Inter BEE 2023 幕張メッセ:11月15日(水)~17日(金) オンライン:12月15日(金)まで

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Special 2024.12.20 UP

【Inter BEE CURATION】”ライブ配信メディア”に時間もお金も使う若者たち ~Z世代への新たなアプローチ方法を考える~【ウェビナー レポート】

VR Digest編集部 VRダイジェスト+

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[モデレーター]
株式会社ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット ビジネスデザイングループ プランナー 兼 ひと研究所 研究員 野木美穂

[登壇者]
配信技術研究所株式会社 取締役 中村鮎葉氏
GLOE株式会社 代表取締役 古澤明仁氏
株式会社電通デジタル ソーシャルコネクトグループ チーフメディアリサーチャー 天野彬氏

昨今、ビジネスの世界におけるターゲットとして大きな存在感を放つようになった、Z世代の若者たち。デジタルネイティブである彼らは、日常的にスマートフォンやタブレットなどの端末を使いこなし、SNSのライブ配信やゲームの利用頻度・課金頻度が高いことが特徴です。こういった背景もあり、Z世代に向けた新たなアプローチ方法として「ライブ配信メディア」に注目が集まっています。では、Z世代の若者たちは、どのような思考でライブ配信メディアに向き合っているのでしょうか。

本ウェビナーでは、ゲーマーの専門家である配信技術研究所株式会社の中村鮎葉氏、eスポーツビジネスに詳しいGLOE株式会社の古澤明仁氏、若者の消費やトレンドの研究・コンサルティングを専門とする株式会社電通デジタルの天野彬氏を迎え、ビデオリサーチの研究員とともにディスカッションを行いました。

「ライブ配信メディアとは」 若年層ほど、 "好きな配信者=推し"への貢献意欲が高い傾向が!

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野木
本ウェビナーにおける「ライブ配信メディア」とは、YouTubeやTwitchに代表されるさまざまな配信プラットフォームで、リアルタイムに配信されているコンテンツのことを指します。これらのメディアは、視聴者と配信者がチャットや"投げ銭"といった方法で、双方向でコミュニケーションを取ることができるのが特徴です。

配信のジャンルは、アイドル、スポーツ、音楽など多種多様ですが、今回は、若年層を中心に大きな盛り上がりを見せているゲーム実況やeスポーツ、VTuberのライブ配信をクローズアップして考察していきます。

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我々ビデオリサーチは、ライブ配信メディアが若年層と接点を持つことができる重要なコンテンツであると考え、2024年1月に「ライブ配信メディア調査」を実施。この調査で、TwitchやOPENREC.tvなどのゲーム実況の頻度が高いライブ配信サービスは、利用者は少ないものの1日あたりの平均視聴時間が比較的長めであることが分かりました。

ライブ配信メディア印象については、「退屈しのぎ・暇つぶし」よりも、「楽しい・面白い」という回答が上位にランクイン。「自分も参加している気持ちになれる」という印象も他のメディアより高く、チャットなどを通じた双方向性コミュニケーション視聴者が能動的な行動につながっていると考えられます。

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また、ライブ配信コンテンツの魅力については、「ながら見に向いている」「長時間配信されている」という意見が目立っています。15~19歳は「コメントで配信者とやりとりができる」「好きな配信者に貢献できる」のスコアも伸びており、若年層ほど"好きな配信者=推し"への貢献意欲が高い傾向がみられました。

【ライブ配信メディアレポート】
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「ライブ配信の魅力」 交流と偶発性を楽しむ同期的なメディアの人気が、コロナ禍を機に一気に爆発

中村
ライブ配信メディアの人気度を測る指標として、世界規模で使われているのが「滞在人数×滞在時間=視聴時間」です。滞在人数だけでなく、滞在時間も広告価値に比例するという考え方ですね。

