【コラム】スマホの4K化はどこまで効果的か 求められる画質の主観評価、客観評価
2014.3.14 UP
ソニーモバイルコミュニケーションズが発表した4K撮影機能搭載の「エクスペリアZ2」
4Kテレビが画像表示を行うと、空気感が違ってくる(CEATEC2013の東芝ブース)
2月に開催された「Mobile World Congress(MWC)2014」ではソニーモバイルコミュニケーションズから4K撮影対応のスマートフォン「Xperia Z2」や、4K撮影ばかりか4K HEVC CODECを搭載した台湾MediatekのSoC「MT6595」が映像面で目を引いた。アクションカメラとして知られる「Go Pro」も最上位機では4K撮影に対応しており、小型撮影分野に4Kが見られ始めた。
しかし、ユーザーの視点からはいま一つ判らないものがある。それは、4Kが「どの位違うのか」だ。今回のMWCでは、その観点からの比較は全く見当たらなかった。スマートフォン等で使う小型表示デバイスは当面4Kに到達しないであろうから、まずは4K撮影の威力を知りたい。(上写真:ソニーモバイルコミュニケーションズは、Xperia Z2 Tabletでウォールを作った。総解像度は11520x6000(69M画素)で、8Kをも凌駕した)
(映像新聞社 論説委員/日本大学 生産工学部 講師 杉沼浩司)
■空気感が違う
ディジタルシネマ用の4Kカメラの映像を4Kテレビに映し出すと、それはクッキリした映像となる。別に、輪郭強調などを行ったわけではない。取り立てて画質を加工しなくても、いわゆる「空気感」のある美しい映像だった。昨年のCEATECで東芝が何枚もの4Kテレビを固めて通路に向けて置いたが、それも一瞥しただけでその場の空気が異なることが感じられた。20~30m離れてみても、東芝ブースの一角だけが違う空間に見えるのだ。
4Kテレビに、しっかりした4Kソースの映像を流せば、HDとは異なる次元の映像が流れることは明らかだ。しかし、スマートフォンの4Kにはどのような意味があるのだろう。
いま、4K撮影機能はカムコーダやDSCに搭載されている。これらは、ある程度の大きさの撮像素子を使い、レンズも十分な口径を持っている。しかし、スマートフォンの撮像素子は極めて小さく、レンズも小口径だ。このような光学系で十分な分解能が得られるのだろうか。
光学系の制約から、スマートフォンは画素数が十分に活かしてこれなかったかも知れない。たとえば、従来のHD画素では、SD解像度のカムコーダ程度の解像力しかないのかも知れない。それは、それでよい。カムコーダから一歩下がった解像力だと思って使えばよいからだ。この考えで行けば、4K撮像素子搭載の解像力は、ひょっとしたらHDカムコーダ程度かも知れない。
別の可能性もある。HDから4Kに画素数が上がっても、小径の撮像素子では直接の解像力向上は期待できないかも知れない。しかし、隣接画素の情報を用いた超解像のような処理で、HD以上の解像力を得ることが可能、なのかも知れない。
■メーカーは積極的にデモを
これらは、いずれも推測の域を出ない。推測せざるを得ないのは、画質の主観評価、客観評価の結果にアクセスできないからだ。HD解像度までは、我々は絵を見慣れていた。それゆえに、スマートフォンが世間に遅れて「HD動画が可能となった」と聞けば、どの程度まで期待できるかを思い描くことが出来た。しかし、4Kはスマートフォンが先行している。家庭のテレビは、1920x1080または1366x768の解像度だ。我々の目は、ここに表示される1440x1080または1920x1080の映像には慣れている。しかし、4Kの画質が感覚的に判らない。だからこそ、4Kスマートフォンで撮った映像をメーカーが率先して見せて欲しいのだ。
更に、消費者としては、従来のHD撮影に対してどの程度良いか、という比較も見せて欲しい。もし、それがHDカムコーダと4Kカムコーダほどの違いが無くても、画質が目に見えて上がっているのならば、我々は納得できるだろう。
HDの時は、長い時間掛けてHDテレビの画質などがデモされてきた。その結果多くの消費者は、HDテレビによる画質向上を思い浮かべることができた。しかし、4Kはそれ自体が新しい。4K自体に見当が付かないのに、絵を見せられずに「4K画質のスマートフォン」と言われても納得できないだろう。メーカーの丁寧な対応が期待される。
ソニーモバイルコミュニケーションズが発表した4K撮影機能搭載の「エクスペリアZ2」
4Kテレビが画像表示を行うと、空気感が違ってくる(CEATEC2013の東芝ブース)