【NEWS】日本映画テレビ照明協会が「照明まつり」を開催 照明技術賞の各賞が表彰
2013.5.17 UP
日本映画テレビ照明協会 副会長の西野哲雄氏
望月英樹会長(左)から照明技術賞 劇映画部門 優秀照明賞を受ける鈴木岳氏
展示スペースに設けられた元会長 故熊谷氏のコーナー
懇親会には業界関係者が大勢詰めかけた
4月26日、日本映画テレビ照明協会(J.S.L、JAPANESE SOCIETY OF LIGHTING DIRECTORS)主催による、照明機材の展示会・ワークショップ「照明まつり」と、照明技術賞 授賞式が東京・世田谷の東宝スタジオ 第11ステージで開催された。
「照明まつり」は、今年で44回目になる。照明機材メーカーをはじめとした撮影機材メーカー、販売会社による照明機器の出展と、映像制作業界を目指す学生を対象にしたワークショップ、照明技術賞の授賞式、懇親会で構成される。
ワークショップは現場のプロの指導のもとに、デジタルカメラの撮影における照明の実際を体験する場として設けられ、今年で3回目となる。一昨年の1回目は、東映撮影所でArri D-21を用いて実施。昨年の2回目は、日活撮影所でSony Cine Alta F65を用いて実施。そして、今回は東宝撮影所において、Sony Cine Alta F55と大型クレーンによって実施した。九州、名古屋など、全国の大学や専門学校から映像制作のプロを目指す学生が約120人参加。約6時間にわたり、撮影スタジオ内にセットしたソニー シネアルタF55と大型クレーン、4Kモニター、各種照明機器を用いて、撮影の実際を体験するワークショップを実施した。
日本映画テレビ照明協会 副会長の西野哲雄氏は、ワークショップのねらいについて次のように話す。
「照明まつりは、会場の設営から機材のセッティングまで、すべて会員が参加して手作りで行っている。ワークショップは映像業界の後継者育成に貢献するねらいで実施しており、学校ではなかなか体験できない最新機材と最前線で活躍するプロの指導でわかりやすく照明の効果・役割を知ってもらうようにしている」
ワークショップは、情景や天候、時間、屋内・屋外など、さまざまなシチュエーションにおける照明の手法をプロが披露し、実際に俳優の演技をF55で撮影した映像を4Kモニターで確認しながら進めた。 昼食休憩を入れて9時30分から17時30分まで、8時間に及んだ。
■熊谷秀夫 元会長が逝去 6月23日に「ありがとうの会」
ワークショップの後、同会場において、照明技術賞ほかの授賞式が開催された。
授賞式にさきがけて、日本映画テレビ照明協会 元会長の熊谷秀夫氏が3月26日、呼吸不全で逝去(享年 84歳)されたことが報告された。
熊谷氏は、戦後まもない1948年に大映京都撮影所 照明課に入社して以来、150本を越える映画の照明を手がけてきた。大映のカラー第一作映画『地獄門』(1953年)、映画『雨月物語』(1953年)の照明助手を担当。1955年に、日活 東京撮影所に活動の場を移し、1958年に映画『赤いランプの終列車』で照明技師としてデビューし、その後ロマンポルノ路線で斬新な照明に挑戦した。その後も、『人間の証明』(1977年、佐藤純彌監督)、『魚影の群れ』(1983年、相米慎二監督)、『座頭市』(1989年、勝新太郎監督)、『学校』(1993年、山田洋次監督)などさまざまな監督の多彩な作品に参加した。2004年に旭日章を受賞。同年、キネマ旬報社より「証明技師 熊谷秀夫 降る影 待つ光」が出版された。
会場内には、熊谷秀夫氏を偲ぶコーナーが設けられ、関連書籍や映像が紹介された。
6月23日(日)の15-17時、同協会主催による「熊谷秀夫さんありがとうの会」が開催される。会場は、調布・日活撮影所。詳細は後日、協会から発表される。
■照明技術賞など各賞が発表
続いて、平成24年度 照明賞 授賞式が、日本映画テレビ照明協会 副会長の西野氏の宣言で開催した。
冒頭、同協会会長の望月英樹氏が次のように挨拶した。
