【NEWS】ソニーピクチャーズ ・イメージワークス、アルバカーキ ・スタジオを、7月をもって閉鎖
2012.4.5 UP
ソニー・ピクチャーズ ・イメージワーク[Sony Pictures Imageworks、本社:カルバーシティ/ロサンゼルス]が2007年6月に設立した、ニューメキシコ州アルバカーキの新拠点が、設立5周年となる今年の夏をもって、同スタジオが閉鎖される事がこの程発表された。
ソニー・ピクチャーズ ・イメージワークスは、ロサンゼルスにある三大VFXスタジオの1つ。ロサンゼルスのカルバーシティにあるソニー・ピクチャーズ映画スタジオの近隣に制作拠点を構え、その後、インド、アルバカーキ(米ニューメキシコ州)、バンクーバー(カナダ)へと拠点を増やしてきた。
アルバカーキ・スタジオは、映画産業誘致を期待するニューメキシコ州の税制優遇策というバックアップを受けて2007年に設立。ソーラー・パネルなどの地球に優しい設備を意識した「未来型」のスタジオ施設が特徴だった。ニューメキシコ州で最大規模を誇るというスタジオ・スペースは、10万平方フィートの広大なもので、アルバカーキ国際空港からほど近い環境だった。
地元のニューメキシコ大学との提携により、Imageworks Professional Academic Excellenceプログラム(IPAX)も開設された。これはImageworks主導によって設計された教育プログラムで、才能ある学生を次世代のデジタルメディアを担う人材へ育成する事を狙いとし、地元での産学協働の人材教育にも力を入れていた。
ソニー・ピクチャーズ ・イメージワークスは、同社が受注したVFX作品を積極的にアルバカーキ・スタジオへ割り振り、これまでに「アイ・アム・レジェンド」「くもりときどきミートボール」「グリーン・ランタン」「スナーフ」等の作品郡の、一部ないしは多くのVFXがアルバカーキ・スタジオにおいて制作された。
ハリウッドの各メディアが報じているところによれば、今回の閉鎖の背景には、長引く不況に加え、ニューメキシコ州の映画産業に対する税制優遇策の将来性に陰りが見え始めていた事、そしてアルバカーキという立地条件での人材獲得の難しさがあったようだ。
特にここ数年、国内外の人材の多くは、VFXスタジオが数多く存在するロサンゼルス、カナダのバンクーバー、ロンドン等で働く事を強く希望している。
「ニューメキシコへ行けば、生活コストが安く済む。都会の喧騒を離れて、新しい環境で仕事に打ち込む事ができる」「アルバカーキになら、あなたのポジションを用意できます」そういう誘い文句で、アルバカーキ・スタジオへの人材獲得を試みていたイメージワークスだったが、ピークには100人いたアルバカーキ・スタジオも、最近では60人前後へ落ち込み、現在制作中のプロジェクトに参加しているのは30人前後だという。
アルバカーキ・スタジオは、現在制作中のプロジェクトが終了した後、7月にスタジオ・スペースの賃貸契約が終了すると同時に、閉鎖される見通し。同所で働く人材は、ロサンゼルスのカルバーシティ、もしくはカナダのバンクーバーのスタジオにおいて、「現場のニーズがあれば」再雇用される可能性が残されているという。
筆者の同僚の友人は、アルバカーキ・スタジオへ就職し、現地で住宅も購入したそうだが、そこに今回のニュース。現在は身のふり方を試案中という話である。
バンクーバーではカナダのブリテッシュ・コロンビア州政府による映画産業への強力な税制優遇が効を奏し、世界中の著名VFXスタジオが相次いでバンクーバーにスタジオをオープンしている。バンクーバーは税制優遇制度で「勝組」になったケースだが、ニューメキシコのそれは、残念ながら「負組」となってしまったようだ。
ハリウッドのVFX業界が、国の垣根を超えてのワールドワイドなグローバル化が急速に進んでいく中、今後も「勝組」「負組」の淘汰が更に進んでいくものと思われる。今後も、各社の動向から目が離せない今日この頃である。
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ソニー・ピクチャーズ ・イメージワークス】
1992年に設立された、ハリウッドのメジャー映画スタジオSony Pictures傘下の大手エフェクト・スタジオで、オフィスも実際の映画が撮影されているSony Picturesスタジオ敷地内にある。アメリカ国内にはニューメキシコ州のアルバカーキ、そして海外にはインドとバンクーバー(カナダ)にスタジオを構えている。 最近の作品には「メン・イン・ブラック3」「アメイジング・スパイダーマン」等がある。
(鍋 潤太郎)