Inter BEE 2023 幕張メッセ:11月15日(水)~17日(金) オンライン:12月15日(金)まで

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Special 2023.10.31 UP

【INTER BEE BORDERLESS】企画セッション「ローカル局の地域課題解決ビジネス〜地域の声が未来を紡ぐ〜」事前レポート

境 治  Inter BEE 編集部

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INTER BEE BORDERLESSでは16日(木)を「Local DAY」としてローカル局の活動にフォーカスしプログラムを組んでいる。その最初、10時30分からのセッションは「ローカル局の地域課題解決ビジネス〜地域の声が未来を紡ぐ〜」と題して4つの局の取り組みを紹介する。ローカル局の事例紹介は過去に何度かやってきたが、今年は「地域課題解決」にフォーカス。ここ数年、ローカル局のテーマとして挙がる「地域課題」だが、きれいごととしてでなく正面から取り組み、その上でビジネス化も明確に目標に据えた取り組みだ。パネリストは、宮崎放送のグループ会社、株式会社トレードメディアジャパン取締役部長・市原智氏、岡山放送アナウンス室担当部長兼情報アクセシビリティ推進室室長・篠田吉央氏、名古屋テレビ成長投資戦略部部長・安藤全史氏、札幌テレビ ビジネス推進本部事業局通販事業部・大阪しの氏。モデレーターはBORDERLESSアドバイザリーボードのメンバーでTVQ九州放送 編成局デジタル編成部・永江幸司氏が務める。全国からの参加なので打ち合わせはZoomで行われた。その様子をレポートする。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境治)

地域課題解決ビジネスの現在地を確認し、検証する

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ローカル局の新しいビジネス開拓は、TVQ九州放送に所属するモデレーターの永江氏にとっても自身の課題のひとつだ。「地域課題解決」はここ数年ローカル局のテーマとして注目されてきたが、一時的なトレンドなのか、それとも必修科目なのか、現在地を確認したい。それが永江氏の企画意図だったという。ここまで個別に打ち合わせを進めて、それぞれ事業のきっかけはバラバラでも、持続可能なビジネスにするために熱を持って取り組んでいるのは共通点と感じたそうだ。
実現のためにどんな試行錯誤をしてきたか、それぞれの経験を伝えて、放送以外でもローカル局が地域で存在価値を示せることを来場者に持ち帰ってもらいたいという。まずは4人の登壇者に事例をプレゼンしてもらい、ディスカッションで掘り下げていくことになる。

宮崎の産品を海外へ売る商社、手話放送のビジネス化への取り組み

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「当日のプレゼンは西から」ということで、打ち合わせでも宮崎放送のグループ会社、トレードメディアジャパンの市原氏が取り組みについて説明した。
同社は2018年に誕生。一つは商社としての事業、もう一つは海外に向けてのプロモーション事業の二本柱で運営している。主な相手国である台湾に現地法人を設立し、現在では半分程度の社員が台湾人だ。宮崎の産品を海外でどう販売していくかに取り組み、それによって自らも成長を目指してやってきた。「商流を作る」ことをテーマに、台湾だけでなく香港、ベトナム、シンガポール、タイ、さらにはドイツ、スペイン、アメリカ、カナダにまで輸出先を増やしている。最近では宮崎以外の自治体とも連携した産品の販路開拓・輸出支援を行ったり、ローカルで制作した番組を海外へ輸出、海外テレビ局の番組ロケを手配するなど活動の幅も広がっている。
放送局が商社として日本と各国を結ぶのは非常にユニークな取り組みだ。

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岡山放送の篠田氏が語るのは、同局が30年前から続けてきた手話の取り組みを持続可能にするためのビジネス化だ。
篠田氏はアナウンサーとしてスポーツ実況やニュースキャスターを経て、手話を中心とした情報アクセシビリティ活動を推進している。岡山放送では「情報を丁寧に届ける」ことをローカル局の生き残り策として捉え、マネタイズも目標に掲げた。情報アクセシビリティ推進室という部署を設け、篠田氏が室長を兼務。この一年の様々なチャレンジで可能性が見出せた領域も出てきたという。例えば手話放送のワイプ画面の横にスポンサー名を表示し、番組協賛とは別にスポンサー提供を得ている。また商品につけたQRコードを読み取るとその情報が手話・字幕・音声により、視聴覚に障がいのある方に伝わる仕組みを開発。健常者にもこれまで伝えられていなかった情報が強く伝わる効果を生んでいる。さらに手話によるスポーツ実況にも取り組んで企業からの評価を得ているという。
手話というとボランティアとイメージしがちだが、そこにビジネスの可能性が生まれているのが興味深い。

事業継承の支援を事業化、農業高校と通販事業のコラボ

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名古屋テレビの安藤氏が部長を務める成長戦略部は放送外収益を上げるための部署で、投資と事業開発をミッションとする。ベンチャー企業を主にすでに30社に投資。事業開発では社内起業支援制度により1社の立ち上げが成立したという。
こうした取り組みから生まれたのが「メ〜テレマッチング」という事業承継支援事業だ。きっかけは、1年ほど前に入った中途社員からの提案だった。承継者がいなくてレストランが潰れてしまった事例から、似た問題を抱える人が多いのではとリサーチすると、放送エリアである東海3県では製造業を中心に問題化していることがわかった。エリアパワーが落ちかねない深刻な問題と認識しPoC(概念実証)期間を経て事業化することになったという。
安藤氏の話は非常に綿密で、試算をした上で実際にその通りになるかで事業化を判断するなど、新規事業の取り組み方についても参考になりそうだ。

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札幌テレビの大阪氏は、通販事業部で北海道の産品を紹介する通販番組を担当してきた。2020年コロナ禍で、とある取引先から道内農業高校からのお悩みを相談され農業高校とのコラボにトライした。高校生が作った野菜や果物、チーズやハムなどをそれまでは授業の一環としてスーパーで対面販売していたのが売れなくなって困っていると聞き、「ほっかいどう農業高校大会」と名づけて同局のショッピングサイトで販売。ニュース番組で応援を呼びかけたところ、あっという間に売り切れに。そこで翌年、北海道の農業高校が30校あることと、ちょうど2021年に名物番組「どさんこワイド179」が30周年になることにからめて番組コラボ企画を実施。番組で30校を1校ずつ全部紹介し、料理コーナーでは高校生が作った製品で新しいレシピを紹介。さらに話題になり、新たな協賛企業も参加して高校生とともに商品開発を行い販売するなど大いに盛り上がったという。
ビジネスとしてはまだまだ課題もあり、他の登壇者の事例を参考にしたいと大阪氏は言う。そこにこそ、このセッションの意義がありそうだ。それぞれユニークな事例であり、地域の活性化をもたらしているのは間違いない。4者が集まることで、その先に大きな実りが見えてくるだろう。ぜひ多くの方に来場してもらい、議論の成果を共有してもらいたいところだ。

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