Inter BEE 2021

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Special 2023.08.03 UP

【Inter BEE CURATION】”メディアポジショニングマップ “で見る生活者とメディアの現在地ー若者編

統括・ソリューションユニット リサーチアナリシスグループ フェロー/ひと研究所 主任研究員 渡辺庸人 VRダイジェスト+

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。

新型コロナウイルス感染症が人々の生活に大きな影響を与えて3年が経ちました。
この3年間を振り返ってみると、生活者の生活行動もメディア利用も大きく変わり、これからもその影響は続くことが予想されます。
本記事では、メディア利用の「現在地」と「これから」について、当社の生活者に関するシンクタンク「ひと研究所」が分析した、生活者の生活シーンに注目した"メディアポジショニングマップ"から紐解いてみます。この分析知見は生活者のメディア利用を俯瞰して把握するための基礎データとして、また、変化の兆しを発見するための材料として活用できます。今回は若者とメディアとの関係にフォーカスした事例を紹介します。

1. コロナ禍で飛躍的に伸びた動画視聴、テレビ画面利用に勢い

最初に、メディア利用の変化のひとつとして、コロナ禍を挟んだ6年間の生活者の行動と、動画視聴の動向を当社の「MCR/ex」で確認します(図1)。左下のグラフは生活者の行動で、生活の基本となる「起床在宅」「睡眠」「外出」(24時間を3つの要素に分解)の1日あたり平均"時間"(量)の推移です。コロナ禍当初の2020年6月に大きく「外出」が減少しており、コロナ禍前の8時間程度から約3時間程度減少しています。その後、増加に転じてはいますが、2022年12月の段階ではまだ7時間程度しか回復していません。一方、その分増加したのが「起床在宅」の時間となっています。この生活行動の変化が、メディア利用に大きな影響を与えました。メディア利用の中で最も大きく変わったのが「動画視聴」です。右下のグラフは、ネット動画の視聴時間の1日あたりの平均"分数"を、デバイス別に見たものです。コロナ禍で動画視聴時間は飛躍的に増加し、その中でもテレビ画面での動画視聴の増加の勢いが顕著であることがわかります。自宅で過ごす時間の増加に加えて、いわゆるコネクテッドTVの利用拡大が、この背景にあると考えられます。

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2. 生活者視点のメディアを描くメディアポジショニングマップ

生活者とメディアとの関係性を考える時に、さまざまな視点が考えられます。例えば、テレビ、スマートフォン、パソコン、といったデバイス視点で考えることもできれば、購買ファネル上での効果性が高いものは何かという視点で考えることもできます。このような視点のひとつとして、ひと研究所では生活者の生活シーンに注目し、独自にメディアの利用シーンについて調査・研究を行ってきました。このデータを用いて、メディアポジショニングマップでは、生活者視点でメディアの利用の仕方の特徴、いわば"現在地"を描いています。
 メディアポジショニングマップとは各メディアが利用される生活シーンについてのデータをもとにマッピングを作成したものです。2022年10月に、15~69才を対象に60のメディア(対象メディアはこちら)について調査を実施して作成したのが(図2)です。マッピングには、メディアの利用シーンと、具体的なメディアがプロットされています。4つの象限はそれぞれ利用シーンを表し、左上が「自宅のリビング・居間でのくつろぎ」、左下が「自室のくつろぎ・ベッドの中」、右上が「ながら時間」、右下が「生活の合間の時間」となっています。
 例えば、テレビのリアルタイム視聴は、特に食事を中心とした"ながら視聴"が多いことが、他のメディアの利用シーンと大きく異なります。その特徴が反映された結果、「テレビ(リアルタイム)」は右上にプロットされています。また、リビングや居間での「くつろぎ」の生活シーンに動画メディアが浸透していることも、左上の象限に様ざまな動画メディアがプロットされていることに表れています。

