【ニュース】慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 4K映像とJPEG2000技術をテーマに「次世代メディア技術と創造性ワークショップ」を開催
2012.6.14 UP
写真2 ベルギー・ワロン地域政府のマルクール氏
写真3 パネルディスカッション
■ベルギーの大学、先端企業が参加してワークショップ開催
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)は6月11日、日吉キャンパスにおいて、4K映像とJPEG2000符号化技術に焦点を当てた「次世代メディア技術と創造性ワークショップ」を開催した。ヴィレッジアイランドのミカエル・ヴァンドルプ社長を座長に、太田直久教授(KMD)、ベヌア・マック教授(ルーバン・カトリック大学(ベルギー)、高梨斉ビジネスユニット長(NTT-AT)、ガエル・ローブラ博士(intoPIX(ベルギー))、梅田敏之博士(フォトロン)、ダミエン・デューシャン博士(サイバーダイン)が講演を行った。ワークショップは、日吉キャンパス協生館で行われ、約50名が参加した。
講演では、4K時代に向けたアプリケーション提案が目立った。太田教授は、これまでの4K伝送実験を示し、ネットワーク経由で4K動画のやりとりが可能になったことを報告した。高橋氏は、ネットワークを介した映像伝送の留意点を指摘し、特にネットワーク・レイテンシ(伝送遅延)のジッタの問題を示した。ジッタの吸収と誤り訂正については、有効な対応策が実装され始めていることも報告された。また、2011年9月にリオデジャネイロと世界を結んだ4K映像のストリーミングでは、NTT-ATのJPEG2000用CODEC装置が使われたことも明らかにされた。
■「4K動画伝送にはJPEG2000が最適」
マック教授は、4K動画伝送にJPEG2000が優れていることを示し、「オープンJPEGプロジェクト」がJPEG2000のコードを公開していることを報告した。また、欧州における4Kロケーション・ベース・サービスの実施例が報告された。ローブラ博士は、JPEG2000のハード、ソフトによる実装例と性能を示した。FPGA、DSP、GPU、CPU、ASICといった各種の方式の中で、FPGAが最も費用対効果に優れると結論づけた。
梅田博士は高速度カメラの技術動向を示し、いくつかの映像で得られる効果を実演した。高速度カメラにおいては、大量のデータが撮像素子から生み出されるため、迅速な処理が必要になるという。また、一般的なオートフォーカス技術では合焦時間が不十分なため、新技術の開発が必要との指摘もなされた。デューシャン博士は、対話型マルチタッチディスプレイの課題と解決事例を示した。最新の技術を用いれば、画面を強く押しているのか、なでるように触れているのかの違いも検出できるという。単純な「接触/非接触」の判断では実現しなかった対話性を持ち込めるという。
■柔軟性の高いJPEG2000
パネルディスカッションでは、各講演者が4K画像への期待を述べた。4Kは、実験室内のものではなく現実であるとの認識でパネルの意見は一致していた。MPEGに比べてJPEG2000は進歩が停止しているのではないか、との会場からの質問に対しては、圧縮率の面では改善の余地は限られても柔軟性の面で優れており、相互運用性を確保しつつ機能強化が可能であることが示された。
ワークショップには、ベルギー・ワロン地域政府副首相兼経済貿易担当相のジャン・クロード・マルクール氏が訪れ、同地域の活動を紹介した。同大臣は、VFXや画像処理の技術を生み出してきたワロン地域は今後も同分野への関与を続ける、との地域政府の意向を明かした。「クリエイティブ・ワロニヤ」プロジェクトで技術振興を行っているという。
(写真説明)
写真1 座長のミカエル・ヴァンドルプ氏(中央)のもと、太田直久教授(左)などが講演を行った。右端は開会の挨拶を行う稲蔭正彦教授
写真2 画像技術開発への支援を述べる、ベルギー・ワロン地域政府副首相兼経済貿易担当大臣のジャン・クロード・マルクール氏(左)
写真3 会場には4Kカメラとモニターが設置され、参加者は画質を直接確認できた
写真2 ベルギー・ワロン地域政府のマルクール氏
写真3 パネルディスカッション