Inter BEE 2021

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Special 2023.09.01 UP

ブランド力を高めるCMや動画広告のクリエイティブとは~重要要素と成功事例のご紹介~

統括・ソリューションユニット ビジネスソリューショングループ 宮田正晃 VRダイジェスト+

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。

【この記事はこんな方にオススメ!】
✅CMや動画広告を使って自社のブランド力を高めたいと思っている方
✅CMや動画広告のクリエイティブの方向性を検討したい方
✅CMや動画広告の自社ブランドへの貢献を可視化したい方

1.ブランド力を高める広告を作るには、影響力のあるクリエイティブ要素の把握が重要

CMや動画広告を作るにあたり、事前に整理、準備しておくことはいろいろとあるかと思います。
そのうちの一つとして、「今回のキャンペーンの目的にかなったCMや動画広告のクリエイティブの傾向」を事前に整理しておくことをおすすめします。
広告主視点では、クリエイターや広告会社へのオリエンの際に指針にできるからです。一方、クリエイターや広告会社の視点からは、広告主に説明する際に自身の意向の後押しとなるからです。

広告制作においてデータに従って制作方針を決めることは、クリエイティブにとって最も重要な創造性を阻害するとお考えの方も多いのではないでしょうか。創造的なクリエイティブとは一般的法則から乖離したものであると感じるからです。確かに世の中の話題をさらうようなクリエイティブにはそのような傾向が強いのかもしれません。

しかし定石を外したクリエイティブは失敗しやすいことも事実です。これから作ろうとしているCMや動画広告がコミュニケーションの目的に対し、どのくらい成功しやすいのかを計れると、意思決定に役立ちます。また、あらかじめ期待値を持ち、実際の広告反応を確認することで、自社のCMや動画広告のクリエイティブのあり方への感覚が研ぎ澄まされていくことでしょう。

キャンペーンの目的が「ブランド力の向上」である場合に、事前に把握しておくとよい課題は次のようになります。

「ブランド力を高めるにはCMや動画広告のどのクリエイティブ要素に影響力があるか?」

ブランドごとにそれぞれ抱えている課題、伸ばすべき評価ポイントは異なると思いますが、今回は「ブランドの認知を伸ばしていくには?」という観点で「ブランド認知率」を目的の指標として取り扱います。

本記事ではこの問いに対し、「クリエイティブカルテ」の豊富なCM・動画広告評価ストックデータを活用した分析を行います。具体的には、下記の分析ステップでアプローチします。

① 「広告のブランド力への貢献」を数値化する ~AEI~
② CMや動画広告のクリエイティブ要素ごとの影響度を求める ~影響度分析~
③ ブランド力へ大きく貢献する動画広告とその要素を見てみる

2.「広告のブランド力への貢献」を数値化する ~AEI~

まず「広告のブランド力への貢献」をどのように把握するのかについて説明します。
「広告のブランド力への貢献」の数値化にはAEI(AD Effectiveness Index)というスコアを使用します。これは、広告認知者と広告非認知者のブランド評価の差分から、広告によるブランド力への貢献を割り出す考え方です(図1)。CMや動画広告でブランド評価(ブランド力)を何ポイント押し上げることができたかのスコアが「AEI」、つまり「広告の貢献」分です。

<ブランド認知率AEI計算例>
100人に調査を行って、広告認知者が40人の場合を考えます。広告認知者の「ブランド認知率」は50%(40人中20人)、広告非認知者の「ブランド認知率」は30%(60人中18人)とします。広告認知者のうち"広告を認知しなくてもブランドを認知していた"人、つまり「ブランド認知ストック」は、広告非認知者の「ブランド認知率」(30%)を適用します。これによりブランド認知ストックは広告認知者の30%=40人中の12人なので、広告による貢献は、ブランド認知者(20人)からブランド認知ストック(12人)を除いた8人です。全体100人を母数として、「ブランド認知率」のAEIは8.0ポイントとなります。

【図1】AEIによる「広告のブランド力への貢献」の数値化(ブランド認知率の場合)