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注) 縦軸は、メディア利用や生活シーンにおいての「テレビ受像機の有無」の度合いを表しており、上方向が「テレビ受像機が近くにあることが多い」、下方向が「テレビ受像機が近くにないことが多い」と解釈できる(コレスポンデンス分析の結果)

では、若年層(15~25才)のメディアポジショニングマップに注目して描いてみると、どのような特徴が見られる でしょうか。

3.メディアポジショニングから考える若年層の"現在地"   ートイレの中でもSNS利用

まず、全体的なマッピングの構造は、15~69才と大きく変わらない結果となりました(図3)。続いて、特徴がある部分についてみていきます。
 左上の「自宅のリビング・居間でのくつろぎ」についてネット動画に注目してみると、YouTube、TVer、Amazon Prime Video、Netflix、ABEMA が位置しています。一方で、GYAO! ※や NHK プラス、民放テレビ局の見逃し配信サービスはこの領域には入ってきていません。若年層においてこれらは一部の積極的な利用者が中心で、積極的ゆえに相対的に、合間や、ながら時間によく使っていることが背景として考えられます。
 左下の「自室でのくつろぎ・ベッドの中」では、TikTokが「自分の部屋でくつろいでいるとき」に近い位置に深く入り込んでいます。自室でのくつろぎの時間に使う映像メディアとして、存在感の大きさが表れていると言えます。また、利用シーンとして「トイレの中で」が左下の領域にあるのも特徴です(15~69才では右下にプロット)。若年層はトイレの中でSNS(Twitter、Instagram、LINE)を利用することが相対的に多いといった背景が推察されます。

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注) 縦軸は、メディア利用や生活シーンにおいての「テレビ受像機の有無」の度合いを表しており、上方向が「テレビ受像機が近くにあることが多い」、下方向が「テレビ受像機が近くにないことが多い」と解釈できる(コレスポンデンス分析の結果)

15~25才のメディアポジショニングマップを俯瞰してまとめると、(図4)のように整理できます。
 「自宅のリビング・居間でのくつろぎ」では、15~69才と同様に、テレビモニターを占有できるメディアがこの領域で存在感を持っています。「自室でのくつろぎ・ベッドの中」では、TikTokが存在感を持っており、くつろいで(あるいは"落ち着いて")メディアを使うシーンとして「トイレ」も含まれるのが特徴的です。「ながら時間」では、15~69才と比較すると新聞は目立ったポジションにはなく、リアルタイムのテレビ視聴のみが特徴的な位置にあります。「生活の合間の時間」では、15~69才と比較すると、移動中にラジオ放送を聴く手段(主にカーラジオ)を持つ若年層が限られるため、スマホで利用できるものがより目立っているようです。

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4.メディアポジショニングから考える「これから」  ー "くつろぎの時間"と"合間の時間"におけるメディア利用動向に注目

コロナ禍でのメディアポジショニングの変化として、映像メディアは利用が拡大するとマップ左方向(くつろぎの時間)にポジションを移動するという現象が観察されてきています。これを踏まえて考えると、現在、利用率が伸びている動画サービスなどは、利用拡大に伴ってそのポジションを左方向に移動させてくることが予想できます。
 また、マップ右下の領域には「音声メディア」が多く位置していることも注目すべきポイントです。いわゆる「タイパ」(タイムパフォーマンス)が求められる社会の中で、目や手がふさがっている"合間の時間"や"移動時間"の有効活用が生活者の課題のひとつになります。このような時間に、音声メディアが大きな役割を果たしていることもメディアポジショニングマップからうかがい知ることができます。これから生活者はより積極的に外出していくことが想定されるため、音声メディアを中心に、メディアポジショニングマップの右下領域の動向に、今まで以上に注目していく必要があると考えています。

調査概要 ひと研究所「第4回メディアポジショニング調査」
調査方法:インターネット調査
調査対象:日本全国の15~69才(中学生は除く)
サンプル数:9,012名
調査期間:2022年10月1日(土)~10月3日(月)

「ひと研究所」はこちらから

※この記事はVR Digestで紹介した内容を編集したものです。

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