【INTER BEE CONNECTED 2018 セッションレポート】「After Hours! テレビの未来をもう一度考える!」~本音トークから再認識するテレビの課題~
2018.12.21 UP
若年層のメディア総接触時間の構成比(東京)
NHKと日本テレビのコラボ番組の狙いを説明
参加者からも「テレビの未来をもう一度考える」意見が寄せられた
テレビ離れが進んでいると言われているなか、テレビ業界が今できることを考える「After Hours! テレビの未来をもう一度考える!」と題したセッッションがINTER BEE CONNECTED で企画された。約2時間にわたってテレビが抱えている課題や可能性について、聴講者と共に考える場になった。
(テレビ業界ジャーナリスト/長谷川朋子)
パネリストに並んだのは、HAROiD 代表取締役社長安藤聖泰氏、博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所長 吉川昌孝氏、テレビ東京ホールディングス コンテンツ戦略局 企画推進部長 蜷川新治郎氏、NHKエンタープライズ 制作本部番組開発部長 河瀬大作氏の4氏。進行役はNHK 放送総局 デジタルセンター副部長の倉又俊夫氏が務めた。同セッションはタイトル通り、「INTER BEE CONNECTED」の「After Hours=時間外」に行われ、お酒も交えながら本音トークで「テレビの未来」について考える特別企画となった。
テレビを取り巻く環境と現状を理解するため、はじめに博報堂吉川氏が生活者のメディア生活全般を定点観測した時系列定量調査「メディア定点」(2006~2018)結果をもとに、メディアの総接触時間の推移や構成比、若者層のメディア総接触時間の構成比などを紹介した。続いて、登壇者がそれぞれ取り組んでいる番組や事業、コンテンツ戦略についてもプレゼンテーションを行った。NHK河瀬氏はNHKと日本テレビが共同制作し、今年9月22日に同時生放送したテレビ放送開始65周年記念特番『NHK×日テレ同時生放送!テレビ65年 スポーツの力』事例を紹介。「この企画の狙いはザッピングしてもらうこと。テレビは視聴率錬金術のなかで、“ながら”視聴を長年にわたって考えてきたわけですが、能動的に視聴してもらい、体験を作っていくこともテレビの未来を考えた時に必要なことだと思う」と語った。
ディスカッションパートでは、「視聴者との関係性の変化」「テレビ局が変えてはいけないこと、失ってはいけないこと」などについて意見交換が行われた。そのなかで、スマホファースト時代に進む「フリクションレス」に対して、テレビのサービスは「フリクションフル」であるという指摘について、議論が高まった。
博報堂吉川氏は「今は生活者のメディア行動の方がむしろ先にいっている。テレビはそれにアジャストする必要がある。テレビの未来を考える時にそれはひとつの大きなテーマであり、アジャストするだけでなく、どれだけ生活者をびっくりさせて、プレミアムな価値を見出していくことも大事だ」と意見。安藤氏もこれに賛同し、「テレビはこれまでもモノの購買や人の心に影響を及ぼしてきた。さらに、もっと入り込めるサービスや仕掛けを作っていく必要がありそうだ」と述べた。
またNHK河瀬氏は「2極化が進むと思う。本当におもしろいものはフリクションフルであっても、それを乗り越えて共有されていくのではないか。だから、コンテンツメーカーとして、体験の深さやエクストリームなものを作っていかないといけない」と述べた。さらに、テレビ東京蜷川氏は「テレビ番組は最大公約数的なもの。それは変えるべきではない。テクノロジーを使うことで、パーソナライズ化も実現できるはずだ」と提案した。
聴講者参加型で「テレビの未来をもう一度考える」場を作ることも今回のセッションの目的にあった。会場には円卓が並べられ、お酒やおつまみも用意されるなか、聴講者からも様々な意見が飛び交った。会場側司会はメディアコンサルタントの境治氏が務め、来場者に「テレビのどこが不満?」といった質問を投げると、「テレビ番組の作るうえで、規制が厳しくなっている。テレビが守るべきところとは理解しつつも、ある程度のかたちに収まってしまうことに不満」(フリーディレクター)、「視聴者の目線で考えると、テレビの中にいろいろな情報が詰まっているのに、テレビ局に知りたいことを直接ぶつけることができないことが不満」(テレビ局員)などの本音も聞かれた。
盛り上がるなか、モデレーターの倉又氏が「それぞれが切磋琢磨していくことで、テレビの未来に到達できる。さまざまなチャレンジを通して、互いに確認していきたい」とまとめ、会を締めくくった。「テレビの未来」を共有できた場になったのではないだろうか。
若年層のメディア総接触時間の構成比(東京)
NHKと日本テレビのコラボ番組の狙いを説明
参加者からも「テレビの未来をもう一度考える」意見が寄せられた