Inter BEE 2021

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Special 2023.12.05 UP

【Inter BEE CURATION】継続視聴に繋げるヒントを、”視聴体験満足度”が高い番組から学ぶ  ー<視聴ジャーニー>3つの盛り上がりパターン ー ~映像視聴の生活者研究シリーズ~

・ひと研究所 フェロー、渡辺 庸人 ・ひと研究所 主任研究員、吉池 典子 VRダイジェスト+

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。

【この記事はこんな方にオススメ!】
✅テレビ番組の視聴促進のための施策を検討している方
✅視聴者がどのようにテレビ番組を楽しんでいるか興味がある方

1.<視聴ジャーニー>とは

<視聴ジャーニー>とは、テレビ番組などの映像コンテンツの「視聴前」「視聴中」「視聴後」で起きる視聴にまつわる行動やリアクションなどを指します。例えば、映像コンテンツの視聴前には、誰かとコンテンツについて会話したり、出演者や内容について情報収集したりすることがあるかと思います。視聴中には、ドラマで感動して泣いたり、コントを見て笑ったりすることが挙げられます。視聴後には、感想をSNS発信することも広く行われています。ひと研究所の研究では、これらの行動やリアクションが起きることで、コンテンツの「視聴体験の満足度」が高まり、それが「継続視聴意向」の高まりにも繋がっていることが分かってきています(図1)。

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【図1】<視聴ジャーニー>の考え方

2.満足度が高い番組の<視聴ジャーニー>の盛り上がりパターンを明らかに

今回、視聴体験満足度が高い番組の<視聴ジャーニー>の盛り上がりパターンを明らかにする取り組みを実施しました。まず、「番組」に焦点を当てて、2022年7月にひと研究所が行った 「視聴ジャーニー調査」のデータから「1年以内で印象に残った番組」の自由回答を番組名で名寄せを行いました。そして、番組ごとの<視聴ジャーニー>の出現率を集計しました。そのうち、出現率の高かった31番組を対象に、<視聴ジャーニー>にどのような特徴があるのか分析を実施しました(図2)。

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【図2】番組単位データでの<視聴ジャーニー>の分析イメージ

なお、分析に使用した調査は「1年以内で印象に残った番組」について聴取したもので、基本的にいずれの番組も「視聴体験満足度」が高いものでした(31番組平均で95%の人が「満足した」と評価)。また、分析する<視聴ジャーニー>の具体的な内容は、図3に示した行動やリアクションになります。

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【図3】調査した視聴ジャーニー(行動・リアクション)

3.<視聴ジャーニー>の盛り上がりパターンの分析

分析では、まず番組ごとの<視聴ジャーニー>の各行動・リアクション(図3)の行動率を、それぞれの行動ごとに高いものから低いものまでABCDの4ランクに区分しました。31番組の平均行動率と比較して、【A】は平均の2倍以上のスコア、【B】は平均の1.5倍以上、2倍未満のスコア、【C】は平均より大きく、平均の1.5倍未満のスコア、【D】は平均以下のスコアという定義となっています。
こうすると、例えばある番組は「視聴前」に行動率の高さランクAの行動・リアクションが多い、別の番組は「視聴後」に行動率の高さランクAの行動・リアクションが多いなど、特徴が集約されます。そのうえで、このABCDのランクの出現の仕方について、番組間の類似性を数学的に計算し(※)、その類似性スコアに基づいてクラスター分析(階層型クラスター分析)を実施しました。それぞれ個別クラスターの解釈などを行いながら、最終的に31番組を3つのクラスターに分類することにしました(図4)。

※類似性の計算については、ここでは詳細は割愛しますが、「ソーシャル・シークエンス分析」の手法を応用して実施しています。

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【図4】31番組の<視聴ジャーニー>の特徴に基づくクラスター分析

3つのクラスターの特徴は次の通りです。

①視聴中・視聴後タイプ
20番組が該当。番組視聴中や視聴後に行動やリアクションが盛り上がる傾向の番組。ドラマ、バラエティ、ドキュメンタリーなど、視聴中の盛り上がりや感想の発信が活発だったとみられる番組が多い。