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例えば、2020/8/15にOAが開始された日本サンガリアベバレッジカンパニー「伊賀の天然水強炭酸水」の「日常」篇の動画広告では、ブランド認知率AEIは27.3ポイントでした。つまり、世の中全体で27.3%の人がこの動画広告によりブランドを認知したことになります。(広告認知率が58.6%、広告認知者におけるブランド認知率は74.6%、広告非認知者におけるブランド認知率は28.0%)
※クリエイティブカルテ2021年1月26日調査回結果より

これはブランド認知率AEIが高い広告の事例なのですが、その要因は何なのでしょうか。読み解くために次の「影響度分析」という方法があります。

3. CMや動画広告のクリエイティブ要素ごとの影響度を求める ~影響度分析~

ブランド認知率AEIを高めるクリエイティブ要素は何か、クリエイティブ要素ごとに「影響度」を算出して確認します。
影響度とは、そのクリエイティブ要素の偏差値が1上がると、AEIが何ポイント上がるか(下がるか)を示す数値になります。影響度は、因子分析と重回帰分析を組み合わせることで算出します。

分析には「クリエイティブカルテ」の直近2年間の調査対象のうち、【ノンアルコール飲料】カテゴリと【自動車】カテゴリで、広告出稿以前のブランド認知が高くない(*)CM・動画広告を対象とします。ターゲットとしては、男女15~69才のスコアを用いて分析します。
(*)広告非認知者のブランド認知率が60%以下のものと定義

【ノンアルコール飲料】89素材、【自動車】88素材に対して、ブランド認知率AEIを算出し、影響度分析を行った結果が図2です。 影響度がプラスの要素は、その要素を強めるとブランド認知率AEIが高くなることを意味し、影響度がマイナスの要素は、その要素を強めるとブランド認知率AEIが低くなることを意味しています。つまり、CMや動画広告によってブランド認知を効果的に獲得するには、プラスの影響度が高い要素が重要になります。

【図2】「ブランド認知率」AEIへの影響度

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4.ブランド力へ大きく貢献する動画広告とその要素を見てみる

4-1. 【ノンアルコール飲料】映像で清涼感や味わいを伝えつつ、セリフやナレーションでブランド名提示を!
まず、【ノンアルコール飲料】の結果を確認してみましょう。
「出演者やキャラクター」の影響度が最も高くなっています。これは、何はともあれCMや動画広告を見てもらうために、出演タレントやキャラクターの人目を引く力、認識させる力が重要ということでしょう。
他に影響度が高い要素としては、「映像表現」「セリフ・ナレーション」です。飲料の清涼感や飲んだ後の味わいを映像で伝えながら、ブランド名をセリフやナレーションで提示することで刷り込むと効果的のようです。

逆に、「おもしろい」イメージ訴求は影響度が大きくマイナスとなっています。広告認知率や広告好意度を高めるためにタレントをおちゃらけさせたり笑いに走ったりすると、CMや動画広告それ自体の印象が強く残ってしまい、ブランド認知の向上にはつなげにくいようです。

【図3】「ブランド認知率」AEIへの影響度【ノンアルコール飲料】

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それでは具体的に、ブランド認知率AEIが高い広告の事例を確認してみます。

<ブランド認知率AEIが高い広告の事例>
日本サンガリアベバレッジカンパニー/伊賀の天然水強炭酸水/小泉孝太郎出演/「日常」篇
(YouTube「サンガリア公式」チャンネル【伊賀の天然水強炭酸水 「日常」篇 15秒】より引用/公開期間が終了して閲覧が出来ない場合もございます)


先ほどブランド認知率AEIが高い事例としてご紹介した広告です。【ノンアルコール飲料】のブランド認知率AEI平均が6.0ポイントであるのに対し、このCM・動画広告は27.3ポイントと大きくブランド認知を獲得しています。

出演者に小泉孝太郎さんを起用することで、58.6%と高い広告認知率をまずは獲得しています。
その上で、ペットボトルを開けたときのプシュッという炭酸の泡立ち、グラスの中で透き通る様子、商品から炭酸がはじけるCG、背景に映る伊賀の山々と、清涼感を感じさせる映像表現をこれでもかと盛り込んでいます。さらに、日常生活を描くシーンであらゆるところに商品が共にあるように配置し、商品ラベルが大きく映るようにしてブランド名が視覚的に刷り込まれるようにしている点もポイントと思われます。
また、動画の内容がナレーションに合わせて展開しており、最後に読み上げられるブランド名も自然と耳に入ってくるシンプルな作りになっています。
※クリエイティブカルテ2021年1月26日調査回結果より

