Inter BEE 2021

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Special 2023.09.28 UP

IBC2023 スペシャル現地レポート#01 ハードウエア編

デジタルメディアコンサルタント 江口 靖二 氏

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欧州で最大の映像・放送の展示会であるIBC2023が、今年も9月15日から18日までオランダのアムステルダムRAIで開催された。出展者数は1,250社を超え、来場者は170カ国から43,065人と昨年よりおよそ6,000人、16%増加した。こうした数値的な増加は、会場の広さと最終日まで続いた混雑と熱気からも強く感じることができた。

INTERBEE ONLINEでは、IBC2023の現地レポートを次の5回に分けて紹介をする。
#01 ハードウエア
#02 システム&ソフトウェア
#03 AIとバーチャルプロダクション
#04 注目のサービス
#05 日本でIBC2023をベンチマークするべきポイント

1回目はカメラを中心としたハードウエアについて紹介する。

ソニー CineAltaカメラ「BURANO(ブラーノ)

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CineAlta「BURANO(ブラーノ)

ソニーのデジタルシネマクオリティーでありながら、非常に小型軽量で機動性の高い、新たなCineAltaカメラ「BURANO(ブラーノ)」を発表し、実機を展示した。本体重量は既存のVENICE 2(8K)より33%軽い2.9kgである。

BURANOの主な特徴は以下の通り。
・8.6K フルフレームセンサー、最大解像度は8,632×4,856
・S-Gamut3/S-Gamut.Cineを搭載し、VENICE 2と同様にBT.2020、DCI-P3を超える色域をカバー
・ソニー独自の「電子式可変NDフィルター」を内蔵し、撮影中に操作スイッチ面のNDダイヤルで調整できるので、フィルター交換の必要がない
・PLマウントカメラとして世界で初めてボディ内蔵光学式手ブレ補正機構に対応
・Eマウントレンズでタッチフォーカスにも対応するAFシステムは、小規模やソロ撮影、ジンバルを用いた撮影などにおいてカメラ任せのAFが可能になる

手ブレ情報はメタデータとして収録ファイルに付加できるので、ポストプロダクション作業でCatalystなどのソフトウェアを用いて手ブレ補正処理を短時間かつ高精度に行うことができる。

実際にBURANOに触れてみた感想は、「このサイズとこの軽さでこの絵が出せるのか」と驚きを感じさせるものだった。CineAltaの映像クオリティーを維持しながらも、PLレンズでの光学手ぶれ補正やEマウントでのAFなどによって、映像表現力が飛躍的に広がるだろうと感じた。例えは正確ではないと思うが、かつてのENGカメラやGoProが映像放送業界に与えたインパクト以上のものBURANOに感じた。
手ブレ情報はメタデータとして収録ファイルに付加できるので、ポスプロ作業でCatalystなどのソフトウェアを用いて手ブレ補正処理を短時間かつ高精度に行うことができる。
そしてこのクラスのカメラにおいて、手ぶれ補正やAFが搭載されたということは意義深いものがある。これまではカメラマンならぬ撮影技師は職人気質の方が多い。こうした機能がプロフェッショナルにどのように受け入れられていくのか、注目していきたい。発売は24年春の予定。

ソニー Crystal LED VERONA(ベローナ)
大型LEDウォールのCrystal LEDシリーズに、新たに主にバーチャルプロダクション向けの新製品、Crystal LED VERONA(ベローナ)を世界で初めて展示した。

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Crystal LED VERONA(ベローナ)
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スタジオ現場での迅速な着脱を可能にした裏面構造

VERONAはデジタルサイネージのように人が直接視聴するのではなく、バーチャルプロダクションの現場において、カメラでディスプレイを再撮することを前提としたモデルである。新開発した独自のディープブラック&低反射コーティング技術により、深く引き締まった黒の表現と、隣接するLEDディスプレイやスタジオ用照明機材からの外光によるコントラスト低下を大幅に低減している。実際に見た感じでも、従来のCrystal LED と比較すると明らかに黒が締まり、反射がきわめて少ない。