実際、グローバルでオンラインメディアの利用時間は拡大の一途をたどっています。GAFAでも様々なサービスがあり、生活者の可処分時間、余暇時間を奪い合っている状況なのです。そのため、「ユーザーがこのコンテンツに何分使っている」という視聴時間の考え方は有用性があるものになります。

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日本でも、コロナ禍におけるライブ配信の視聴時間は、2020年1月から3月にかけて倍増。また、2024年現在と比べると約4倍に伸びていることが分かっています。コロナ渦を機に急増した視聴時間が、現在も引き続き伸びているのです。

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古澤
以前のeスポーツでは競技シーンが人気だったのですが、コロナ渦を機に、ゲーム配信に対する視聴のモチベーションが多様化してきました。在宅時間が増え、「自分の趣味を活かして、ファンとのエンゲージを図ろう」と考えてゲームコンテンツのライブ配信を始めたタレントが続々と登場したのも大きな要因です。タレントの意外な素顔が見られたり、思いもしなかったコラボレーションが実現したりなどもあり、「この瞬間を逃したらもう見ることができない」という期待感が膨れ上がっている状況です。

この波に乗じて、女性のコアファンも急増。チャットを活用して、分からないことをファン同士が教え合うといった新しいコミュニティも生まれています。

中村
インターネット上にあるメディアのほとんどが、お目当てのものを見に行くコンテンツメディアですが、ライブ配信はそれにあてはまりません。ライブ配信の視聴者は、"とりあえず"で視聴します。長時間にわたるライブ配信で、瞬間的に面白いことをやっている可能性は低いのも事実です。でもそれ以上に、「知り合いがいるから見に行く」「人の輪がある場所に行きたい」といった声が非常に多いんですよ。コンテンツを"ご飯"と例えるならば、ライブ配信は"居酒屋"的な位置づけになると思います。

天野
メディアコミュニケーションの分類も多様化しています。長い間、メディアは"非同期的"でした。新聞などのように、コンテンツが出来上がったあと、生活者は好きなタイミングで見る。その後、ライブ動画のように同じ時間に同じものを見る"同期的"メディアが誕生し、2010年代には動画を見るタイミングは違っても、コメント上では同じところで盛り上がっている感覚を味わえる、同期していないが同期しているように感じられる"疑似同期的"なメディアも生まれました。

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近年、ライブ配信の面白いところだけを抜粋した「切り抜き動画」などの、"メタ同期的"なメディアも人気を呼んでいますよね。例えば、Instagram Liveでもインフルエンサーが面白いことを言うと、その部分の切り抜き動画がさまざまなプラットフォームで拡散され、コアな盛り上がりをみせています。

「ライブ配信はなぜZ世代に人気なのか?」 楽しくて、心地いい! 多様なSNSのなかで一番輝ける場所として注目

中村
こうした状況から、ライブ配信から流行が次々と生まれるようになりましたよね。つまり若者は、文化の上流を取りに行くために、ライブ配信を視聴するんです。その居場所を確保するために、時間もお金も使っているのではないでしょうか。

根源にあるのは、「自分はこのチャンネルに貢献している!」という推し活心理。例えば、有料会員になればVIPルームでチャンネルオーナーと会話できるというような特別なサービスもありますが、こういった体験から特別感を得たい視聴者が多いからだと考えています。

天野
インフルエンサー自身も、「ライブ配信は、ファンと狭く深くつながるチャンネルだ」と言っています。ファンのリーチを広げてくれるのはYouTubeやXではありますが、これらは広く浅く浸透するというイメージ。一方、ライブ配信はファンとの一体感やエンゲージメントをつくりやすく、コアなファンが集うといった特徴がうかがえます。例えば、配信者がライブ配信中に視聴者の名前を呼ぶと、呼ばれた人は「配信者から認知されている」という喜びが生まれ、より深く配信者にコミットメントする動きもあるようです。

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中村
私も配信者の一人ですが、この傾向は確実にあると実感しています。私を含めて多くの配信者は、ライブ配信で自分が一番伝えたいことを好きなように語り、他のSNSは拡散に使っているんです。

デジタルネイティブの中高生たちもこの仕組みに気づいていて、「ライブ配信は、一番配信者の人間らしさが出ている場所だ」と一目を置いているんですよね。最近では、「YouTuberになりたい」ではなく、「配信者になりたい」という若者も増えています。楽しそうだし、心地いい。ライブ配信は、特別感のあるメディアに確実に成長していますよね。

「ライブ配信市場における広告・PR手法の特徴と効果」 ファンが熱量高く応援し、スポンサーの商品情報を自発的に拡散!

