【INTER BEE CONNECTED2018】「ローカルコンテンツ」「2030年のテレビ」打合せレポート〜地域でのメディアの役割とは〜
2018.11.6 UP
南海放送「ソローキンの見た桜」WEBサイトより
北海道文化放送「恋する文学」WEBサイトより
NHK「ディレクソン」WEBサイトより
INTER BEE CONNECTED最終日、16日の最後のセッション二つは関連性の強い企画だ。13:30-15:00は「ローカルコンテンツ × 持続力のある地域創生」、15:30-17:00は「2030年 テレビは何ができるのか?〜Society5.0時代のメディアの役割〜」。両方とも地域とメディアの関わりをテーマにしており、ローカル局だけでなくキー局も含めて社会にとって放送の役割とは何かを議論するセッションだ。それぞれのモデレーターがたまたま、NHK放送文化研究所の所属でもあるので、この2つのセッションについてひとつの記事でお届けする。読んだみなさんにはぜひ、両方の聴講予約をしてもらえればと思う。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境治)
「ローカルコンテンツ」のセッションでモデレーターを担当するのは、NHK放送文化研究所の吉川邦夫氏。実は吉川氏は大河ドラマ『真田丸』などのドラマづくりに携わっており、地域とコンテンツの関係の深さを体感してきた。大河ドラマの舞台になった地域では、それを利用して地域創生にうまくつなげる事例も多いという。このセッションに登壇するのはいずれも、地域の活性化にも貢献したコンテンツ事例を持つローカル局の面々だ。高知さんさんテレビの植田昌之氏は、新聞連載から生まれた実写×アニメ作品『おへんろ。』を紹介する。南海放送の大西康司氏はオリジナルのラジオドラマが映画に発展した『ソローキンの見た桜』を、北海道文化放送の後藤一也氏は橋本奈々未が出演する、小説を題材にした番組『恋する文学』について語ってくれる。
ローカル局がコンテンツ制作をする意味は、ひと昔前の“番販で収益化する“こととは少し違ってきているという。「映像を作るハードルも下がり、出し口のハードルも下がりました。良いコンテンツがあれば、様々なチャネルでキュレーションされるチャンスが広がっています」そしてそれが地域創生にもつながる、と吉川氏は力説する。「いいものが残せれば、その地域のバイブルになるのです」地域の人びと、そして訪れる人びとが大切にしてくれるコンテンツづくりに、ローカル局こそが取り組むべき時かもしれない。
最後のセッション「2030年 テレビは何ができるのか?」のモデレーターを担当するのは、同じくNHK放送文化研究所に所属する村上圭子氏。政策の中で「Society5.0」の概念が浮上する中、地域社会にとっての放送の役割が見直されている。このセッションでは、「市民にとって究極的に言えば生き残る放送局はどこでもよく、地域と真摯に向き合い、課題の解決に努力する局が選ばれていくはず」との村上氏の考えに基づき、NHKと民放、CATVそれぞれの立場で三人に登壇してもらう。
NHKからは“ディレクソン”活動を統括する花輪裕久氏が登壇。ディレクソンとは、呼びかけに集まった市民に番組企画書を作ってもらい、選ばれた企画を実際に制作する試みだ。この活動を通じて見えてきた公共メディアとしての新たな役割を花輪氏に語ってもらう。となみ衛星通信テレビの宅見公志氏は、インターネットサービスを手掛ける事業者として暮らしの改善に取組むCATV事業者の立場で、地域に何ができるかを紹介してくれる。地域貢献に取り組むローカル民放として近年大きく注目される南日本放送の切通啓一郎氏には、東京中心の発想とは隔絶した独自の理念を語ってもらう。そして京都大学教授で放送法・情報法制の研究者として知られる曽我部真裕氏には、放送業界とはしがらみのない立場で自由に意見や期待を述べてもらうために登壇をお願いしたという。
「民放にはマネタイズの問題があり、NHKは東京主導の組織で地域に貢献できるか、CATVはメディアとインフラの両輪のどちらに比重を置くか、それぞれ悩みは深いと思います。災害時には連携の必要性も言われる中で、どう協業しどう棲み分けるのかを議論したいですね」と村上氏はディスカッションへの期待を語ってくれた。
お二人からセッションの趣旨を聞くだけで、十分に濃い時間となった。当日、登壇者たちの事例や意見を聞けば、かなり充実したセッションになるのは間違いないだろう。ある意味、放送の未来のもっとも重要な”理念”を吸収できる場になるはずだ。ぜひ聴講予約して2つのセッションに続けて参加してもらいたい。持ち帰るべきものが、頭の中にいっぱい溜まると思う。
南海放送「ソローキンの見た桜」WEBサイトより
北海道文化放送「恋する文学」WEBサイトより
NHK「ディレクソン」WEBサイトより