【NEWS】ブラジル放送局 TV Globo ワールドカップを4K地上放送へ 「スポーツ・ライブはリアルタイムが重要、1秒の遅延が大きな苦情に」 遅延短縮に莫大な投資 NABセッション報告
2014.5.1 UP
■4000万人が毎日視聴 ネットワークに負荷
ラテンアメリカ最大の放送事業者TV GloboのCTOを務めるフェルナンド・ビッテンコート(Fernando Bittencourt)氏 は、NAB会期中の4月8日午後に開催されたセッション「CISCO Presents The Transition from Live to Event TV」に登壇し、同局のブロードバンドへの取り組みについて述べた。
はじめに同氏は、「ブロードバンドには対応を始めており、テレビの前にいない人にも、モバイル機器を通じて到達できる手段として重要視している」と、ブロードバンドが二級市民ではないことを明確にした。そして、ライブもしくはライブに近いコンテンツがブロードバンドにも流されるようになってきているという。ただし、3000万人から4000万人が毎日視聴する同局への回線負荷は高く、「セカンドスクリーンを試しているが、これをサポートするための機構が必要だ。日曜日に生放送で流れる音楽番組で投票を募ったら、ネットワークが落ちてしまった」と負荷集中のすざまじさを明らかにした。
■遅延の許されないサッカー「ブラジルの試合はテレビで見る」
間もなくFIFAワールドカップが開催されるブラジルだが、「ブラジル人が、インターネットでブラジルチームのプレーを見ることはない」と同氏は断言した。「他の国のゲームは、タブレットで見る事もあろうだろう。しかし、ブラジルの試合はテレビで見る」と述べた。その理由は、「インターネットは遅延が大きいからだ。FIFAワールドカップで、数秒の遅れが出ていては人々は見てくれないだろう」と、リアルタイムにこだわることを説明した。「現在でも、ディジタル放送がアナログに対して1秒以上遅いことで苦情が寄せられる。周囲で(アナログ波の)放送を見ている人が歓声を上げるのに、自分は状況が判らないというのは(ブラジル人にとって)大きなストレスだ」という。「TV Globoは、この遅延(レイテンシ)を短縮するために、多くの投資をしている」と、同局の取り組みを紹介した。
■IPの信頼性の低さに苦言
また、問題点として「IP、IT機器は従来の放送用機器よりも信頼性に欠ける。インターネットの中で停波状態となるのは毎日だ。テレビ放送ではそのような事は滅多に起きない」と信頼性の低さに苦言をのべた。そして「放送機器の世界と、IP/ITの世界がある。これに加えて、(信頼性についての)第三の世界を作る必要があるだろう。銀行に行ってIT機器が動いておらず、取引が出来ないことは数え切れないほどある(注:日本以外の国では、銀行のシステムは昼間であってもよくダウンする)。ITの世界にいるからだ。一方、放送では1フレームであっても出画されないことは許されない」と、放送の厳しさに対してITが容易に流れていることを指摘した。
■地上波1チャンネルで4K放送、強力な圧縮で実現目指す
4Kへの取り組みは「FIFAワールドカップを4Kで地上波放送する」と明確な目標を述べた。「地上波は1チャンネルを用いるだけ」として、強力な圧縮で乗り切ることを示唆した。「4Kは配信が問題で、このための新しい周波数が取れない。機材は少々高額だが、これは値下がりする。しかし、(全国で)4K放送のためにはスペクトラムが出てこない」と、現状では帯域が足りないことを明らかにした。
【After NAB Showが開催 事前参加申し込みの受け付け開始】
世界最大の放送業界のイベント「NAB Show」の出展企業が集い、NAB Showにおける出展内容についてセミナーと製品展示を行う「After NAB Show」が開催される。5月22日(木)と23日(金)の2日間、東京・秋葉原のUDXにて、また、5月27日(火)にグランフロント大阪を会場に開催する。NAB Showの主催団体、NAB(National Association of Broadcasters)の公認イベントとして、NAB Showで出展した最新情報を一堂に集まり、日本国内のユーザーに紹介する唯一の機会。主催は、NAB日本代表事務所(映像新聞社)、一般社団法人 日本エレクトロニクスショー協会。
今回、東京開催には40社(昨年23社)、大阪開催には27社の企業が参加する。
また、2人の講演者によるNAB報告をそれぞれ開催する。
■NAB報告 概要
5月22日(木)9:00-10:00
「 NAB Show 2014 〜見えて来た最新動向と注目の新製品〜」
講演者:石川幸宏(映像ジャーナリスト@DVJ BUZZ TV)
講演内容:映画だけでなく、放送分野、業務分野への本格的な4Kテクノロジーの進展が多く見られた今年のNABShow。今年は特に、実用的な4K映像制作へ向けて、より現実的なソリューションを促す注目製品も目白押し。近年まれに見る大きな盛り上がりとなったNAB会場の熱気を、写真と映像を交えたレポートでお伝えします。
話題性に富んだ注目製品の情報はもちろん、その影に隠れて出てきた、少し先の未来を占うニューテクノロジーや、業界再編とも言える映像関連機器を取り巻くメーカーなど関連各社の動向など、大小様々な情報を現地インタビューなども交えてご紹介します。
4月23日(金)・東京、27日(火)・大阪
「NAB Show 2014 〜米国で動き出した4K放送」
講演者:杉沼浩司(映像新聞 論説委員/日本大学 生産工学部 講師)
講演内容:NABの期間中に開催された話題のセッションや、Technology Summit on Digital Cinemaにおける話題から、米国の4K映像制作、4K放送の最新状況を報告します。
ソニー・ピクチャーズ・テレビジョンやディズニー/ABCなど、テレビ番組制作部門の4K番組制作の動向などに加え、Netflixによる4K番組配信や、ブラジルにおけるワールドカップの4K放送、米国の次世代放送規格 ATSC 3.0による地上波4K放送の位置づけなどもご紹介します。
<<事前登録受け付け中>>
下記のサイトで、入場登録とセッション聴講予約を受け付け中
http://www.after-nab.jp/