Inter BEE 2023 幕張メッセ:11月15日(水)~17日(金) オンライン:12月15日(金)まで

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Special 2019.08.27 UP

【Inter BEE 2019】太陽企画に聞くCM制作会社にとってのInterBEE〜映像のクオリティは技術と一緒に進化している〜

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太陽企画・技術チームから取材に応じてくれた渡邉秀久氏、辰巳茜璃氏、豊永玲氏(左から)。

放送機器展として出発したInterBEEだが、映像技術の進化とともに多様なジャンルの映像制作者が来場するようになった。CM制作会社からも毎年多くの来場者が幕張を訪れる。広告制作の進化にInterBEEはどれくらい寄与できているのだろうか?そこで大手CM制作会社のひとつ、太陽企画の方々にお話を聞いた。同社は社内に層の厚い技術スタッフを擁し、編集やMAを制作と一緒に内製できる体制を整えている。最近は制作会社がポスプロ作業を内製化することが増えているが、太陽企画はこの流れを先取りしたスタイルを確立している。同社の豊永玲氏(プロデュースマネジメントセンター/Unit3 Unit Leader)と渡邉秀久氏(+Ring/Editルーム Chief Editor)、辰⺒茜璃氏(+Ring/サウンドデザインルーム Mixer)のお三方から見たInterBEEの魅力や課題をじっくり聞いてみた。
(聞き手・文:メディアコンサルタント 境 治)

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記者:お三方とInterBEEの関わりをうかがいたいのですが、みなさん登壇の経験があるそうですね?

豊永玲氏(以下、豊永):私は2012年にキヤノンさんがC500を出した時、4Kでのワークフローについてオフラインエディターの立場でお話し、翌年はMac版のスモークを導入したのをきっかけにオートデスクさんのブースで渡邉と一緒に登壇させていただきました。3回目は2017年にVGIさんのブースで今度はMac版のフレームについてやはり渡邉と一緒に。

渡邉秀久氏(以下、渡邉):豊永と一緒に2回出て、オペレーションしながらデモをお見せしたのですが、実は人前で操作するにあたり猛特訓しました。登壇のために技術を学んだところがあります(笑)。

辰巳茜璃氏(以下、辰巳):私は2017年に「WEB連動コンテンツの音声」をテーマにAbemaTVの方と一緒に登壇しました。

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記者:太陽企画の技術の皆さんの中には有休取ってInterBEEに行く方もいると聞きました。

渡邉:それは私です(笑)。学生時代から技術のことに興味があって当時から展示会に行ったりアルバイトもしていました。会社に入ったら即、InterBEEでしたね。その頃はオートデスクさんのブースが人気で、あの映画のこの場面はオートデスクの何々で編集してるなどと情報を得て行っていました。20年前は何億円もした機材で欲しくても買えません。そういう機材がMac版で廉価で出てくるとまた行って。そういった最新の技術が唯一見られる場でした。

豊永:渡邉が先陣を切ってくれた影響で他のスタッフも行くようになって、あのブースが面白かったなどとみんなで話していました。直行直帰でいいから自分の好きなタイミングで行けるよう促しました。規模の大きな展示会ですから、それぞれが得た情報を社内ミーティングで話してもらって集約すると全体像がわかる。渡邉がオートデスクで編集ソフトの価格が下がったというので導入したり。InterBEEで見た機材を1、2年後には入れていましたね。

会場を回る際に作る「時間割」

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記者:辰巳さんは2017年に登壇した時に初めてInterBEEに行かれたんですか?

辰巳:いえ私も学生時代から行ってました。ただその頃は見方がわからなくてグッズをもらって帰って喜んでましたね。AVIDのシールをもらったり(笑)。いまはやっと回り方がわかってきて、事前にサイトで情報を得て時間割を組むんです。

記者:時間割?!うわ、びっしりですね!お昼ご飯の時間がない?

辰巳:お昼ご飯はいちばん最初に食べておきます。一日しか行けないのでしっかりスケジュールを組んでおかないと見たいところが見られないんです。ここで誰々が喋るから絶対行こう、とか。音のブースにはハリウッド映画などを手がけている方が海外からいらっしゃることが多いので見逃せません。

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豊永:プロダクションで編集機材を導入するところは2000年代からちらほら出てきましたが、MAはポスプロさんの大きな部屋に立派な機材が揃っていてそれを使うのが常識でした。その後弊社でもMAルームを作ることになり、機材をよく見て太陽企画に合うかどうか調べて導入しました。穴場的なものを探し回って見つける感じです。

記者:InterBEEをディープに活用していただいていますね。放送業界以外にアピールできていないと反省していたのですがその点はどうでしょうか?