「長い間、ここで育ったホームグランドで照明まつりを実施できることは大変光栄であり、感謝している。この50数年、メディアも代わりつつある中、記録媒体がフィルムからHDDへと変化していく中で、照明技術者も時代のニーズに応えるべく撮影に参加している。これからも新しい時代に向けた協会づくりを目指していきたい」
会長の挨拶に続き、第44回 照明技術賞、 第36回 協会賞、第22回 伊藤幸夫賞が表彰された。照明技術賞は「撮影現場でどのような機材を用いて、どんな苦労をしたかがわかる立場」(西野氏)である照明技術者自身が選ぶ賞として、照明の演出技法など、照明技術者が評価する作品が表彰される。
劇映画部門の優秀照明賞には、映画「外事警察 その男に騙されるな」の照明担当 鈴木岳氏(NHKメディアテクノロジー支部)が受賞。TVドラマ・Vシネマ部門の最優秀照明賞には「土曜ドラマスペシャル『負けて、勝つ〜戦後を創った男・吉田茂〜』第一回」の照明担当 橋本勝氏が受賞した。
各賞の受賞者は以下の通り。
【平成24年度 第44回 照明技術賞】
☆劇映画部門
<優秀賞>
「外事警察 その男に騙されるな」(製作「外事警察」製作委員会、配給 東映/S・D・P) 担当者 鈴木岳(NHKメディアテクノロジー支部)
<新人賞>
「わが母の記」(製作「わが母の記」製作委員会、配給松竹) 担当者 永田英則(本部)
☆TVドラマ・Vシネマ部門
<最優秀照明賞>
「土曜ドラマスペシャル『負けて、勝つ〜戦後を創った男・吉田茂〜』第一回」(制作 日本放送協会)担当者 橋本勝、助手 桜井利栄(エクサート松崎支部)、宮田幸雄(エクサート松崎支部)、中川逸人(関西支部/嵯峨映画)、荻野慎也(関西支部/嵯峨映画)
<優秀照明賞>
「ダブルフエイス 〜潜入捜査編から」(制作TBS/WOWOW) 担当者 三善章誉、助手 飯村浩史(本部)、余合祐加子(APEX・APEXⅡ支部)
<審査員奨励賞>
「土曜ドラマスペシャル『あっこと僕らが生きた夏』(制作日本放送協会、NHKエンタープライズ)担当者 富岡幸春、助手 桜井利栄(エクサート松崎支部)、白石晃(エクサート松崎支部)
<新人賞>
「プレミアムドラマ ドキュメンタリードラマ『優雅な生活が最高の復讐である』(制作 日本放送協会、NHKエンタープライズ) 担当者 宮田幸雄(エクサート松崎支部)、助手 鈴木英夫(エクサート松崎支部)
☆MPV部門
<新人賞>
「ゴスペラーズ『氷の花』」(制作 ディーウォーカー) 担当者 中川のどか(マジック・ハンド支部)
☆CM・企業VP部門 該当作品なし
☆教育・記録部門 該当作品なし
【第36回 協会賞】
<永年(40年)勤続>
長田達也(映放グループ)、高坂俊秀(本部)、小野弘文(本部)、森谷清彦(本部)、金沢正夫(本部)、渡辺雄二(本部)、黒澤誠(共立ライティング支部)
【第22回 伊藤幸夫賞】
青木智英(エクサート松崎支部)、加瀬拓郎(APEX・APEXⅡ支部)、高柳清一(日活グループ)
■懇親会で業界関係者による挨拶
表彰式の後、懇親会が開催され、来賓から挨拶があった。各来賓の挨拶は以下の通り。
☆文化庁 文化部芸術文化課の佐伯知紀氏「プロの映像を残していくことが大事」
「フィルムからデジタルの大きな流れの中で、映画という存在が今までとは違った見方がされるようになってきている。デジタルにより低コストで映画ができるものもあれば、プロ仕様でしっかり作り込んだものもある。その中で大事なものは何かというと、やはりプロがきっちとした映像をつくって残していくことだと思う。新しい媒体の中でも、これまで映画で培ってきた技術をぜひ残してほしい。文化庁では、NDJC(NEW DIRECTIONS IN JAPANESE CINEMA、http://www.vipo-ndjc.jp/top.html)といい、若い映像作家にフィルムで映画を撮らせるという事業を7年やっており、今年もやる。そういう人たちに映画の技術を伝えていくことを手伝ってほしいと思う」
☆アカデミー賞協会事務局長 富山省吾氏「今後もフィルム現場の技術の継承を」
