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Special 2023.10.04 UP

IBC2023 スペシャル現地レポート#04 注目のサービス編

デジタルメディアコンサルタント 江口 靖二 氏

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IBC2023で注目しておきたい欧州放送規格DVBの動向と、次世代のFASTサービスとも言える「FILMBOX+」を紹介しておく。

欧州DVBの状況

IBC2023におけるDVBの主要トピックスは昨年と同じく、DVB-IとDVB-NIPである。同じと言ってもこれらは昨年からかなりの進化を遂げている。DVBのブースでは最新のDVBソリューションをデモも含めて紹介した。

欧州はなぜDVB-NIPなのか?

DVB-NIPはDVB放送ネットワーク上で標準ベースのOTT配信を可能にする。これによりメディア配信のコストと複雑さを軽減することができる。すなわち、IPネットワークと放送ネットワークの両方への配信を可能にし、同時にストリーミングセッションの重複をなくし、持続可能性を向上させる。このSDG’s的な視点が欧州ではかなり根強いことも、DVBがDVB-NIPに積極的な理由の一つだと思われる。

DVB-NIPの特徴

会場ではハウンドアウト資料によってDVB-NIPの概念と特色を説明していた。以下にその配布資料と内容を記述しておく。

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DVB-NIPのデモの説明資料1
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DVB-NIPのデモの説明資料2

DVB-AVC、DVB-DASH

ライブまたはオンデマンド・コンテンツは、ユニキャストABR(アダプティブ・ビットレート)ストリーミング・フォーマットを使用してエンコードおよびパッケージ化される。
ユニキャストABR(アダプティブ・ビットレート)ストリーミング・フォーマットを使用してパッケージ化される。ブロードバンドネットワーク上でのOTTサービス配信にも使用される。

DVB-MABR

ユニキャストコンテンツはマルチキャストにカプセル化され、予測不可能なユニキャストトラフィックを、帯域幅がフラットな安定したフローデータに変換して、放送ネットワークでの伝送を可能にする。

DVB-GSE

Generic Stream Encapsulationにより、マルチキャストデータをDVB-S2XまたはDVB-T2物理層上で直接伝送することができる。また既存のDVBネットワークのマイグレーションをサポートするため、後方互換モードではマルチプロトコルカプセル化(DVB-MPE)を使用して、DVB-S2/T2でMPEG-2 TSで配信することができる。

DVB-S2X、S2またはT2

物理層は実績があり高効率の第2世代DVB変調方式に依存しており、既存の伝送インフラをそのまま利用することができる。

受信側のDVB-NIPゲートウェイは、既存のスマートフォンを含むあらゆる接続機器にWi-Fi経由でフィードすることができる。業務用ゲートウェイは、公共の場で数百台のデバイスに対応することができる。家庭用のゲートウエイは、モバイル・デバイスに加えてメインスクリーン(テレビ)にも対応する。

DVB-NIPの初期段階のユースケース

・コミュニティ、ホスピタリティ施設、モビリティシナリオなどの公共アクセスポイントへのフィード。
・高画質リニアOTTや、ダウンタイム中のプッシュ型コンテンツの提供。
・ブロードバンド・ネットワーク・トラフィックのオフロード。一般的なOTTサービスは放送経由で家庭内機器に配信され、ニッチ・サービスは固定/無線ブロードバンドを利用する。
・家庭でのVSAT(超小型地球局)でのビデオ配信を受け入れることを可能にする。これは双方向衛星IPネットワークそのものであり、最近で言えばStarlinkのアンテナ装置はVASTであるので、集合住宅はともかく1家に1台VSATは非現実的とは言えない。

DVBブースの展示とデモの内容

ドイツのDVB-Iパイロット実験
放送(衛星)とブロードバンドサービスが、一つのサービスとして一体化したライブデモ。2023年のIBCイノベーション特別賞受賞。
・EPGの前方/後方表示によるリッチなUI、チャンネルバナー、ロゴ、画像、地域別ソート
・低遅延DVB-DASHストリーミング
・HEVCビデオおよびAC-4オーディオ
・統合リンクされたHbbTVアプリ
・DRMとサブスクリプション・ベース・サービス

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ドイツでのパイロット実験は会場でも体験できた

イタリアのDVB-I商用トライアル

2020年から開始されている。イタリアで認可されたDTT LCN(論理チャンネル番号)を持つ放送事業者であれば誰でも参加できる商用トライアル。

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イタリアでの商用実験

DVB-NIP feeding homes and hotspots

DVBネイティブIP放送を使用して、家庭や公共の場所(ホスピタリティ、交通機関、遠隔教育などでデジタルサイネージ的な利用)のゲートウェイにライブとプッシュの両方のコンテンツを送信する方法を示すデモ。

