【Inter BEE 2018】DC EXPOに最新のCG、インタラクティブ研究が集結 米国SIGGRAPH幹部も来日
2018.10.15 UP
SIGGRAPH Emarging Technologies 2019のチェアを務めるコートニー・スターレット氏
SIGGRAPH 2018の機器展示会場
「老眼の矯正に匹敵する精度」と評価された焦点可変レンズシステムがDCEXPOにも展示される
昨年SIGGRAPH Special Prizeを受賞したトヨタの生活支援ロボット
11月14日(水)から16日(金)までの3日間、幕張メッセで開催するInter BEE 2018で、今年初めて併催となったDC EXPO。既報のように、これまで日本科学未来館で開催していた催しがInter BEEと併催となることで、Inter BEEに来場する放送、映像業界の関係者にも、最新の表現技術や最先端のデジタルコンテンツに触れる機会となる。(上写真は、今年8月のSIGGRAPH 2018会場のエントランス風景)
DC EXPOは、展示とともに、基調講演など独自のセッションの計画が進んでおり、最新の映像コンテンツやインタラクティブ技術に関する講演も内外からの関係者が集まる充実した内容となっている。
■SIGGRAPH E-Techの議長 スターレットが来日講演
会期2日目、11月15日の13時30分から開催されるカンファレンス「SIGGRAPHセミナー アートとコンテンツの可能性」では、米国のCG、インタラクティブ技術の学会であるACM SIGGRAPHから「Emarging Technologies 2019(以下、E-Techと略)」のチェア(議長)で、Seton Hall大学のファインアート、デジタルアートの助教授を務めるコートニー・スターレット(Courtney Starrett)氏が来日、登壇する。
また、「DCEXPO Special Prize」を受賞した「AutoFocals」(オートフォーカル)の開発者であるスタンフォード大学関係者を招聘し、DCEXPOで表彰および展示をする。今年8月にカナダのバンクーバーで開催されたSIGGRAPHで開催されたE-Techの出展技術の中から選ばれている。さらに、SIGGRAPHで開催される優れたCGアニメーション作品を上映する(「SIGGRAPH2018 Computer Animation Festival」 入賞作品上映及び「 SIGGRAPH Asia 2018 東京」の紹介:11月15日(木)15:30〜16:30、国際会議場 201 A 会議室)
■最先端のCG、インタラクティブ技術が集結するSIGGRAPH
ACM SIGGRAPHとDCAJは、長年にわたり協力覚書(MOU)に基づく協力関係にあり、交互の人的交流とともに、互いのイベントでの出展やセッションの開催を続けている。今回のSIGGRAPHからの来日講演、展示もそうした協力の一環だ。
CGやインタラクティブ技術に関する学会、展示会、上映会などのさまざまな関連イベントを一堂に集めて実施するSIGGRAPH。毎年7-8月の夏、ロサンゼルスなど北米の都市で開催され、これまでに45回開催されている。CGの黎明期から開催されており、CGの歴史とともに歩んできた歴史あるイベントだ。
SIGGRAPHの大きな特徴は、学術、エンターテインメント、産業、教育の要素がほどよく混在している点だ。CGに関する最新の表現技術などについての論文発表や、最新機器の展示、世界の最先端のVFX映像やリアルタイムCGなどが集まり、参加者も研究者、アーチスト、クリエイター、技術者、学生など、実に幅広い領域、レンジの人が集まる。
もともとSIGGRAPHの母体であるACM(Association for Computing Machinery)は計算機の学会であり、SIGGRAPHは世界で最も権威のあるCGの学会であるため、VR、ARの技術などもすでに30年ほど前から論文発表や技術展示があった。また、コンピュテーショナルフォトグラフィーなども20年ほど前から紹介されているなど、世界でまだあまり知られていない時期から最新の技術の進歩を知ることができる場となっている。
そうした論文発表の内容はいち早くクリエイティブな作品として映像化され、新たな表現技法としても注目を浴びることになる。そのため、クリエイターにとっても、新しい表現技法を知るための最適な催しとなっている。幅広い応用分野から人が集まり、CGを共通言語としながら、異業種間の活発な交流が行われることで、そこからさらに新たな発想や研究が生み出されるという現象がSIGGRAPHの会場では毎年当たり前のように起きている。
■製品化前の研究、アイデアを共有するE-Tech
E-Techは、そうしたSIGGRAPHの主要な催しの一つだ。特徴は、研究機関やメーカーの研究所、開発機関等において、製品化する前の段階の研究を展示するという点にある。ねらいは、製品化へ向けたアイデアを展示することで、さまざまな参考意見や、実際の展示の評価を集めるとともに、オープンにアイデアを共有することで、トレンドを生み出したり、共同研究や協同開発などのきっかけをつくる場として捉えるケースもある。
■アートとコンテンツの関係について内外の有識者が討論
11月15日の13時30分から開催されるカンファレンス「SIGGRAPHセミナー アートとコンテンツの可能性」は、コートニー氏の講演と、日本の有識者とともにパネルディスカッションの二部構成で開催する。 創造、学術、ビジネスといった様々な切り口で、コンテンツにとって欠かせない要素であるアートとコンテンツとの関係について語り合う。
パネルディスカッションは、一般財団法人デジタルコンテンツ協会 専務理事の市原健介氏が進行役を務め、日本のCGの黎明期からCGアートの活動を続けるアーティストで、一般財団法人デジタルコンテンツ協会会長、東京大学名誉教授の河口洋一郎氏と、デイジーの代表取締役 稲垣匡人氏が登壇する。
