Inter BEE 2023 幕張メッセ:11月15日(水)~17日(金) オンライン:12月15日(金)まで

本年の来場事前登録のアンケート回答が済んでいません。アンケートのご回答をお願いします。

アンケートに回答する
キャプション
Special 2019.12.17 UP

【INTER BEE CONNECTED 2019 セッションレポート】「データで解明する!スポーツ番組の視聴の”質&価値”」〜データが浮き彫りにする広告価値〜

IMG

ラグビーワールドカップ2019日本大会は熱狂のうちに終了した。今回初めてしっかりとテレビ観戦したという人も多いだろう。INTER BEE CONNECTEDでは、データ面からその熱狂を分析するセッションを企画した。そこであらためて裏付けられたのは、「にわかファン」の存在が大きなブームを作るということである。
(関根禎嘉)

データから読み取れた「にわかファン」の存在意義

IMG
視聴質データから「にわかファン」の動きを読む

テレビの視聴「質」を計るデータとして、TVSION INSIGHTSの視聴質データは業界内ではもはやおなじみとなったと言っていいだろう。テレビに設置したセンサーから、誰がどんな表情でテレビを見ているのか、ながら視聴なのか専念視聴なのかという質的データを取得し分析するこのトップランナー企業から、代表取締役社長の郡谷康士氏が登壇した。視聴質の指標について説明してから、披露したのがこのグラフだ。9月全体をノーム値(基準値)とし、ラグビーW杯のどの試合のアテンションが高かったかをグラフ化している。郡谷氏は「『にわかファン』のおもしろい点が見えてきた」と切り出す。大会初期の盛り上がりは限定的だったが、10月5日の日本×サモア戦からM1層の視聴が伸び始め、それを追うようにF1層が同13日のスコットランド戦から伸びた。郡谷市は、これを「『にわか』が伸びてきたのがテレビデータとして取れた」と表現し、「日本が負けた後でも、M1層は高いアテンションを維持できている。日本戦がピークの人もいるが、きちんと残ってラグビーの試合を見ている人がいる」と指摘。「にわかファン」がラグビーブームを下支えしていたことが視聴データから明らかになったわけだ。

IMG
Media Gaugeは県別に視聴傾向を把握できる

次いで、株式会社インテージ メディアデータ部 部長の山田護氏がMedia Gauge Dynamic Panelを紹介。このデータは、テレビメーカーの視聴ログと、あらかじめ許諾を得たインテージとNTTドコモのdポイントクラブ会員データを搭載したDMP「di-PiNK」を連携させ、位置情報から推計した在宅判定を加味することで“人”ベースでの視聴分析が可能になっていることが大きな特徴だ。約60万人という大規模なサンプルサイズと精緻な分析を両立させている。これにより、「アイルランド戦は開催地の静岡の視聴率が高い」といった都道府県ごとの把握や、1分単位で視聴数が見えるので「負け試合は逃げ足(視聴からの離脱)が早い」など、細かい単位で視聴実態をつかむことができる。さて、ファンの動向をDynamic Panelから追いかけると、やはりサモア戦からラグビー熱が高まったことがはっきり見て取れた。エリア別に見た場合、日本戦の後半の3戦のみを視聴した「にわかファン」は関東に多く、「ガチファン」(前半2戦、後半3戦すべて視聴)は東北に多いということまでわかった。矢継ぎ早に披露される視聴データへの客席からのまなざしが熱い。

スポーツ番組が作りだす広告の新たな価値

ここから日本コカ・コーラ マーケティング本部の池田哲也氏が加わり、パネルディスカッションへ移る。モデレーターを務めるインテージ・テレビデータ戦略担当マネージャーの深田航志氏が、エム・データ社のテレビメタデータからアスリート出演のテレビ話題回数ランキングを紹介し「大坂なおみが全豪オープンで優勝してから今年はスポーツの年」と切り出した。日本コカ・コーラはラグビーW杯に早くから取り組み、「テレビ、スマホ、タブレット等でコンテンツを楽しんでいるときにコカ・コーラを飲んでもらおうというキャンペーンを行っていた」と池田氏は紹介する。驚くべきことは、広告価値を高めるために柔軟な対応を行っていることだ。スコットランド戦では、試合直前30秒枠を確保できたため15秒のCMを急遽30秒に編集し放送したところ、21%の世帯視聴率を獲得したという。池田氏は「適切なタイミングで適切なCMを流せた」と胸を張る。

IMG
アクエリアスCMはさまざまな反響を呼んだ

ラグビーのほかでも、ワールドカップバレーでのアクエリアスCMの事例を紹介した。スポーツドリンクの売上が落ちる秋冬のキャンペーンのために120秒のCMを流せる枠を探していた。するとワールドカップバレーの枠が取れたので、もともとはバスケットボールだったシーンをバレーボールに変えるという柔軟な対応をしたところ、こちらも事前に期待していた効果以上にも反響が見られたという。「単純に感動するCMを作ればいいと言うことではなく、緻密な設計をして、バレーボールの後半の盛り上がれる枠で流したことで効果が得られたのでは」という池田氏の言葉には説得力がある。郡谷氏も、このCMのAI値(Attention Index:注視度)に「最初ビックリした」という。120秒という長尺CMでありながら、ずっと視聴者を捉えて離さなかったことがデータから明らかになっているのだ。池田氏も「今回のようにブランドロゴも出ないし大々的に商品訴求もしていないのにこういう結果が出たのは発見だった」と振り返り、CMの新しい可能性が示唆されている。
 最後に、スポーツ中継でのブランド露出量とその効果の話題になった。スポーツ中継で映った見知らぬ企業ロゴが気になり、ネットで検索したことのある視聴者は少なくないだろう。これまで、スポーツ中継で映り込むブランドロゴの効果を測定することは非常に困難だったが、AI技術により可能になりつつある。日本コカ・コーラが協賛したeスポーツ「STAGE:0」の決勝の模様を放送した番組を解析した結果が紹介された。この技術を用いてデータを可視化すれば、「露出量が量れればROIを金額換算して話ができる」と池田氏は広告主として期待する。深田氏が「ここにTVISION INSIGHTSのデータやインテージのデータを加えられればおもしろい」と応じると「トライアンドエラーを繰り返してチャレンジをご一緒できれば」と郡谷氏は答える。山田氏も、「スポーツは貴重なライブコンテンツ。それを正しく計って価値のあるものにしていきたい」と意気揚々。来年のオリンピックイヤーは、データによってスポーツ番組の新たな価値を発見する1年になりそうだ。

  1. 記事一覧へ