DVB-NIPによる5Gネットワークへのフィード

DVBネイティブIPにより、衛星ネットワークがどのように5G基地局へのフィードに使用できるかを示すもの。ユーテルサットとENENSYSは、DVB-NIP規格を使用した5Gネットワークへの衛星配信のいわゆるSAT to IPのライブデモをIBCで行った。

これは複数のTVチャンネルからのライブコンテンツがユーテルサットの受信点で収集され、H264で圧縮されDASHでパッケージ化される。パッケージ化されたコンテンツはENENSYS MediaCast BroadbandサーバーでDVB-MABRでカプセル化され、ユーテルサット衛星経由でIBC会場で受信される。ENENSYS 5G-in-a-boxソリューションeBoxはENENSYS CubeAgentソフトウェアを介して、衛星フィードからDVB-NIP信号を受信し、5GデバイスがTVコンテンツを消費できるというもの。

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ゲートウエイから5G端末へのフィードの例

DVB-NIPのその先

言い換えれば、DVB-NIPとは既存のSTBと既存のTSから、IPへの変換コンバーターとも言える。これはサービスの継続性と互換性の観点から非常に重要である。伝送路に衛星ではなく地上波を活用することで、DVB-NIPの放送は本当にユビキタスになるなので、基本的にコンテンツはどんな場所でも利用可能である。(もちろん技術のさらなる進化で衛星でも構わない状況になる可能性はあるが)

ホームゲートウェイ側で、エッジキャッシュのように自宅のゲートウェイを使用したり、ビデオをプッシュするために使用することもできる。プリロードされたオンデマンドコンテンツを提供したりすることができる。

ブースで説明をしていたDVBの主要メンバーであるBBCの担当者に、DVB-NIPの近未来ビジョンについて聞いてみたところ、ニュースショーの例を挙げて、「ホームゲートウエイに伝送されたニュースクリップを取捨選択したり、ダイジェスト化をする。OBM (Object-based Media)テクノロジーが進化すれば、すべての家庭でリニアなテレビ編成と同じ時間に、視聴者は全く意識することなく全員が違うニュースショーを見ている、それもアドレッサブルな広告付きで、ということができる。そしてそれはニュースだけにとどまらない。」と語ってくれた。

配信フォーマット、プロトコル、ソフトウェアは時間と資源があれば開発も規格化もできる。しかし、市場に受け入れられるかどうかはユーザーエクスペリエンスの質次第という事だろう。そしてここにこそ、日本がいまから一気に「リープフロッグ」できるチャンスがある。

新しいカタチのFASTか?フランスCANAL+のFILMBOX+

FilmBox+はCANAL+とその子会社SPIインターナショナルによるストリーミングサービスである。その特徴はスマートチャンネルというオンデマンドコンテンツをキュレーションしたプレイリストで、従来のリニアチャンネルと同様に連続的に再生される。つまりリニアチャンネルとオンデマンドコンテンツを自分で自由に番組編成できるサービスである。

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FILMBOX+のブース

スマートチャンネルのプレイリストはCMSを通じて新しい専用ストリーミングチャンネルをわずか数分で作成できる。このプレイリストは視聴者が作成して自分で視聴することはもちろん、プレイリストを他の視聴者に配信することもできる。また個人の視聴者ではなく、サービス提供者事業者が作成して配信することもできる。またアドレッサブルに個人を特定した広告配信も可能。

FilmBox+はこれまでに全世界で157のスマートチャンネルを展開しており、SPIの主要地域であるヨーロッパ、アドリア地域、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、チュルキエでも視聴可能である。今後さらに多くのスマートチャンネルが提供される予定だ。

スマートチャンネルについて同社は「リニアチャンネルは世界中で愛されている。視聴者は、従来のテレビのザッピング体験を彷彿とさせるような、良い映画に偶然出会うというセレンディピティを大切にしているからだ。スマートチャンネルは、オンデマンドとリニア視聴の良いところを組み合わせたもので、視聴者は膨大な番組ライブラリーをスクロールすることで、通常なら見逃してしまうようなコンテンツを発見することができる。」としている。

FILMBOX+は「JustWatch」にやや類似的なサービスとも言える。JustWachはコンテンツ比較・検索サービスだが、FILMBOX+は送り手から見るとコンテンツ編成サービスであり、受け手側から見るとスマートリモコンであるという見方をするのが正解だと思う。こうした独自編成ツールは、10年以上前にNTT西日本が「光BOX」というSTBで、YouTubeコンテンツを編成していたサービスにも近い。

FilmBox+は、同社のWEB、スマホアプリ、Apple TV、Android TV、Samsung、LGのSmart TVアプリで視聴することができる。

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