②視聴前・中・後バランスタイプ
8番組が該当。番組視聴中・視聴後に加えて、視聴前の行動やリアクションも起きている傾向の番組。ドラマ、バラエティに加えて、スポーツ、アニメなど、内容について"事前の期待感"の高まりがあったとみられる番組が多い。

③視聴後突出タイプ
3番組が該当。他の2つのタイプは、<視聴ジャーニー>の最も出現割合が高いのが「視聴中」であったのに対して、このタイプは「視聴後」が最も高くなっているのが特徴。話題のアニメや、視聴者にとっての"推し"がゲスト出演する形式のバラエティ番組などが該当しており、ファンの中での話題性などが視聴後の盛り上がりを生んでいることがうかがえる。

それぞれのタイプについて、視聴前、視聴中、視聴後でいずれかの行動・リアクションが起きる割合(<視聴ジャーニー>の出現割合)のスコアをまとめると図5になります。

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【図5】タイプ別 行動・リアクションが起きる割合(<視聴ジャーニー>出現割合)

もう少し具体的な行動にフォーカスして違いを見ていきたいと思います。
まず、①視聴中・視聴後タイプと②視聴前・中・後バランスタイプを比較すると「視聴前」のスコアの違いが目立ちます。具体的な行動・リアクションをみると、視聴前の「情報検索」「番組シリーズなどの予習」「自分なりの考察とSNS発信」など、期待感を持った行動に違いがあるようでした。
また、今度は②視聴前・中・後バランスタイプと③視聴後突出タイプを比較すると、「視聴後」のスコアの違いが目立ちます。具体的には、視聴後の「情報検索」「感想のやりとり」「他の人とのコミュニケーション(話題や推奨)」といった行動での違いが目立っていました。視聴後に大いに盛り上がっている様子が垣間見える結果です。

4.<視聴ジャーニー>を盛り上げるためには

この結果をもとに、<視聴ジャーニー>を盛り上げるためにはどのようなことを考えるのが良いでしょうか。

まず、「③視聴後突出タイプ」が出現したのはこの分析では31番組中3番組のみでした。感想や考察などが盛り上がるのは、現在のテレビ番組のヒットを示す一つの要素ですが、「視聴後」が最も突出するようなパターンは稀なことが考えられます。視聴体験満足度が高い番組の多くは「視聴中」の盛り上がりが中心となっていました。したがって、<視聴ジャーニー>を盛り上げるためには、「視聴後」はもちろんですが、「視聴中」にも"誰かに話したい""誰かと気持ちを共有したい"と思わせ行動させることが重要な要素であると言えそうです。

また、「視聴前」の盛り上がりについても、「②視聴前・中・後バランスタイプ」や「③視聴後突出タイプ」では、行動・リアクションの出現率が6割を超えて高くなっていました。「視聴前」の盛り上がりは、「視聴中」「視聴後」をより一層盛り上げてくれる要素にもなると考えられます。このことから、まずは「視聴中」「視聴後」の盛り上がりを作り出し、そこから次の放送の"期待感"を醸成して、次回の「視聴前」の行動・リアクションを促していくことを目指していくのがよさそうです。そして、「視聴中」→「視聴後」→「視聴前」→「視聴中」・・・という好循環を作り出せるのが理想的だと言えます。

では、実際"好循環"を作り出すためにはどんな具体的施策が有効なのでしょうか。
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おわりに

今回、番組単位での<視聴ジャーニー>のデータから、視聴体験満足度が高い番組の<視聴ジャーニー>の盛り上がりパターンを明らかにしていきました。ひと研究所では引き続き、視聴体験満足度を高めるための<視聴ジャーニー>の研究を進めていきたいと思います。

【調査データ概要】
ひと研究所 「視聴ジャーニー調査」
調査方法:インターネット調査
調査対象:日本全国の15~69歳(中学生は除く) かつ 1年以内で印象に残る番組がある
サンプル数:1556名
 (住民基本台帳の構成比、スクリーニング調査の出現率に応じてウェイトバック集計を実施)
調査期間:2022年7月29日(金)~8月1日(月)

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