【Inter BEE 2015】INTER BEE CONNECTED:セッション報告(1) テレビ視聴スタイルの変化にあわせ新たな収益モデルを積極的に開拓するプロデューサーが登壇
2015.11.25 UP
初日最初のセッションから満席となり、立ち見も出る賑わいとなった
番組の“祭り化”についてプレゼンテーションする日本テレビ・ターニャ氏
ぶぶたすアプリの実績についてプレゼンテーションするTBSテレビ・安江氏
11月18日(水)から20日(金)までの3日間、幕張メッセで開催したInter BEEで、2回目となる企画プログラム「INTER BEE CONNECTED」が開催された。会場内にセッションステージや専用の企業展示・プレゼンスペースからなる特別エリアを設け、連日多くの人が詰めかけた。
この約10年間「放送と通信の連携」は、技術の進化を遂げながら、さまざまな検証を経て、ようやくビジネスレベルで大きな変革を見せ始めてきた。そうした中、今回のINTER BEE CONNECTEDでは、放送ビジネスに密接に関係する多様なエリアから、実に多彩な業界関係者を招いてのセッションとなった。そのため各セッションとも、毎回120人を越える席が常に満席状態となり、立ち見が出る盛況だった。昨年の大盛況を受け、今回は特別にサテライトルームも設置したが、そちらも常にほぼ満席という状況となった。
オープンシアターの企画セッションは三日間で3コマずつ、計9コマのパネルディスカッションが開催。先週のInter BEEから1週間を経た本日から金曜日までの3日間、セッション内容のレポートをお送りする。レポーターは、コピーライター/メディアコンサルタントとして活躍し、最近ではNetflixなど、業界キーパーソンのインタビュー記事などを精力的に執筆する境治(さかい・おさむ)氏。境氏は今回のInter BEE Connectedのアドバイザリーボードとしてもプログラムのコーディネーションに協力し、さらにセッションのモデレーターも務めている。
(Inter BEE Online 編集部)
<INTER BEE CONNECTED セッション「視聴スタイルの変化とビジネスチャンス」>
最初のセッション、18日10:30からは「視聴スタイルの変化とビジネスチャンス」のタイトルで、スマートフォンの普及で変化するテレビの視聴に合わせたテレビ局の取り組みを紹介し、ディスカッションした。そこには、これからのテレビにとっての新たなビジネスチャンスの可能性も示されている。放送業界にとって大いに参考になる議論の内容をレポートしよう。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)
このセッションのモデレーターは角川アスキー総研の主席研究員・遠藤諭氏。まずはイントロダクションとして、いまの視聴スタイルの状況を同総研の調査データからスライドで示した。例えば、録画視聴はテレビ視聴の4割に上り、CMスキップについて「すべてする」と答えた人は3割にもなるという。こうした視聴スタイルの変化に、テレビ局としてどう対処するか。三人のパネリストがそれぞれの事例をプレゼンテーションした。
■ネットの利用でリアルタイム視聴を促進した『金曜ロードSHOW!』
日本テレビ『金曜ロードSHOW!』プロデューサーであるターニャ氏は、映画番組を“祭り”として演出することに取り組んできた。「ハリーポッター祭り」や「夏はジブリ」などと題して関連作品を連続放送。さらにセカンドスクリーンで映画への“参加”を呼びかけ、リアルタイム視聴の楽しさをアピールした。またWEB上に「金曜ロードシネマクラブ」を設け、続けて視聴するとポイントがたまる仕組みも展開している。ネットの活用でリアルタイム視聴を促進し、視聴率を高めることに成功しているという。
■『TBS ぶぶたすアプリ』でセカンドスクリーン視聴による収益モデル
TBSテレビ・安江圭氏は『TBSぶぶたすアプリ』の事例を紹介した。『王様のブランチ』をはじめとする情報番組でこのアプリを活用、番組を見ながら検索したくなる情報を画面上に出し、セカンドスクリーン視聴を楽しませている。さらに、テレビCMに合わせたバナーを表示して広告収入につなげたり、番組に出てきた商品の購入を促してEC収入を得るなど、テレビ局の次の時代の収益モデルに挑戦している。
■野球中継の同時再送信『バーチャル高校野球』でスポンサー獲得
朝日放送・岸本拓磨氏はこれまで、様々な番組に対し、テレビのCGM(消費者発信メディア)的な仕掛けに取り組んできた。ハイブリッドキャストを活用して番組に視聴者のコメントを表示させるテレビのニコ生化の実験をしたり、『バーチャル高校野球』と題した野球中継のネット上での同時再送信にも関わった。『バーチャル高校野球』では朝日新聞と組むことでより情報の濃いサイトが実現でき、広告セールスもテレビ放送とは別にスポンサーを獲得できたという。
■「ネットとの連携、今のうちに」
後半の議論ではまず、遠藤氏がTwitterとテレビ視聴の関係を質問。視聴率とはあまり関係がないが、ターニャ氏は「視聴率とTwitterが高いときはティーンとF1層が取れているので、やったほうがいいとは考えている」と述べた。続いて遠藤氏はNetflixのCEOが「20年後は電波ではなくネット経由でテレビを見るようになっているだろう」と述べたことへの意見を求めると、安江氏は「テレビに力がある今のうちに、ネットとの連携を図るべき」と将来に向けた試みがいま大切であると主張した。
■西高東低のテレビ視聴傾向
最後に遠藤氏が、5年後のテレビについて意見を求めると、ターニャ氏は「テレビ同様映画も危機なので、金曜ロードSHOWで祭りを続けていきたい」と述べた。安江氏は「テレビは“モニター化”していく。“配給者”としてテレビ局が何をすべきか追求したい」、岸本氏は「テレビ視聴は西高東低で関西はまだテレビを見ている。そうした地域格差が広がっていくのでそれに対処したい」と主張。三者三様に今後への前向きな意思を示した。
パネリストそれぞれが現状への強い危機感を持ちながらも、それぞれの考え方で果敢に新しい挑戦をしていることが伝わり、いろんな意味で学びの多いセッションとなった。
初日最初のセッションから満席となり、立ち見も出る賑わいとなった
番組の“祭り化”についてプレゼンテーションする日本テレビ・ターニャ氏
ぶぶたすアプリの実績についてプレゼンテーションするTBSテレビ・安江氏