【インタビュー】3Dプロジェクションマッピング ディレクター 村松亮太郎氏 「 演出方法さらに多彩に 上映後の利用でも新たなチャンス」
2013.12.27 UP
村松亮太郎氏
「TOKYO HIKARI VISION」(東京駅、2012年12月)
「KARAKURI」(2013年10月、東京国立博物館)
3Dプロジェクションマッピング(3DPM)ディレクターの村松亮太郎氏は、2011年から3DPMをミュージックビデオ内で発表。12年12月にはJR東京駅丸の内駅舎で実施された「TOKYO HIKARI VISION」の総合演出を手掛け、一躍脚光を浴びた。今年10月には、大きな話題になった東京国立博物館の3DPM「KARAKURI」も演出した。3DPMの現状と今後の展開などについて聞いた。(川田宏之)
■TOKYO HIKARI VISIONが受注増のきっかけに
ーー3DPM業界では、12年末の東京駅でのPMを手掛けたことで注目を浴びたが。
「東京駅丸の内駅舎を利用した3DPMとして2012年12月21-28日に『東京ミチテラス2012』内で実施された『TOKYO HIKARI VISION』の総合演出をした。日本を元気にするプロジェクトをコンセプトに実施したが、あまりにも多くの人が集まったため、安全上の理由から会期途中で中止せざるを得なかった。なるべく多くの人に作品を見てほしかったので、少し残念な面もある」
「この3DPMでは、世界中に存在するさまざまな『光』を巡る旅をテーマに演出。クライマックスでは、『旅』を経て集められた光の手法を駆使して東京駅舎を『光のモニュメント』として変化させた。このPM作品はコンペにより起用されたが、これを手掛けたことで、その後3DPM制作などの受注増につながっていると思う」
■東京国立博物館でスペシャルナイト 3000人を集客
ーー今年10月には、東京・上野の東京国立博物館で開催中の『特別展 京都-洛中洛外図と障壁画の美』におけるスペシャルナイトとして、10月17日に3DPM「KARAKURI」を上映。ここでも斬新な演出が注目された。
「当初は2日間の開催予定だったが、1日目が台風の影響で中止になった。17日は前日に来ることができなかった人も押し寄せ、有料イベントながらチケットは完売し約3000人の観客を集め大盛況だった」
「PMは国立博物館の『東洋館』の壁面を使って実施。その建物の横幅は約70メートルあり非常に長いものだった。このサイズで上映するために、バルコ製の2万ルーメンの明るさの超高輝度DLPプロジェクター4台を使った」
「作品は、『洛中洛外図屏風 舟木本』に描かれた2千数百人の登場人物から500人ほどを選び出し、個性豊かなキャラクターを2次元で制作。建物や空間は3Dらしい奥行き感を表現することで、東洋館の壁面一杯にテーマに沿った躍動感のある独特な世界をつくり出した」
「内容は約9分のドラマ仕立てで、洛中洛外図の描かれている雅(みやび)と庶民の生活がうかがえる格調高いビジュアル世界を表現した。時空を超えた新しい世界観がPMという技術により表現できたと思う」
「チケットは展示会の入場料込みで2400円だったが、瞬時に完売になったと聞いている。これまで国内の屋外PMはほとんど無料だったが、ビジネスとしての可能性を見出した最初の事例といえるのかもしれない。今後はビジネスとしての可能性も追求したい」
■星野リゾートとクリスマスイベント ハコビジョンにも作品提供
ーー今後の展開は。
「12月はPMのイベントが非常に多い。当社でも川崎、八ヶ岳、京都などで3DPMを手掛けている。星野リゾートとコラボした『リゾナーレ八ヶ岳』は『想いが見える街』をコンセプトに、クリスマスイルミネーションとマッピング、造作を組み合わせた光の3Dアートショーで25日まで実施している」
「また、スマートフォンを使って3DPMや3Dホログラムなどの映像技術を手のひらサイズで楽しめる、バンダイのエンターテインメント食玩(玩具菓子)『ハコビジョン』(税別500円、14年1月27日発売)にも3DPMのコンテンツを提供している。第1弾は『TOKYO HIKARI VISION』と『東京国立博物館『KARAKURI』』の2種類が発売される」
「このように3DPMは、上映時のイベント以外にも2次利用なども含めてさまざまなビジネスチャンスがある。またPMのみならず、イルミネーションやレーザーなど他の演出方法を組み合わせた企画が、今後主流になっていくのではないかと考えている」
【村松氏 プロフィール】
村松亮太郎氏は、映画監督、演出家、クリエイティブディレクター、アートディレクター、映像クリエイター、3DPMディレクターなどの顔を持つが、デビューは俳優だった。俳優業の傍ら、1997年に「NAKED(ネイキッド)」を創設し、自身が代表として映像ビジネスをスタートさせた。
テレビ、CM、ミュージックビデオなど、幅広いジャンルで活躍。2002年からは、脚本執筆など映画制作に関わり、06-10年にかけて長編映画4作品を劇場公開した。各国の映画祭などで多くの受賞歴がある。
村松亮太郎氏
「TOKYO HIKARI VISION」(東京駅、2012年12月)
「KARAKURI」(2013年10月、東京国立博物館)