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Special 2021.10.07 UP

【Inter BEE CURATION】ネット動画時代におけるテレビCMの役割を考える 商品を知り、商品を買うきっかけになるテレビCM

渡辺庸人 / 吉池典子 VRダイジェスト+

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。テレビCMにはどんな役割があるのかを、YouTube広告と対比した記事です。テレビCMには認知だけでなく購買のきっかけにもなっていることをデータを示して解説しています。

テレビCMの役割ポイントは"想起"と"後押し"

 多くの生活者が当たり前のようにインターネット動画(以下「ネット動画」)を視聴するようになり、動画サイトなどで表示される動画広告の存在感が増してきています。特に、コロナ禍でネット動画を視聴する機会や時間が増加し、それにともなって動画広告を見たり、それが購買行動のきっかけになったりすることが増えた方も多いでしょう。

 このような状況において、同じ映像広告である「テレビCM」を考えると、「ネット動画広告」と比較して役割を検証する必要が今まで以上に増してきたといえそうです。「ネット動画広告」は「テレビCM」の代わりになるのでしょうか。それとも違う役割や価値があるのでしょうか。

 これまでにも、メディアプランニングに活用する視点から広告メディアごとの態度変容役割の違いに関する研究が行われています。例えば吉田(2019)※1では、態度変容を生活者のメディアに接触する際の心理状態である「メディア・エンゲージメント」の概念を用いて描写し、テレビはインパクト、デジタルはタイミングという態度変容役割があることが示されています。つまり、「テレビCM」と「ネット動画広告」とでは異なった特徴や役割を持っていることが考えられるわけです。

 今回はここからさらに発展させ、ひと研究所が実施した調査のデータを用いて、" ネット動画時代" におけるテレビCMの役割を紐解く分析結果を紹介していきます。ポイントは、 " 想起" と" 後押し" です。

調査データ
・ テレビや各サービスで流れる広告(テレビCM、CM 動画、宣伝動画)について、"どのようなイメージをお持ちですか" という質問への回答 (15~69歳が回答。調査概要は末尾に記載)。
・ 分析対象は「テレビのリアルタイム視聴」と、ネット動画サイトを代表して「YouTube」。いずれも3か月以内視聴者(利用者)が回答。
・ イメージ項目は、吉田(2020)※1で使用した下記の28項目。

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分析1:テレビCM とYouTube 動画広告のイメージ差は<定番な>と<買う・利用するきっかけ>

 まず、15~69歳のデータを見てみます(図1)。
 先程紹介した28の広告イメージ項目のスコアを見てみると、「想起」「興味関心」「購入」ではテレビ、「内容理解」「好意」「購入意向」「推奨」ではYouTubeのほうがスコアが高めとなる傾向が見られます。特にスコア差が大きいのが、<定番な>と<買う・利用するきっかけとなる>で4ポイントほどテレビのほうが高くなっていて目立ちます。

 視聴者(利用者)ボリュームがテレビとYouTubeでは異なるため、リーチの広さが異なるものの、視聴者(利用者)ベースでは YouTubeも十分にテレビに近い広告イメージを獲得しているといえます。その上で、テレビCMの役割として特徴的なポイントとなるのが、この差の大きかった「想起」カテゴリーに含まれる<定番な>および、購入への後押しとなる<買う・利用するきっかけ>といえます。

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 次に、" ネット動画時代" を担う若年層の15~29歳に注目します(図2)。
 広告イメージ項目のスコアを見てみると、全体的にYouTubeのスコアが若干ながらテレビを上回っている傾向です。若年層だからYouTubeが極端に高くなるというわけでもなく、テレビCMとYouTubeの動画広告のイメージにはさほど差がない状況と解釈できます。

 テレビの特徴として、先ほどの全体傾向と同様に「想起」の<定番な><名前が刷り込まれる>に加えて、「好意」の<信頼できる>、「購入」の<買う・利用するきっかけとなる>が挙がります。若年層であっても、商品・サービスを想起したり、あるいは信頼を寄せたり、買う・利用するきっかけとして、テレビCMがネット動画広告よりも影響力を十分に持つことを示す結果となっています。

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分析2:動画広告ポジティブ評価層も認めるテレビCMの役割とは?