古澤
ファンとのエンゲージメントの高さは、eスポーツ業界でも顕著に表れています。購買意欲の高いコア層の割合は、リアルスポーツが約15%なのに対し、eスポーツは約50%。選手や配信者への推し活の一環で、グッズ購入やSNSでの拡散率が高いことが分かっています。

その理由の一つは、eスポーツのゲーム配信が長時間かつほぼ毎日実施されていること。ファンへのPR時間が長く、継続性や連続性があるのです。さらに、「自分は、チームの応援団の一員だ」という意識が根づいていて、一人ひとりの熱量が非常に高いことも特徴です。

例えば、eスポーツチームのスポンサーである食品メーカーのキャンペーンを例に挙げると、ファンが試合応援のために自発的に商品を購入し、その写真を撮影し、ハッシュタグをつけてSNSに投稿。この行動の背景には、自身の応援しているチームのスポンサーに対する感謝と、自身のSNSで投稿することで「自身はチームの応援団なんだ」という帰属意識や承認欲求も含まれています。こういったファンの行動は、企業の好感度やブランド認知のベースをつくるという観点でも、ボディブローのように効いているはずです。

企業としても広告価値、費用対効果はかなり高いと思います。マスメディアよりもファンの人数は少なくても、熱量が桁違いだからです。さらに、企業広告のみならず、社会課題を解決するためのメッセージを拡散するための手段として有効です。今後、ライブ配信の広告価値はさらに上がっていくと思います。

天野
広告の存在意義は、時代の変遷とともに変わりつつあります。昭和時代にはよく、「広告とはラブレターである」と表現していましたが、今は古澤さんのお話にあったように「広告とは応援する行為である」といえるのではないでしょうか。近年、うまくコミュニケーションができているブランドのキャンペーンは、生活者やカルチャーを応援する姿勢が出ている傾向があります。人々がSNSを通じて「好きなこと」で"界隈"をつくり、ライブ配信等のメディアやプラットフォーム上で滞在時間を過ごす。そのような新しいカルチャーやコミュニティに、ブランドがどう関わるかという観点でコミュニケーションを考えると、より多彩な手法・展開がみられると思います。

「今後の展望」 若者のカルチャーが生まれる場所! 鮮度の高い情報発信には不可欠なメディアに

中村
ライブ配信メディアが今後どのように変わっていくのかは全く予想がつきませんが、配信者が増え、ジャンルも細分化していく気がします。あらゆる人の趣味がカバーできるようになり、広告主としては出稿先が必ずどこかにある。そういう社会になっていくと思います。

天野
今後も、若者のカルチャーがライブ配信含むソーシャルメディアから生まれていくのは間違いありません。ですから広告主に大事なのは、この熱量のある場所で何が起こっているのかに関心をもつこと。テクノロジーやカルチャーは先が読めませんが、その読めなさを面白がることも大切だと思います。

古澤
配信者の数や、コンテンツの種類、総視聴時間は、トレンドに乗ってますます増えていくでしょう。技術革新とともに、特定の場所に縛られずに、より手軽に配信できるようになると予測しています。今まさに、「ライブ配信というメディアを活用しなければ、企業の情報発信としては鮮度が足りない」と言われる時代が到来したのだと感じています。

野木
今後、ライブ配信メディアがより身近な存在になり、広告としての可能性は急速に広がるのは間違いなさそうですね。貴重なお話を、どうもありがとうございました。

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