渡邉:ブラックマジックが一般の方でも手の届く価格になってきたこともあり、YouTuberの方もInerBEEに来場することも増えたようです。ただ少し前まで編集系の企業が出展してエディター同士の交流の場になっていたのが、最近そういうブースが減ってCM業界の技術者が語り合う場がないかもしれません。

豊永:前はあちこちで編集系の技術者が講演していて、そこにみんな集まっていましたね。編集系の展示が減ったのでそういう場は少なくなったように思います。

進化するテクノロジーに追いつく意志を持ちたい

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記者:映像技術はどんどん進んですごい世界も簡単に描けるようになってきました。今後も映像における技術の役割は高まるでしょうか?

渡邉:機材の処理能力がどんどん早くなっています。一方で4Kさらに8Kも出てきたのでデータの重さとの追いかけっこです。ただ処理能力が早くなると効率が上がり、クオリティにもプラスになります。映像の中で消したいものがあると前は一枚一枚作業していましたが、AIやディープラーニングなどで一発で消せるようになる。そういう単純作業はパッと済ませちゃって違う部分で頑張ればクオリティが高まるはずです。どんどん新しい技術を吸収することでクオリティも高められるので、編集技術者は常に勉強し続けることが大事だと思います。

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記者:映像に比べると音声に関する技術はあまり変わってないように見えますが。

辰巳:音声の分野でもAIが取り入れられてきているので、例えばAIが勝手にミックスするのが当たり前の世の中になるかもしれません。だからこそ、技術者であるミキサーは、音声技術のモラルやルールがどう作られてきたかを解釈しながらミックスすることがより大切になっていきます。技術はうまく使わないと凶器にもなりえます。視聴者に優しい音声とは何か、知識と技術を身につけねばなりません。そして自分なりの作品への理解が必要です。TVを見ていて、CMになるといきなり音量が大きくなるのが問題になり、2012年にラウドネスが取り入れられました。それまでは「主張する」ミックスだったからでしょう。テレビはつけていれば勝手に映像が流れていきます。技術者は見る人の環境を考える必要があったのです。でもそのうち人の見る環境も考えられて、作品の意図もわかってしまうAIが現れて「規定に合わせていい感じにミックスして」となるのかもしれませんが(笑)。

プロダクションに技術部門がある効用

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記者:太陽企画さんはCMプロダクションの中でも技術チームが整っていると思いますがそこにはどんな意義があるのでしょうか。

豊永:一緒にいることで意思疎通が早く濃くできるのはメリットだと思います。ディレクターやプロデューサーの思いがあって、それを少し横から見てこうした方がいいと言えることでクオリティがひとつ上がる。同じ会社にいるからこそ、予算的にもアイデア的にもプロデューサーにとって助かる面がいろいろあるようです。同僚の気安さで無理難題も平気で言われてしまいますが、こちらもできることできないことが言えます。それでも無理を言われるとなんとかしようとしてそこから良いものが生み出されることもありますね。

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渡邉:同じビルで働いているので日々みんなと接していて、いい意味で啓蒙できているかなと思っています。他のプロダクションより知見のある会社ではないかと。いまはChatツールが発達して日々社内でコミュニケーションをとりながら仕事を進めるので、技術スタッフも演出の意図をよくわかっている。それはクオリティにもつながっているはずです。いまは4Kで撮るのが当たり前。技術の使い方がコストにも反映します。これからはプロデューサーの方もInterBEEに行かなきゃダメじゃないですか?(笑)

辰巳:MAは画よりもあまり重視されないので逆に、しわ寄せが来がちというのはあります。太陽企画のミキサールームは、アシスタント含め4人という少人数で行っているので、現場には行かず、ポスプロのみです。この音も現場で録っておいてくれればもう少しどうにかなったのにな、ということも多いです。事前に相談してくれる人もいますが、後でどうにかなるだろうと思う人はそのまま。結果、ミックスの段階でなんとかしてくれと言われて。困るんですけど、結局どうにかしちゃったりするんです(笑)。

豊永:制作部にはもう少し技術に興味を持ってもらいたいという思いはありますね。用語を知っているだけでも違いますから。詳しくは技術者に聞けばいいので制作部もInterBEEに行って自分なりに気になるものを見つけてもらうといいと思います。

渡邉:私は今年も有休取って行きます(笑)



お話をうかがって、CM制作の分野でもInterBEEの場を役立ててもらえていることがわかった。そして技術が進化しているからこそ、映像や音声のクオリティに最新技術が大きく関わることも理解できた。今後はAIによりさらに新しい進化の段階に入りそうだ。広告制作業界にとってもっともっと有益なイベントになるよう、InterBEEも進化せねばならないだろう。お三方をはじめ太陽企画のみなさんに今年も幕張でお会いできればと思う。

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