【Inter BEE CURATION】BBC「アトミック・ピープル」 被爆者の証言番組が英で絶賛
※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、放送批評懇談会発行の月刊誌「GALAC」2024年11月号からの転載です。
昨年、BBCのドキュメンタリー「J―POPの捕食者 秘められたスキャンダル」(2023年3月放送)が、日本で大反響を呼び起こした。旧ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏による性加害を扱った番組である。
このドキュメンタリーのプロデューサー兼監督を務めたインマン恵さんが、今度は別のドキュメンタリー監督ベネディクト・サンダーソン氏と組んで、広島と長崎に投下された原爆による被爆者の証言を集めた「アトミック・ピープル(Atomic People)」を制作した。広島への原爆投下日は1945年8月6日、長崎は同年8月9日だが、戦後79年の節目を待たず、今年7月31日からBBCで放送された。
8月6日や9日の放送でなければ、インパクトが弱く、見逃されてしまうのではないか。そう思ったのは筆者の杞憂だった。「今年最も衝撃的なドキュメンタリー」(保守系高級紙『デイリー・テレグラフ』、5つ星が満点となる評価で星5つ)、「被爆者が語る、人への影響」(経済紙『フィナンシャル・タイムズ』、星5つ)、「広島生存者の静かで衝撃的な真実」(左派系高級紙『ガーディアン』、星4つ)など、どの新聞もトップクラスの評価を与えている。辛口が基本の批評家たちがここまでべた褒めするのは、稀有だ。
日本人としては関心を持ってもらってうれしいが、手放しで褒められると、「本当か?」「どこがそんなに受けたの?」と突っ込みたくもなる。しかし、第2次大戦中に英空軍爆撃機のパイロットだった父を持つ家人と一緒に番組を見てみると、知らなかったことがいっぱいで、悲しみ、痛みが心に沁みた。被爆者の処遇に対する怒りも湧いた。二人で2度見て、その後も一人で何度か見た。複数回見た理由や番組の概要を伝えてみたい。