4-2. 【自動車】音に合わせて商品特徴をわかりやすく!
【自動車】でも同じように「出演者やキャラクター」の影響度が最も高くなっており、出演タレントやキャラクターがブランド認知獲得には重要となっています。
【自動車】では次いで「音楽・BGM・効果音」「商品・サービスの機能や特徴」の影響度が高く、それを「わかりやすい」と感じさせると効果的なようです。ただ単に音楽に合わせてブランド名を連呼するだけでなく、機能特徴のわかりやすい紹介をセットにして訴求することでブランドの理解が進み、名前が残りやすいということでしょう。

また、「親しみやすい」の影響度も高くなっています。【自動車】は耐久財のため、消費財に比べると商品との接触機会が少なく関心が高まりにくいものです。そのため、家族で一緒にいるシーンや、ドライブやアウトドアなど日常における運転シーンを描写し、身近に感じさせることも効果的なようです。

【図4】「ブランド認知率」AEIへの影響度【自動車】

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具体的に、ブランド認知率AEIが高い広告の事例を確認してみます。

<ブランド認知率AEIが高い広告の事例>
三菱自動車工業/DELICA MINI/水川あさみ、デリ丸出演/「デリカミニ デビュー!」篇
(YouTube「MitsubishiMotorsTV」チャンネル【デリカミニ「デリカミニ デビュー!」篇 15秒】より引用/公開期間が終了して閲覧が出来ない場合もございます)

【自動車】のブランド認知率AEI平均が7.2ポイントであるのに対し、こちらは16.5ポイントとブランド認知に広告が大きく効いています。
出演者に水川あさみさんを起用し、44.7%と高い広告認知率を獲得しています。

「年下の男の子」の替え歌でブランド名を刷り込ませています。そして歌の「♪つぶらな瞳デリカミニ」で車体のかわいらしいデザインと、「♪頼れるボディデリカミニ」で山道の舗装されていない道でも安定して走れる高い走行性能の商品特徴を伝えています。その音声に合わせて、車体を正面から見た画と山道を走る姿を横から見た画が映ります。聴覚的情報と視覚的情報を同時にマッチさせて伝えることで、わかりやすさを高めブランド理解を促進する、CMや動画広告作りの基本と言えます。また、デリカミニを模したかわいらしいキャラクター「デリ丸」のぬいぐるみを映して、デリカミニと動きを重ねることで親しみやすさの醸成をはかっていることも、ブランド認知向上につながっているものと思われます。
※クリエイティブカルテ2023年4月25日調査回結果より

5.おわりに

【ノンアルコール飲料】では「映像表現」で清涼感や味わいを伝えつつ「セリフ・ナレーション」でブランド名を提示することが、【自動車】では「音楽・BGM・効果音」で「商品・サービスの機能や特徴」を「わかりやすく」伝えることがブランド認知獲得に効果的、という結果となりました。新ブランドや認知度の低いブランドでブランド認知獲得を目指す際の、CMや動画広告のクリエイティブを検討する指針となるのではないでしょうか。

以上、どのようなクリエイティブの広告にすればブランド認知を高められるのか、AEIと影響度分析、事例確認を通して分析を紹介しました。
この分析は、「クリエイティブカルテ」のデータを使えば、「ブランド認知率」以外にも「ブランド好意度」や「ブランドイメージ」など他のブランド評価指標での分析や、他カテゴリでの分析なども同様にできます。また、出稿前のブランドレベル別で分析することも可能です。

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【本記事で紹介したサービス】
・サービス名:ビデオリサーチ「クリエイティブカルテ
・調査時期:年間約100回(毎週2回(①火曜、②金曜))
・対象地区:関東1都6県(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県)
・ターゲット:調査時に満15歳~69歳の男女個人
・サンプル数:540人
・調査方法:インターネットリサーチパネルより、無作為にメール送信し、調査を依頼。性年代均等割付けしたサンプルを住民基本台帳の性・年齢構成に従いウェイト集計。

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