またDCI-P3を97%以上をカバーする広色域に対応している。1,500cd/m2の高輝度で、ピッチサイズは1.5mmと2.3mmの2タイプが用意される。
ディスプレイキャビネットは、アスペクト比は1:1でサイズは500mmである。デジタルサイネージのように設置してしまえば取り外しがないのとは異なり、建込みとバラシが頻繁に発生することに対応するため、ディスプレイキャビネットにはレバー式ロック機構を、また正確な位置合わせが容易にできる位置決めピン機構を採用している。

ブラックマジックデザイン Cinema Camera 6K

ブラックマジックデザインは6Kフルフレームセンサー、Lマウント、CFexpressメディアに対応する新製品、Blackmagic Cinema Camera 6Kを展示した。

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Blackmagic Cinema Camera 6KにDZOFILM CATTA Ace ZOOM 35-80mm T2.9を搭載したデモ機材

主なスペックは次の通り。
・解像度6,048x4,032
・13ストップのダイナミックレンジと25,600までのデュアルネイティブISOに対応
・Lマウント搭載
・CFexpressメディアに対応してBlackmagic RAWとH.264プロキシを同時に収録可能。またUSB-Cで外部ディスクにも収録
・高輝度5インチ大型HDRタッチスクリーン

搭載されているLマウントは直径が51.6mmであるため、ライカ、シグマ、パナソニックなどのフルサイズレンズに対応。フランジ距離が20mmなので様々なレンズマウントアダプターの装着が容易になっている。価格は41,9800円(税込)

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Blackmagic CameraはiPhone iOS16.6以降の専用アプリ

なおブラックマジックデザインはiPhone用のカメラアプリ、Blackmagic CameraをIBC2023の初日に無償で公開した。このアプリはiPhoneをシネマカメラのような画像処理とコントロールができるようにするアプリだ。10-bit Apple ProResファイルで4Kまでに対応しており、直接Blackmagic Cloudに収録することもできる。
これにより大きなENGカメラではなくiPhoneで取材や撮影した素材をBlackmagic Cloud上で共有するワークフローが実現する。
IBCの会場にはBlackmagic Cameraの展示もアナウンスもなかったので現場では全くわからず、ネットのニュースではじめて知ったというのも面白い。なお開発はアップルと協力しているとのことなので、Android版のリリース予定は不明だが、おそらくはないものと思われる。

キヤノン PTZカメラ CR-N100

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CR-N100

キヤノンはRTZリモートカメラの新製品「CR-N100」を展示した。CR-N100は4K30Pで光学20倍ズームレンズを搭載している。これによってキヤノンのPTZカメラは、今回発表したCR-N100から300、500、700まで、用途に応じた選択が可能となった。

またこれらのPTZカメララインナップに対応するリモートカメラコントローラー「RC-IP1000」も展示した。操作部は上段にタッチパネルディスプレイと設定ボタン群が、下段左がレンズ操作、下段右がパン・チルト操作部になっている。7インチタッチパネルディスプレイを搭載し、IP映像を確認しながらカメラ操作をすることができる。こうしたレイアウトは、パナソニックの製品とほぼ同様のレイアウトとなっている。表示映像は最大3x3まで可能。顔や瞳などをAF枠として設定、表示させて操作が可能。入出力はIPとSDIにも対応している。

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リモートカメラコントローラー「RC-IP1000」

こうしたPTZカメラは、防犯カメラ用途でスタートしたと思うのだが、最近では学校や企業での導入が進んでいる。そして映画撮影用とまではいわないまでも、フルサイズ機など高画質の製品も続々登場しており、今後どういう進化をしていくのか注目したい。

リーベック PTZカメラ向けの電動ペデスタル「LX-ePed」

PTZカメラの進化に呼応するかのように、リーベックは昨年のInterBEEで発表した電動ペデスタル「LX-ePed」をIBC2023で欧州において初公開した。PTZカメラがフルサイズセンサーを搭載して映像制作の可能性を広げようとしている現在、従来のような固定ではなく、より高い映像表現をするためのカメラが移動したくなる場面も増えてきている。こうしたニーズに対応するための電動ペデスタルで、車輪の付いたスタジオドリー版も用意されている。現在の操作リモコンはワイヤードの専用機のみであるが、ワイヤレス外部システムスともインターフェイスできるものも予定されているようである。こうしたPTZカメラ周辺の伸びしろは、これからまだまだありそうな気がする。

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LX-ePe
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