 続いて、「実際に動画広告から商品・サービスなどに影響を受けている人たち」にさらにフォーカスして、テレビCMの役割を検証します。この場合の「影響を受ける」とは、動画広告やCM動画などをきっかけに、商品やサービスについて下記のいずれかに該当したことがある人を指します。

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 このような人は、YouTube上の動画広告にもポジティブな評価をしていることが予想されます。そして、実際のスコアを見てみると、予想通り、YouTubeのスコアの高さが目立つ結果となっています(図3)。

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テレビCMは「アッパー」「ロウワー」両ファネルに影響

 広告イメージ項目のスコアを見てみると、まず全体的にテレビもYouTubeも、ここまで見てきたデータに比べて非常にスコアが大きいことがわかります。実際に動画" 広告"から影響を受けている人のため、基本的にテレビCM を含めた" 広告全般"に対してポジティブな態度をとっていると考えられます。

 そのうえで、具体的に見ていくと、「興味関心」「内容理解」「好意」「購入意向」でYouTubeのほうがテレビよりも全体的にスコアが高くなっています。動画広告から実際に商品・サービスに影響を受けた、と回答している人たちであることを考えると自然な結果と言えます。一方で、テレビのスコアがYouTubeを大きく上回っている項目があることも同時に見えてきます。

 「想起」についてはYouTubeよりもテレビのほうが、総じてスコアが高くなっています。15~69歳全体でも差が見られた<定番な>では10ポイントの差がついていますし、<買う・利用するきっかけとなる>もテレビのスコアが上回っています。

 テレビCMというと、その幅広いリーチからまさに商品・サービスを" 想起" させるためのものと認識されている方も多くいます。その役割は、動画広告にポジティブな評価をする人たちの中でも、変わらず確認できました。

 また、<買う・利用するきっかけとなる>のスコアの高さから、「購買行動」の最後の" 後押し"の役割を、テレビCMが担っているのではないかということも推察できる結果でした。この点はさらなる研究が必要ですが、購買に対してテレビCM が良い効果を持っていることを示す一つの重要なデータであるといえます。購買ファネルを考えるとテレビCMは想起のような「アッパーファネル」に加えて、購入のような「ロウワーファネル」にも大きく影響しているということになります。

まとめ

 今回は広告イメージ項目を用いて、テレビCMとYouTubeの動画広告の評価を比較しながら、ネット動画時代におけるテレビCMの役割や価値を探りました。

 分析1では15~69歳と15~29歳について分析し、" 想起"の中でも<定番な>と、購入への" 後押し" となる<買う・利用するきっかけ>などの項目で、テレビCMの評価が YouTubeの動画広告の評価を上回っていることが確認できました。
 分析2では、動画広告にポジティブな評価の人たちにも、分析1と同様にテレビCMの役割を確認できました。

 このように動画広告との比較においても、テレビCMの効果性、その役割は、"想起"や"後押し"を中心に確認できました。つまり、「アッパーファネル」に加えて、「ロウワーファネル」においてもテレビCMの評価の高さが見られました。そのほかにも、分析2では、「質がいい」「信頼できる」「話題にしたい」などが、テレビCMにおいても動画広告と比較して注目できるスコアとなっていました。これらの点は、テレビCMの役割や価値、その効果性を考える上では重要な視点になるのではないかと思います。

 一方で、テレビCM よりもYouTubeの動画広告のスコアが高かった項目については、まさに動画広告の活用ポイントでもある、と言うことができると思います。好意や購入意向の醸成のような、いわゆる「ミッドファネル」における評価の高さは注目する必要があります。

 これからの時代、同じ映像の広告といっても「テレビCM」と「動画広告」どちらか一方でよいなのではなく、それぞれの特長を生かして組み合わせていくことが、広告効果全体を高めていくために重要であることを示唆しているといえそうです。

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<参考文献>
※1 ● 吉田正寛(2019)「メディア・エンゲージメントを加味した広告 メディア価値可視化と出稿最適化への応用|最適配分から最適組み合わせへ」『日経広告研究所報』306号、18-25ページ
● 吉田正寛(2020) 「購買ファネル上のメディア・エンゲージメントからみた広告メディア別の役割」 VR Digest+、2020年03月27日

※「VRダイジェストプラス」での本記事は下の「関連URL」からお読みいただけます。他の記事も併せてぜひお読みください。

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