「ローカル局の課題はあるが、まだまだテレビの力は強い。テレビの力を信じることが大事」と静岡朝日テレビ 平城氏。夕方の情報番組『とびっきり!しずおか』での取り組みでは、月~金の帯に加え、土日にも生放送するように拡大。その結果、地元の情報をいつでも発信できる体制ができ、災害時も迅速に対応したことなどが評価され、視聴率も非常に好調とのこと。「旧態依然とした番組制作から脱却し、地元の情報をどうやって届けるか、また、自社制作率向上を第一と考え、戦っている」(平城氏)と述べ、「何かあったら配信も含めて自分たちで発信する。情報を発信し続けることがテレビ局としての使命」と力を込めました。

仙台放送 稲木氏は、豊富な営業経験をもとに将来の広告収入を予測し、不足する部分を別の事業で補おうとされています。配信コストの減少効果のある自社プラットフォームの構築事例などを挙げ、「遊休資産(人、スタジオなど)を有効活用し、自分たちがやってきた仕事の派生から新たなビジネスを創る」と語りました。
「制作の機会が増えることで、技術も磨かれるものか」(加治佐)の問いに対し、「テレビの世界では技量の上がる場数が重要で、その場数をいかにつくるかが(自身の)仕事」と稲木氏。宮迫氏も「ファシリティ、設備などの有効利用は今後の鍵を握る」と同意します。大西氏は「配信についても、放送で培ってきたスキルに自信を持って、どう活かしていくかが大事」と述べました。

コンテンツ制作能力を、時代に合わせて横展開することに活路

続く「経営者目線から見たこれまでの課題とさらなる取り組み」のパートでも認識を共有するため、データを提示しました。日本の人口については、2011年から連続して減少し、都道府県別では10年で1割人口が減った自治体も見られます。「ローカル放送局としては、地域活性化という観点でも、広告メディアの役割としても大いに気になるところ」(加治佐)と言います。また、放送と配信という観点では、世帯内でのネット結線率(関東地区、視聴率調査世帯、2022年10月)が65%を超えました。特にコロナ以降の2020年からの伸びは顕著で、地区別でも総じて5割前後の世帯のテレビ画面で動画配信が視聴可能になっています。結線率の上昇はテレビ以外の競合への流出の可能性が広がることでもあり、テレビとしてこれをどう考えるかという課題感も挙がりました。

このように、人口が減る一方でテレビでの動画配信視聴が普及し、生活者が便利に使いこなしている中、各局がどのような課題意識を持ち、どんな取り組みを始めているかについてうかがいました。

新たな取り組みとして、東北大学と協業して運転向上アプリを開発し収益を上げている事例に加え、健康セミナーを映像化して課金配信する取り組みやEコマースを挙げます(稲木氏)。「地上波の広告収入の目減り分をこれらで補っていく」と述べ、Eコマースもひとつの方向性としたうえで、「アイデンティティはやはり映像制作。県民への情報提供が最大の責務であり、その責務を継続するためにも新たな事業を行っていく」と続けます。

大西氏は「テレビ、ラジオの番組のファンを増やしたい」と語ります。「ローカルコンテンツを作る力を信じ、未開のゾーンをいかに開拓するか、時代に合わせた形に変えていくか、というところで『ネット』という捉え方が出てくる」と述べ、その取り組みとして、系列を超えた全国20社での『南海放送アプリ』や放送局がYouTuberを支援する『シコクパンク』、AIカメラを活用したローカルスポーツなどこれまで映像化されなかった未開のゾーンを届ける事例を挙げました。その一方で、愛媛県の各自治体やJAと情報発信等の連携協定の締結を進める地道な取り組みにも触れ、「『テクノロジー』と、地元の方ともう一度"絆を結ぶ"というような『アナログ』の両面でのトライを大事にしている」と大西氏。

「変えてはいけないこと、変えざるを得ないことがある」と宮迫氏。変えてはいけないこととして、「地域の情報を早く・正確に伝える」ことを挙げ、災害時の対応など防災減災に寄与する情報を様々なメディアで出すと言います。一方、変えざるを得ないこととして、「コンテンツの多角展開(イベントのテレビ・ラジオ放送、ネット配信)」を挙げます。また、隣接する県の放送局と連携した情報発信や防災をはじめ、イベントなど「双方にとって強みになる取り組みを進めたい」(宮迫氏)と述べました。

