【Inter BEE 2015】INTER BEE CONNECTED:セッション報告(5)「放送同時再送信への取り組み」NHK、フジテレビ、TOKYO MXの担当者が登壇 事業化へ向けた模索続く

2015.11.30 UP

NHK近藤氏のプレゼンでは、災害時と実証実験という今年の同時再送信の2つの軸が示された

NHK近藤氏のプレゼンでは、災害時と実証実験という今年の同時再送信の2つの軸が示された

東京メトロポリタンテレビの同時再送信アプリ、エムキャスの概要を前嶋氏が説明

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モデレーター塚本氏が示した4つの課題。やはり事業化が最大の課題になりそうだ

モデレーター塚本氏が示した4つの課題。やはり事業化が最大の課題になりそうだ

 INTER BEE CONNECTED内での企画セッション、19日2つ目のコマは「放送同時再送信」がテーマ。放送界で今年もっともホットな話題を取り上げた。同時再送信に実際に取り組む三社からパネリストが登壇。それぞれの取り組みを紹介しながら、フジテレビ・塚本幹夫氏がモデレータ役でディスカッションが行われた。今年もっともホットな話題である「同時再送信の」を取り上げたセッションで、会場には他のセッション同様、非常に多くの聴講者が集まった。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)

 まずモデレータの塚本氏から、同時再送信を取り巻く背景の解説がなされた。テレビ離れの要因としてタイムシフトとデバイスシフトが言われる中、その打開策の一つとして同時再送信が注目されていること、中でもNHKは放送法の改正もあり、今年1月に発表された新3カ年計画で取り組みが明記されたことなどを解説した。

■NHK ネット活用の位置づけを大きく方向転換
 それを受けてまずパネリストとしてNHKの近藤宏氏がショートプレゼンを行った。背景として、ネット活用を放送の補完ととらえていたのを大きく方向転換し、放送の前・中に理解促進にも活用することになったと説明。災害時の同時再送信を、すでに実証実験とは別に、災害時などの同時再送信として火山噴火や水害の時などに行ったという。さらにこの10月から11月にかけて視聴者から募集して、一万人が参加する実証実験を行い、今後はNHKがネット権を持つスポーツ番組でも試験的に提供していくという。課題として、受信料制度との関係や著作権処理、人員の確保などがあり、本格実施には多くのハードルがあると語った。

■コアファンへ向けたコンテンツで同時再送信を展開するフジテレビ
 続いてパネリストとしてフジテレビ手塚久氏が、CSチャンネルでの同時再送信について説明した。CSチャンネル・フジテレビNEXTの放送を、昨年3月から同時再送信しておりNEXT SMARTと呼んでいる。放送加入者は無料で利用できるほか、放送非加入者でも1200円で同時再送信だけを視聴できるやり方だ。フジテレビNEXTではF1をはじめとするスポーツや、ももクロなど特定の音楽番組も多く、それぞれコアファンを持つため、この仕組みを試みたという。1年半が過ぎ、同時再送信の加入者は放送契約者の6%に達し一定の成果を感じているとのことだ。

■TOKYO MX 同時再送信は全国へ番組提供する仕組み
 もうひとりのパネリストとして、TOKYO MXの前嶋宏氏もプレゼンを行い、同社のエムキャスというアプリを通じて一部の番組で同時再送信を行った内容を解説した。本年7月からリクルートとの共同実験でスタートし、東京都の放送局が日本全国に番組を届ける仕組みとして期待があった。現在、60番組で週63時間を送信している。配信は都道府県単位で配信制御が可能で、同局の番組を販売している地域へは送信しないようにするなど対応できているという。著作権処理は対応が大変で、生の情報番組でも配信許諾が取れてない部分だけにフタをするなどして対処しているそうだ。

■ハードルの高いスポーツの権利取得
 ここでモデレーター塚本氏から、3人のプレゼンを受けて同時再送信の課題を示した。著作権、地域制御、インフラ、事業化の4点で、それをもとにディスカッションが行われた。著作権についてはとくにスポーツは難しく、配信も含めたオールライツで権利取得はかなりハードルが高いという。インフラの問題ではアクセス集中への対処が課題だが、CDNやサーバー・サービスを駆使して対応している。事業化については、フジテレビNEXTは課金、エムキャスはいずれ広告収入を得られるかが課題となる。難しいのはNHKだが、追加の受信料を聴取するのかどうか、まだ明確な方針は出ていないようだった。

 同時再送信には様々な課題があり、追加コストもかかる中でどう対処するべきか、結論は簡単には出せないだろう。だが視聴者にはニーズもあり、テレビ離れへの対処としても取り組むべきテーマだ。さらに来年以降でどんな成果が見えるのか、期待したいところだ。

NHK近藤氏のプレゼンでは、災害時と実証実験という今年の同時再送信の2つの軸が示された

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東京メトロポリタンテレビの同時再送信アプリ、エムキャスの概要を前嶋氏が説明

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モデレーター塚本氏が示した4つの課題。やはり事業化が最大の課題になりそうだ

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#interbee2019

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