Inter BEE 2022 幕張メッセ:11月16日(水)~18日(金) オンライン:12月23日(金)まで

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Special 2023.10.19 UP

【INTER BEE BORDERLESS】企画セッション「配信サービスはVODの次に進むか」事前レポート

境 治 Inter BEE 編集部

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INTER BEE BORDERLESS、17日(金)13時からのセッションは「配信サービスはVODの次に進むか」と題し、3つの映像配信サービスのキーマンに集まってもらい、今後の配信業界の行く先を議論する。この日の午前中のセッションでは海外の最新動向を議論するが、それを受ける形で日本の事業者の次の一手を見極めるのが目標だ。
登壇するのは株式会社U-NEXT 取締役COOの本多利彦氏、株式会社TVer常務取締役COOの蜷川新治郎氏、株式会社フジテレビジョン・ビジネス推進局コンテンツビジネスセンタープラットフォーム事業部長・野村和生氏。SVOD、キー局無料ポータル、単独局の多機能VODとそれぞれ違う立場から、米国の最新動向も参考にしながら今後の進む道をお話しいただく。モデレーターはこの記事の書き手である、境が務める。みなさんに満足いただける濃いセッションにしていきたい。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境治)

日本のSVODはさらに成長していくのか?

米国ではNetflixやディズニープラスなどが巨大なSVODに成長したが、ここへきてやや停滞気味だ。両者とも広告プランを導入するなど、対応に追われている感がある。そんな中、FASTサービスが新たに台頭を始めており、無料広告型のストリーミング配信という形態で視聴者を獲得している。主要なFASTは大手メディアグループに買収され、既存のテレビ局との連携でテレビ広告市場を再活性化する立役者となった。
どうやら米国では有料型も広告プランを導入したり、無料として始まったサービスが有料プランも加えるなど、サービス形態が多様化し、サービスの分類ができなくなりつつあるようだ。また映像配信には広告モデルが欠かせなくなっているのも見逃せないポイントで、その市場の成長性がテレビ広告市場全体を再拡大させている。
このセッションでは新たな局面に入った米国の映像配信業界を参考にしながら、日本の業界の近未来像を探るのがテーマだ。まずはパネリストのお三方に10分強程度ショートプレゼンしていただき、後半はこってりディスカッションに使う。

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U-NEXT 本多利彦氏

U-NEXT本多氏に登壇をお願いしたのは、もちろん今や国内SVOD事業者として最大の会員数を擁するプレイヤーだからだ。特にParaviの統合により国内ドラマを武器に加えたことは今後いよいよ業界で最有力に飛躍する、重要な布石となりそうだ。またスポーツコンテンツにも力を入れたり、ライブも意欲的に配信するなど、サービスの幅を次々に広げている。
アマゾンプライムビデオやNetflixといったIT界の巨人に加えディズニープラスなど外資勢に押されがちな映像配信業界にあって、国内プレイヤーの雄としての期待は大きい。今後の配信サービスを語るに欠かせない存在として、登壇していただく。モデレーターとしてのみならず、一人の熱心なユーザーでもある私として、サービスに期待するものも突っ込んでお聞きしたいと考えている。

テレビ局の配信サービスはどこを目指すのか?

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TVer 蜷川新治郎氏

一方、テレビ局の配信サービスとして、放送業界の新たな成長を担うのがTVerだ。8月には月間UB数が3000万を超えたことが報じられ、成長の勢いは止まる気配がない。放送での視聴率が減少を続け、それに伴う放送収入も伸び悩む状況の中、各局ともTVerでの再生数を競うようになってきた。広告収入も再生数と共に伸びている様子で、放送収入の減少を補う番組も出てきていると聞く。
ただ、このINTER BEE MAGAZINEでのインタビューで若生社長が述べていたのは、見たい番組の「直行直帰型」であるのが悩みであること。これを「滞留型」にするのが現状の目標とのことだったが、登壇する蜷川氏にはそのための施策などを聞いていく。さらに、ローカル局の番組についてなどTVerには期待が大きい分、課題も多いがその辺りも蜷川氏の思いを語ってもらう。公の場でも気にせず本音を語る蜷川氏だからこそ、日本の業界に本当に必要なことを主張してもらえると期待している。

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フジテレビ(FOD) 野村和生氏

フジテレビでFODの顔としてサービスを牽引してきたのが野村氏だ。InterBEEでも様々なセッションに登壇してもらってきたが、このセッションでは単局の配信サービスの運営者としての考えを聞いていきたい。米国では配信サービスが分類不能となってきたことを書いたが、FODは元々SVODもAVODもTVODも混在し、電子書籍サービスも含んでいた。野村氏はそれをUltra-VODのUVODと称してきたが、米国の状況を鑑みるとずっと最先端だったとも言える。
多機能VODを運営してきたことの優位性やノウハウなど、今後の一つのモデルとして話を聞いていく。また日本のプレイヤーとしてFASTのような新しいサービス形態についての可能性も、探ってみたいところだ。様々なハードルが立ち塞がりがちな配信業界を楽しく盛り上げてきた野村氏ならではの、思い切った発言も引き出したい。
個別の話もお聞きするが、今後の日本の映像配信全体の展望や可能性について、お三方のディスカッションへの期待も大きい。メディア業界が行き詰まり、出口が見えなくなっている感がある。まったく違う出自のサービスに取り組むお三方だからこそ、セッションでの化学反応から次の方向性が見えるかもしれない。ゴールを決めずに、多少脱線しながらでもエキサイティングな議論にできればと思う。皆さんもぜひ期待を高めて聴講していただきたい。

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