Inter BEE 2023 幕張メッセ:11月15日(水)~17日(金) オンライン:12月15日(金)まで

本年の来場事前登録のアンケート回答が済んでいません。アンケートのご回答をお願いします。

アンケートに回答する
キャプション
Event Report 2024.11.26 UP

目指すは強固な業界ネットワークイベント、来年2月にMIPロンドン初開催へ

ジャーナリスト 長谷川 朋子

IMG

来年2月にイギリス・ロンドンで新たなかたちのコンテンツマーケット「MIPロンドン」が立ち上がる。先日、フランス・カンヌで開催されたTVコンテンツ国際見本市MIPCOM2024(会期10月21日~24日)で主催のRXフランスが開催内容の詳細を発表し、既に36か国から約250社の参加が決定していることがわかった。MIPCOM/MIPロンドンのディレクターであるルーシー・スミス氏は「コンテンツビジネスを促進するためパラダイムシフトを起こしたい」と語る。

3本柱は「ミーティング」「スクリーニング」「カンファレンス」

 61年もの間、フランス・カンヌで国際コンテンツビジネスの業界イベントとして牽引してきた春のMIPTVが今年の4月をもって閉幕し、来年からイギリス・ロンドンで新しいイベント「MIPロンドン」が開催されることは国際コンテンツ流通ビジネス業界界隈で今、注目の話題の1つにある。

MIPロンドンの初回会期は2025年2月24日~27日に設定され、ウエストエンド地区にあるサボイホテルとIETロンドン/サボイ・プレイスを会場に行われる。バイヤーは無料で参加できることが特徴の1つにあるだろう。同時期にBBCなどイギリスの大手メディアが中心に新作発表会を行っている「ロンドンTVスクリーニング」と協業するビジネスイベントでもある。当初はこの「ロンドンTVスクリーニング」を補完するためのイベントとして認識されていたが、計画が進むにつれてRXフランスは業界のニーズを集約した独自のイベントを構築していることがわかった。

主催のRXフランスは先日開催されたMIPCOMの会場でアップデートした内容を説明し、MIPCOM/MIPロンドンのディレクターであるルーシー・スミス氏は「MIPロンドンはこれまでのブース出展を基本とした展示スタイルの見本市とは全く異なるかたちです。バイヤーとセラーのためだけのイベントではなく、より多くのコンテンツビジネスプレイヤーを巻き込み、“ミーティング”“スクリーニング”“カンファレンス”の3つに基づいた新しいスタイルの春の業界イベントを目指します」と話す。

 3本柱のひとつ、上映会を主催する放送局やディストリビューターの数は最大36を予定している。MIPロンドン会場内外で行われることを想定し、ドラマ、ドキュメンタリー、バラエティ、キッズなどジャンルは多岐にわたる予定だ。また従来MIPTV関連イベントで行われていた業界唯一のアンスクリプテッド(バラエティとドキュメンタリー)分野のプログラムを踏襲し、企画ピッチやサミットプログラムも行うことが決定した。

カンファレンスにおいてはマーケットリサーチの手助けとなる「FASTサミット」や「FRESH TV」なども企画される。キッズ分野に特化した「Kids at MIP LONDON」と題したコミュニティイベントも加わる。

ビジネスを促進する社交の場にも力点を置く

IMG

 RXフランスの発表によれば、MIPロンドンへの参加を決定した企業数は既に36か国から250社に上る。従来、MIPに参加している日本の放送局も初回開催のMIPロンドン参加に興味を示している。RXフランスのスミス氏は「成功を確信している」と言い切る。その理由についても説明した。

「コロナ禍以降、カンヌに参加する顔ぶれは多岐にわたっています。MIPロンドンはそのニーズに応じた革新的なイベントにします。迅速かつグローバルなイベントを提供することで、対面で新たなパートナーを求める企業にとって、できる限り有益な場にしたいと思っています。MIPCOMのような1万人が参加するイベントを目指しているわけではなく、ロンドン中心部に業界関係者が集まって春のコンテンツウィークを楽しみ、より多くの方がビジネスチャンスを得ることができる場にしたいと思っています」。

 言うなれば、柔軟かつ強固な業界ネットワークを構築することがMIPロンドンの役割にある。それに伴って、欧州様式のネットワークイベントが各種行われることも計画されている。英国の業界団体と提携した前夜祭イベントやハッピーアワーなどのネットワークイベントを企画中だ。

「カンヌで行われていたものと全く同じものにはなりませんが、できる限り業界内のコミュニティを促進するソーシャルネットワークイベントも企画しているところです。この業界はそもそもソーシャルの場に重きを置いています。食事をしながら新しいビジネスパートナーを見つけることができる場を引き続き提供していきます」と、スミス氏は話す。

 グローバル動画配信サービスの世界的な普及を背景に、コロナ禍以前と比べると、世界を視野に入れたコンテンツ制作やビジネスモデルの構築を求めるプレイヤーが着実に広がっている。ソーシャルネットワークイベントがきっかけを促し、商談に繋げていることも確かだ。これまでの取材を通じて実感していることである。

スミス氏は参加者同士の会話を重視するMIPロンドン開催への自信をこうも裏付けた。

「MIPには110カ国が参加していることが何よりMIPロンドンの成功を確信できる理由にあります。興味を持っていただいているメディアは世界中に数多くいるのです。マルチジャンルの国際的なコンテンツを扱うネットワーキング重視の新しいマーケットプレイスの目的は国際コンテンツビジネスを促進すること。皆さんがロンドンでも集まる機会が増えれば、より多くのビジネスが生まれるのです」。

 MIPCOMが今年も成功裏に終えたことも大きいだろう。今年は世界110か国から1万500人が参加し、出展社数は347社と、前年の320社より増加した。そのうち、73社が初出展を果たし、テック企業の増加が目立った。またナショナルパビリオンブースは34か国を数え、国を挙げてコンテンツの海外輸出を盛り上げようとする動きもある。こうした市場の変化がMIPロンドンの立ち上げに影響をもたらしている。

  1. 記事一覧へ