平城氏も、「地域の情報をいかに県民に届けるかが重要課題」と語ります。その取り組みとして、「dボタンひとつで自治体独自の情報が見られる」事例を挙げ、特に高齢者の方には簡便であるため非常に役立っていること、また、その情報自体は自治体の担当者が入力することで、迅速かつ正確に情報提供可能なことも述べました。

当社への要望

このようにローカル局の皆様が様々な取り組みを実践する中、「課題解決やビジネス拡大に当社としても貢献していきたい」(加治佐)と、チャレンジしている新たな取り組みについて紹介し、それに対する皆様のご意見を伺いました。当社への要望の事前回答として「ローカルエリアの視聴データの充実」「変化し続ける生活者の実態、変化の要因を捉え示すこと」などが挙げられました。

これらに対する代表的な取り組みとして、「放送局由来の全てのコンテンツ測定」「PMデータ、ACR/exデータを活用した視聴者プロフィールの詳細化、Resolving LABでの視聴ログ活用」「コンテンツの視聴の質を数値化する『Buzzビューーン!』」をデータ編として紹介しました(加治佐)。また、システムに関して「AIを活用した自動作案システム『STA』」や「Smart Ad Salesで機能する、枠の検索や分析をする『枠ファインダ』」を挙げました。これらの取り組みに対し、「ローカル局にどの程度適用できるかといった課題はあるが、『Buzzビューーン!』など非常に興味深い」(大西氏)とした上で、「今、ラジオに起きていることが、テレビに数年後起こるのではという捉え方をしている中、生活者のライフスタイルや考え方がどう変わっていくのか、変わっていこうとしているのかという先行指標がほしい」と述べます。また、「何よりテレビの応援団として、いま一度テレビの力を社会に知らしめる効果的なデータとアピールを」と当社への期待を込められました。稲木氏は、取引指標のローカル局にとっての使い勝手について触れ、「ローカル局に適したさらなる工夫ができないか」との課題提起をされました。

「ローカルエリアの視聴データをとにかく充実してほしい、静岡は最も人口の多い政令都市が視聴率調査エリアに入っていないことが課題」と平城氏。引き続き、静岡4局と当社とで相談しながら取り組んでいくことを確認しました。

宮迫氏からは、「全国のテレビ局と組んで、PUTを上げるサポートをしてもらえるとうれしい」と投げかけがあり、加治佐は「PUTの低下に関しては当社も課題に感じている。どういうところでそのような状況になっているか、背景には何があるのか、については他の調査でも確認している」ことを述べ、「大きい流れの中で厳しい環境ではあるが、そこをどう食いとめていくのか、一緒に考えていきたい」と続けました。

ローカル局がこれからの時代をサバイバルするために

最後に「ローカル局として大切なこと」とは何かをうかがいました。

番組、イベント、そして新しいことも創り続けていけば、放送局にも地域にも、新たな可能性が必ず開けるという思いを込め、「苦しくても...創り続ける」(大西氏)。

情報を早く正確に伝えることで、住みやすい地域にし、人々の人生が充実することに貢献していくことが、ローカル放送局の使命であり、「地域の人のQOL向上に貢献する」(宮迫氏)。

映像制作という根幹を広げることでシナジー効果を生み、新たなビジネスを展開したいという思いから、「水平型の多角化でシナジーを」(稲木氏)。

テレビはまだまだやりようによってはいろいろな可能性がある、という思いを込めて、「テレビの力を信じよう」(平城氏)。

「タイトルにある『多様化時代を生き抜く』という言葉にふさわしく、地道な積み重ねから新たなチャレンジまで各局で取り組まれていることなど、参考になったり、励まされたりする事例がたくさんあった」(加治佐)と述べ、「当社も、課題解決やさらなるビジネス拡大に貢献できるよう、テクノロジーと想像力で進化を続ける」と締めくくりました。

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