「技術の継承という意味でのフィルムの現場は大きなものがあった。これから先、どこまでフィルムが使えるかはわからないが、フィルム現場の中で技術継承を続けていただきたい。日本映画はこのところ好調で、昨年は多くの作品が成功した。 プロデューサーとして思うことは、制作費を現場に還元することにより、撮影スケジュールが良くなり、現場の技術継承につながっていくと思う。熊谷氏には多くのことを教えていただき、残念でならない。映像を見ることで近くで感じることができ嬉しく思っている。熊谷さんに感謝を申し上げたい」
☆一般社団法人日本映画俳優協会 大林丈史氏「ともに映像芸術の向上と文化の発展に寄与したい」
「映画俳優協会(JSAA)は、今年4月1日から一般社団法人として新たにスタートした。定款・目的に、映画・映像技術を振興して日本の文化発展に寄与するとうたっている。映画テレビ照明協会とは、事務局が西新宿の同じ場所にあり、これからもともに活動し、映像芸術・作品の質の向上・文化の発展に寄与したい。現場で良い作品をつくり、感動を与えていく作品活動を続け、ともに手を携えて歩んでいきたい」
☆社団法人 韓国映画照明監督協会 理事長 李桂生(イ・ジョンセグ)氏「1960年代以来の交流を持続させ、ともに技術の開発を」
「私は、映画テレビ照明協会と文部省の招待で1995年10月から6カ月間、照明研修をした。当時、山田洋次監督の映画『男はつらいよ』(1995年)の最終作と映画『ガメラ2』(1996年)の特撮を研修した。韓国と日本が映画を通した正式な交流はまだ15年だが、1960年代には日本で照明研修をしており、それ以来交流がある。私たち映画人、特に照明芸術家は、映画や放送を見る観客や視聴者の心に暖かい物語とメッセージを伝えるため、日夜、努力と汗を惜しまない芸術家だ。これからも持続的な交流を通して、情報交換と、照明技術をいっしょに開発していきたい」
■各賞受賞者の言葉
☆永年勤続40年 協会賞受賞 金沢正夫氏
「40年はあっという間だった。まだまだ、やることがいっぱい残っている。夢もまだある。照明に対する情熱もいっぱいある。まだまだがんばります」
☆伊藤由紀夫賞受賞 アペックス 加瀬拓郎(APEX・APEXⅡ支部)氏
「ワークショップを見ていて、学生の頃、僕も照明をやりたいと思って入ったことを思い出した。あれから14年が経ったが、40年勤続できるようがんばりたい。次は照明技師として受賞できるようがんばりたい」
☆テレビドラマ・Vシネマ部門 橋本勝 氏
「NHKで番組をつくっているが、今回は初めて東宝スタジオでやらせてもらった。7ステージと10ステージ。テレビの照明しか知らず、正直いって助手頼みだった。周りのサポートなしでは、この場に立つことはできなかった。ありがとうございました」
☆劇映画部門 優秀照明賞 鈴木岳 氏
「照明歴20年で、テレビドラマしかやっていない。映画は初めて。それにもかかわらず、受賞させてもらい恐縮している。最初の意気込みとしては「映画界に殴り込みをかけてやる」という思いだった。しかし、周りの映画スタッフが、初めての僕に対してすごく尊敬の念を抱いて接してくれるのがとてもうれしかった。「おまえのやることにたいして、僕らもがんばってやるよ」という気持ちを感じた。みんな、同じ方向を向いてくれていたということを感じ、とてもうれしかった。そのとき、テレビも映画も変わらないな、と思った。一つの作品に対して、同じ方向を向いている。今回の映画をやったことで、照明、撮影、演出、美術、役者もみんな同じ方向に向いてがんばってやっていくと、見ている人も感じてくれるのだと思った。これからドラマを中心に活動していきたいが、映画もやりたい、これからもみなさんの力添えをいただいてがんばっていきたい」
■機器展示
機器展示に参加した企業は以下の各社。
ナックイメージテクノロジー、ミーム、アップルボックス、オールウェイ、 NKL、 ライトロン、セコニック、国際照明、ACTアクト、日本コーバン、アーク・システム、メディア・ガーデン、アガイ商事、伊東洋行、東芝ライテック、東芝エルティーエンジニアリング
日本映画テレビ照明協会 副会長の西野哲雄氏
望月英樹会長(左)から照明技術賞 劇映画部門 優秀照明賞を受ける鈴木岳氏
展示スペースに設けられた元会長 故熊谷氏のコーナー
懇親会には業界関係者が大勢詰めかけた