デイジーは、ゲーム、CGムービーの制作に留まらず、インタラクティブアートや、3DプリンタやVRを駆使し、家電、自動車メーカーのプロトタイピング、コンセプトモデル制作など、最新技術によるB2Bのコンテンツ制作事業を拡大するとともに、国内外でテクノロジーを活用した現代美術の作品制作を積極的に展開している。
■「老眼の矯正に匹敵する精度」と評価された焦点可変レンズシステムが日本初披露
今年8月、カナダのバンクーバーで開催されたSIGGRAPHのE-Techで受賞した「DCEXPO Special Prize」作品、「AutoFocals」(オートフォーカル)は、深度センサーを用いて老眼を矯正する焦点可変レンズシステムだ。メガネに内蔵しているセンサーで目の水晶体の輻輳の状態や注視位置を推定し、それに応じてレンズの焦点を自動調整する。「実際の矯正に匹敵する精度」として、将来性・実用可能性が評価された。今回のデモが日本での初披露となる。
また、今度は逆に、今年のDCEXPOで展示されたものから「SIGGRAPH Special Prize」の受賞技術が決定する。その選考を担当するのが、スターレット氏だ。受賞技術は、来年の7-8月にロサンゼルスで開催されるSIGGRAPH2019のE-Techにおいて、優先して展示される。昨年のDCEXPOでE-Tech2018のチェアが選んだのは、トヨタの生活支援ロボットだった。
■コートニー氏インタビュー
米国で来日の準備を進めるコートニー氏にメールでインタビューし、DCAJとの長年の協力関係と今後の展望について聞いた。
■「オープンソースに似たアイデアの共有方法」
ーーE-techの役割や、実際にE-techがもたらす効果についてどのように考えていますか。
「SIGRGAPHのE-Techは、Computer Graphicsと、特にインタラクティブ技術に関する、新奇的な技術の発見・発掘をする場所です。研究者たちは彼らの独創的な発見を製品の商用化に先んじてデモで公開します。研究者、デザイナー、アーチスト、科学者それぞれが豊かな発想を求め、クリエイティブな技術を共有することを役割としていると思います」
「大きな特徴は、それぞれのプロジェクトがまだ開発中のものである点です。そうした状態が来場者の想像力を膨らませ、開発者と異なる用途に思い至ることもあり、それがきっかけとなって技術の進歩を促すこともあります。こうした効果もE-Techの意義だと思っています」
「これは、ある意味で、オープンソースソフトウェアに似ている考え方で、情報やアイデアを共有することで、新たな価値をつくりだすわけで、先進的なハードウェアを生み出す原動力として、また、開拓精神にあふれた研究者たちが革新的な技術の先進性を生かす場としてE-Techが機能していければと期待しています」
■北米開催のE-Tech、半数以上が日本からの出展
ーー日本は、E-Techに貢献していると思いますか。
「はい。他に類を見ないほど貢献してくれており、大きな影響力を発揮してくれています。実際、カナダのバンクーバーで2018年の夏に開催したSIGGRAPHでは、E-Techの半分以上の出展品目が日本からのものでした。光学系、表示系、あるいはVRにおける触感に関するもの、支援型ロボットや、表情豊かなロボティックスの新たな表示システムなど、幅広い展示による革新的なコンテンツが日本から出展されています。今年11月に開催されるInter BEEとDC EXPOにおいて、最新の技術をこの目で見てみるのを楽しみにしております」
■「情報と人の交流をより活発に」
ーーACM SIGGRAPHとDCAJの長期にわたる関係について、どのように思われますか。また、今後の発展の方向をどのように考えていらっしゃいますか。
「ACM SIGGRAPHとDCAJの関係は、国際的な研究者のコミュニティにおける最も大きな成果ともいえます。国際的な研究者による組織の協力関係の象徴でもあると思っています。今後も共に、E-Techの活動を盛り上げていければと期待しており、さらに、日本におけるACM SIGGRAPH、および、北米におけるDCAJの認知拡大を進めていければと考えています」
「片や、我々の関係性のゴールとしては、DCEXPOとACM SIGGRAPHにおける研究者同士のコミュニケーションとネットワークの構築があります。互いの関係をより価値あるものにするために、交流をより深め、アイデアを共有していくことで可能性を拡充していくためのより多くの方法を見つけることができると考え、とても楽しみに感じています」
【開催概要】
■開催日時:11月15日 13時〜14時30分
■開催場所: 幕張メッセ 国際会議場 2階 201A会議室
■テーマ:SIGGRAPHセミナー アートとコンテンツの可能性(TC-152A)
■内容:コンテンツにアートは不可欠な要素であり、アートはコンテンツそのものでもある。不即不離のアートとコンテンツの関係と将来展望について、創造、学術、ビジネス等様々な観点から、各界の有識者が語り尽くす。
■登壇者 (敬称略):
Courtney Starrett:Seton Hall University准教授/Plural Studios代表/SIGGRAPH2019 Emerging Technologies Chair
稲垣匡人:株式会社デイジー 代表取締役
河口洋一郎:アーティスト/東京大学名誉教授/一般財団法人デジタルコンテンツ協会会長
市原健介:一般財団法人デジタルコンテンツ協会 専務理事(進行)
【聴講には事前登録が必要です Inter BEEのウェブサイトからご登録ください】
https://regist.jesa.or.jp/interbee-jp/
SIGGRAPH Emarging Technologies 2019のチェアを務めるコートニー・スターレット氏
SIGGRAPH 2018の機器展示会場
「老眼の矯正に匹敵する精度」と評価された焦点可変レンズシステムがDCEXPOにも展示される
昨年SIGGRAPH Special Prizeを受賞したトヨタの生活支援ロボット