【Production】デジタル・ガーデン Digital Shooting Div.設立、撮影現場とポストプロの連携強化 ZEISS製マスターアナモフィック+フレアセット国内初導入で実験映像を公開
2016.3.25 UP
ZEISSの「 マスターアナモフィック+フレアセット」を駆使した実験作品「CAPTURED」
「CAPTURED」のメイキング映像も公開
DITの佐々木辰雄氏(左)と撮影監督の深江岳彦氏(右)
Digital Shooting Div.営業担当の白崎達彦氏(左)と島崎裕嗣取締役(右)
■DITとの連携でポストプロ、CG、VFXもスムーズに
デジタル・ガーデンは昨年10月、DIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)を擁する撮影関連部門「Digital Shooting Div.」を新設した。これにより、撮影現場とポストプロダクション部門との連携をよりスムーズかつ効率化し、撮影から仕上げまで一貫した環境を整えた。
デジタル・ガーデンの島崎裕嗣取締役はデジタル シューティング ディビジョン設立の狙いを次のように話す。
「ポストプロダクションとしてCM制作をサポートしてきた当社が設立することにより、撮影現場からのデータ管理をよりスムーズかつ効率化できる。DITとのコミュニケーションもこれまで以上にスムーズになり編集とともにCGやVFXとの連携も含め効果が出ている」
カメラマン兼アドバイザーとして迎えた撮影監督の深江岳彦氏は、「最新のカメラやアナモフィックレンズなどの表現力を生かすにはDITの役割も大きい」と話す。DITには経験豊かな佐々木辰雄氏を起用。佐々木氏はVEとしてキャリアを積み、長年CM制作に携わっている。
「近年増加しているアナモフィックレンズ使用時の適切なオペレートやマルチカメラ使用時の最適なワークフロー構築に長年のキャリアが生かされている」(島崎氏)
■マスターアナモフィック+フレアセットを国内初導入
機材はARRI製カメラ「ALEXA XT」「ALEXA mini」、RED製カメラ「EPIC DRAGON」や、マスターアナモフィックレンズなどの機材を揃え、昨年12月には光のきらめきや日差しなど柔らかなトーンと美しいフレアを表現できる「MasterAnamorphic Flare Sets」(マスターアナモフィック+フレアセット、ZEISS製)を国内で初導入し、今年2月から運用を開始している。
フレアセットはフレアが出やすくなるようコーティングされた前玉/後玉のセットレンズで、マスターアナモフィックレンズの前玉/後玉と交換する仕様となっている。マスターアナモフィックレンズのディストーションがなくブリージングを抑える工学パフォーマンスはそのままに、柔らかなトーンや美しいフレアを表現できる。
■バックアップにはSSD、素材納品にはLTOを採用
撮影現場からポストプロまでのデータ管理もワークフローの中で重要なポイント。データ保存はHDDを用いず、現場バックアップ用にはSSDを、またプロダクションへの収録素材納品にはLTOの導入を進めている。
ビジネスマネージャーの白崎達彦氏は「LTOのビット単価はHDDと比較して安く、運営にかかるトータルコストも抑えられる。またデータ破損、消失のリスクも低く、耐用年数も約30年と安全性も高い」と話す。
同部署では、データ管理、現場でカラーマネージメント、システム管理を担当するDITとともに、データ管理のみを担当するデータマネージャー(DM)というポジションを設けている。
「安全かつ効率的にデータを管理することは重要な作業。案件によってDITとDMを適切に選択できる体制を目指している。DITやDMのニーズは拡大傾向にある。今後、さらに人材を集め充実させていきたい」(白崎氏)
■マスターアナモフィック+フレアセットを駆使した実験作品「CAPTURED」を公開
デジタル・ガーデンは、今回の「 マスターアナモフィック+フレアセット」運用開始に伴い、実験作品「CAPTURED」(約1分30秒)を制作し、作品とメイキング映像をウェブサイトで公開した(制作:シースリーフィルム、照明:メディア・ガーデン、仕上げ:デジタル・ガーデン)。
Flare Sets 有り/無し/マスタープライムの3レンズの比較などを収録し、フレアの違いやシネマチックなボケ味を比較している(=上写真)。メインカメラにALEXA miniを、ハイスピード部分にALEXA XTを使用。セット撮影では、グラスやキャンドルを多く配置し、照明は通常よりも抑えた。撮影監督の深江岳彦氏は「カメラとレンズのルックが良くマッチしたこともあり、ロケでは車のライトだけで撮影してみた」という。
演出を担当した高村伸一氏は、「レンズでどれだけ差が出るのかと思ったが、簡単なテスト撮影で『映画のように』きれいに撮れたことに驚いた」と振り返る。
フレアは光の加減が難しいこともあり、ポストプロダクション工程で入れることが多いというが、「カメラが動いている場合など、現場で自然に入れたい。今回のように作り込んだ作品のほか、ライブ感のあるものにも向くのでは」(高村氏)と話している。
すでにCM撮影での使用も予定されている。営業担当の白崎達彦氏は、「フレアセットは、現場ですぐに装着できるわけではないため、前玉、後玉、両方を事前に決めていただく必要がある。両方つけた状態でも撮影手法によってフレアを切り、通常のMasterAnamorphic同様の質感を得ることもできる」と言う。
■英MPC社が「リモート」でカラーグレーディング担当
同作品のカラーグレーディングには、新たに「リモートビューイング」で業務提携した英国のThe Moving Picture Company(MPC)が協力した。カラリストは、有名ブランドのCMを多く手掛けるリチャード・フィーロン氏。リモートビューイングは、作業中の映像をリアルタイムに確認でき、海外の優れた技術とセンスを国内で利用できる。
MPCはTechnicolorの子会社であり、映画やCMでのVFX制作で知られる。カラーグレーディングの技術も高く、日本のCM制作に関心があったという。
デジタル・ガーデンにとっては、米国のCompany3に続く提携先として、新たにリモート環境を整えたことになる。島崎裕嗣取締役は、「アメリカとヨーロッパでテイストの違いがある。案件の内容に適したアーチストを、お客様に提案していきたい」と話している。
ZEISSの「 マスターアナモフィック+フレアセット」を駆使した実験作品「CAPTURED」
「CAPTURED」のメイキング映像も公開
DITの佐々木辰雄氏(左)と撮影監督の深江岳彦氏(右)
Digital Shooting Div.営業担当の白崎達彦氏(左)と島崎裕嗣取締役(右)