【Inter BEE 2013】4K・8K映像表示に対応した ディスプレー新製品が各社から 200型大型システムから屋内型LED、床置きLED、有機ELモニター新ラインアップまで多彩な顔ぶれ
2013.12.3 UP
ヒビノの屋内型LEDを使用した大型映像システム
キヤノンの30型IPS方式4K液晶ディスプレー
ストロベリーメディアアーツのフロアLED
ソニーの4K対応30型有機ELディスプレー(参考出品)
Inter BEE 2013では、4K/8Kに対応したディスプレー、大型映像装置を各社が出展した。主な各社の展示概要を紹介する。
(川田宏之)
●タイル型のLED光源を使用したDLPリアプロ「マイクロタイル」で8Kビデオウォール
クリスティ・デジタル・システムズ(以下、クリスティ)は、同社製のタイル型LED光源使用のDLPリアプロジェクションユニット「マイクロタイル」を96枚(縦8×横12)使用し、リアル8K映像をフル画質で映し出すことができる約200型の大型映像「8Kビデオウォール」を世界で初めて開発。アストロデザインブースのメインステージで披露した(上写真)。
上映映像はNHKの8Kスーパーハイビジョン素材、スカパーJSAT提供の4K素材。そしてアストロデザインが開発した8Kカメラを使って東京都立川市の昭和記念公園で収録したオリジナル素材を上映した。4K素材はアップコンバートおよび4画面同時表示などで使用。大型映像の運用はシーマが担当した。
■つなぎ目が目立たずにリアルな表示を実現
クリスティの「マイクロタイル」は20型の画面(タイル)を重ねたり並べたりして自由な形状を作ることができるため、他に類を見ない空間演出を実現できる。
アストロデザインでは、このマイクロタイルと同社が開発した8Kビデオウォールプロセッサーなどを組み合わせて大型映像システムを構築した。同社はNHKと協力し、シャープ製の60型液晶マルチディスプレーを36面使用した8Kビデオウォールを「NHKスタジオパーク」に納入した実績がある。今回開発したシステムはこれをさらにグレードアップさせて、つなぎ目が目立たずに8K大型映像がリアルに表示できるシステムとして開発した。
アストロデザイン第一営業部の関根道正氏は「東京五輪の開催が決まり、今後パブリックビューイングなどで8Kの大型映像が必要とされる場面が増えていくだろう。NHKをはじめ各放送局やイベント業者などに提案し、10年以上前から8Kに取り組んできた当社の技術をアピールしたい」と述べた。
クリスティのマーティングスペシャリストの吉田ひさよ氏は「当社のマイクロタイルでフル8K画質の大型映像を構築するのはこの展示会が初めて。現在さらにつなぎ目の目立たないシステムを開発しており、近々日本でも披露する予定」と話している。
●キヤノン 4K対応実機初披露 独自開発の映像エンジン・独自設計のバックライトシステム
キヤノンは、業務用の30型4K液晶ディスプレー「DP-V3010」(市場想定価格は300万円前後)を14年1月下旬から発売し、4K映像制作ディスプレー市場に新規参入すると発表したが、Inter BEEではこのディスプレーの実機を国内初披露した。
同社の4K液晶ディスプレーは、独自開発のディスプレー用映像エンジン、独自設計のRGB LEDバックライトシステム、広い視野角のIPS方式液晶パネルを採用して忠実な色再現・高解像度・高コントラストを実現した。卓上に設置可能な30型で、編集室やスタジオでの画質の最終確認など映像編集に適しており、4Kデジタルシネマ制作における高度なニーズにも対応する。
キヤノンは、映像制作用レンズ・カメラで構成する「シネマEOSシステム」と合わせて、入力から出力までデジタルシネマをはじめとする映像制作現場を強力にサポートする。
有機ELディスプレーの開発も進めており、今後はさまざまな業務用ディスプレーのバリエーションを拡大していく。
●ヒビノは2.4ミリピッチの高精細屋内LEDで大型映像システム「つなぎ目がないクリアな大画面」
ヒビノは業界最高精細クラスの2.4ミリピッチの屋内型LEDを使用した大型映像システムを展示した。
ヒビノの野牧幸雄副社長は「アストロデザインが8Kで200型の見事なシステムを展示し話題を集めていたが、それでもつなぎ目が目立つのは事実だ。つなぎ目がないクリアな大画面を実現できるのは、LED方式の大型映像をおいて他にはない。もちろんコストの面が大きな課題になるのは十分に承知している。当社としてはLED大画面で8Kなどの高精細映像を表示し、さらに音響にも気を配った製品の開発を目指していく」と語っていた。
●床置きのLED テレビ局スタジオ向けの再撮用として提案
ストロベリーメディアアーツは、テレビ局スタジオ向け再撮用大型映像システムの各種ソリューションを紹介。初展示のシステムは床面置きの8.9ミリメートルピッチLED製品「フロアLED」だ。同製品はLEDの画面の上に人が乗っても大丈夫なように設計されている。
同社ラインプロデューサーの永淵裕康は「テレビ番組の演出で床にLED大型映像を置くというイメージで開発した。画面の上を出演者が歩いても大丈夫。この展示会を契機に拡販を図っていく」と説明した。
●ソニー 視野角を大幅に向上した30型有機ELモニターを初の一般公開
ソニーは、開発中の30型4K有機ELモニター(4096×2160ピクセル)を展示した。同モニターは2013NABショーで技術展示されたが、国内の展示会で一般公開するのは今回が初めて。
ソニーの説明員は「当社は放送業務用4K有機ELモニターの市場導入を加速し、14年中に30型の4K有機ELモニターの発売を視野に入れ開発している。大きな課題は有機ELの歩留まりだが、14年中の発売にめどをつけたい」と話していた。
従来のHD解像度の業務用有機ELモニターは、「正確な色、正確な画像、高い信頼性」を極める「TRIMASTER(トライマスター)」技術に、ソニー独自の有機ELパネルを加えた「TRIMASTER EL」として商品化。これまで2万台以上を販売した。その製品に対して、市場からの唯一の改善要望点として視野角の向上が挙げられたという。
そこでソニーは視野角を大幅に向上し、従来のモデルと比較して視野角による色の変化が半分以下に改善した有機ELパネルを新たに開発。業務用フラットディスプレーにおける業界最高クラスの視野角を実現した。
今回、6モデルに搭載してラインアップを刷新。視野角の向上で、編集室などで複数名が並んで1台のモニターを見て制作、確認をする際にも、カラーシフト(斜め方向からの視聴で映像が青味かかって見える現象)がほぼ発生せず、効率的な作業ができる。
ヒビノの屋内型LEDを使用した大型映像システム
キヤノンの30型IPS方式4K液晶ディスプレー
ストロベリーメディアアーツのフロアLED
ソニーの4K対応30型有機ELディスプレー(参考出品)