【Inter BEE CURATION】応援される広告 嫌われないSDGs広告づくりのポイント【Part1】SDGs広告でクリエイティブ評価を特にお勧めする理由
青島 弘幸/長岡 鈴香 VRダイジェスト+
※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。SDGs広告づくりに関した記事となっております。
応援される広告 嫌われないSDGs広告づくりのポイント
①SDGsに取り組む企業・ブランドが直面する課題
企業広告、ブランド広告において、SDGs(持続可能な開発目標)に寄り添い、社会性をおびたクリエイティブがテレビCMやWEB動画を通じ、数多く発信される兆しが見受けられます。
とりわけ、SDGsの取り組みのメッセージは、これまでの消費促進の広告とは異なる方向にあるので、販売効果とは別の評価視点を持つことが求められます。
そこで、持続可能な社会に貢献する企業やブランドのメッセージを発信したいとお考えの担当者様に向け、SDGs広告クリエイティブではどんな評価視点が相応しいのかを示し、ビデオリサーチの調査で得られた知見を共有することを目的としています。
【Part1】SDGs広告でクリエイティブ評価を特にお勧めする理由
①SDGsに取り組む企業・ブランドが直面する課題
長岡 最近、「100年に一度の大雨」というフレーズが天気予報で頻発しています。世界を見渡しても大規模な森林火災があちこちで起きていて、気候変動の深刻さを身近に感じるようになってきました。いよいよ地球温暖化への対策が必要になり、生活者の意識も変化しているように感じます。このことは企業活動にどんな影響を与えることになりますか。
青島 これからは、自社の利益だけを追求していてはダメで、社会全体の利益を上げることも求められるようになります。日本政府は2030年までにCO2の排出を半分くらいにまで削減するという高い目標を掲げているので、目標達成のためにこれから企業への要求も厳しくなりそうです。
長岡 経済と自然を両立させていくことが求められるのですね。最近、SDGsという言葉をよく耳にするようになったのですが、これまでも企業は社会的責任(CSR)を果たすべく慈善活動に力を入れて取り組んでいました。いったい何が違うのでしょうか。
青島 CSRは専ら自社の利益を削るような位置づけとして捉えられます(図表1)。SDGsは企業も利益を追求する点で異なります。技術革新への投資によって石炭から石油、蒸気から電気へ進化したくらいの革命がこれから起こりうる期待があります。しかし、現状SDGsを推進していくには、企業だけでなく価格や利便性において生活者にも相応の負担が求められていくことになります。
長岡 負担というのは、モノの値段が高くなったり、これまで普通に受けられていたサービスがなくなって不便になったりするのですね。すると、不満を抱く生活者も現れそうですね。
青島 そうですね。例えば、モノを大事に、捨てない、リサイクルと叫びながら、その企業が大量の食品ロスの問題を引き起こしていては、違和感が生じますよね。また、プラスチックは我々の生活を便利でお手頃にしてくれましたが、環境汚染を引き起こすために「脱プラ」が叫ばれています。バイオプラスチックなどの普及が待たれますが、現状では企業だけでなく、生活者も家庭の経済と環境保護の両立で葛藤することになります。
②SDGsを目指すクリエイティブをお勧めする理由
長岡 たとえば、有名なファッションモデルさんの環境保護の発言を取り上げて、「意識高い系」などと揶揄する書き込みをネットで見たことがあります。小泉元環境大臣の発言を嘲笑ネタにしたSNSも散見されました。企業がSDGs広告を発信する場合、有名人に浴びせるのと同じような揶揄に似た感情が喚起され、ネガティブに解釈される可能性がありますね。
青島 そうですね。企業も有名人と同じく話題性や集客力があるので、からかいの対象になりやすいです。今はそういった層のインプレッションを狙った記事が多く生み出される状況になってしまっているので気をつけたいですよね。つまり、SDGs的な活動をアピールする広告は印象が悪くなるかもしれないので、企業の想いが生活者にちゃんと届いているか、把握することが重要であろうと思います。
長岡 SDGsの訴求を行うことで、企業イメージが棄損される可能性があるのなら、広告しない方がよかったりしませんか。また、当たり障りのない広告を選択することもよさそうです。
青島 そのように考える向きはあると思います。しかし、SDGsに熱心に取り組んでいるのに、出稿を控えて消費者に伝わらないのはもったいない話ではないでしょうか。また、広告表現の「巧拙」により、他の企業にSDGs活動ではなく、イメージで負けるのも悔しいのではないでしょうか。
長岡 広告の評価は社会的な状況にも大きな影響を受けると思います。その点で言うと、日本は欧州に比べてまだ環境意識が高くないようだという調査報道を目にしたことがあります。そうすると、SDGs広告のメッセージ自体、まだあまり浸透が期待できない状況なのでしょうか。
青島 ACR/exからも、その様子がうかがえるデータがあります。環境意識に関する設問について92年からのロングレンジで捉えられるものをみてみると(図表2)、92年には地球の自然環境に関心がある人は7割に近かったのですが、21年では5割を割り込む状況となっています。
長岡 30年前のほうが環境意識は高かったのですね。意外です。
青島 92年のスコアが高いのは高度経済成長時代に公害問題を経験(見聞)した人が多いことが関係しているのでしょうか。私も子供の頃、海のヘドロ問題で魚を食べることに気をつけたり、光化学スモッグ注意報のサイレンで屋内に駆け込んだりしていました。宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ('84年)」も当時の土壌汚染の問題意識から生み出されているのですが、若い長岡さんには今ひとつ実感が湧かないことでしょうね。
長岡 ナウシカ?見たことないです(苦笑)。
でも、2011年頃まではなだらかな減少傾向ですね。そこから急に下降しています。これは、東日本大震災の影響でしょうか。復興活動の下で環境意識が陰に隠れざるを得ない状況にあるようですね。
青島 震災前の2000年代は、家電など各種リサイクル法案の整備に伴うアナウンスメントや、エコカー減税による出稿もあり、エコやエコロジーというキーワードが生活者の意識を引っ張っていたと思われます。
長岡 エコロジー!よく耳にしました。今でいうと、サステナビリティといったキーワードが当てはまりそうですね。図では、2018年を底としてようやく環境意識が上昇する兆しがみられていますね。
青島 学習指導要領では20年度に小学生、21年度に中学生、22年度には高校生においてSDGsの教育カリキュラムの導入が指示されているようです。今後おそらく、新しく環境意識の高い世代が生み出され、全体を押し上げていくことが予測されますね。
長岡 持続可能な社会に貢献するメッセージを発信したいとお考えの企業担当者様には、ぜひ広告コミュニケーションの影響力を存分に発揮されて、この意識の波を高めていってほしいですね。
青島 はい。これは短期ではなく、長期的な取り組みになると思われるので、そのために意図した方向に向かっていくクリエイティブなのかどうか、ぜひ調査で把握していただきたいと思います。
■クリエイティブカルテの概要
・弊社の自主調査で、2016年4月より開始。
・依頼素材と自主選定を組み合わせて週2回実施中。
21年12月調査回の時点で、約4300素材の評価データを保有。
■調査方法
・インターネット調査。CM動画を視聴後に評価。
自主選定はYouTubeの企業公式ページにあるCM動画で調査。
■ 調査エリア
・関東一都六県(に居住)
■ 対象者条件
・男女15歳(中学生除く)~69歳
・N=540s