【SPECIAL】INTER BEE CREATIVEで講演 4K HDRの NHKドラマ「精霊の守り人」 制作者インタビュー「テストでは分からなかった発見が、常にある」
2016.11.14 UP
NHKの大河ファンタジードラマ『精霊の守り人』。来年1月から放送されるシーズン2では、NHKのテレビドラマとしては初となる、4K HDRでの制作が行われている。そのチャレンジの全貌は16日16時からの講演で明らかになるが、一体どんなことが語られるのか、NHK放送技術局の前田貢作氏と、技術局の丸山祐太氏に、事前にお話を聞いてみた。
現実には存在しないファンタジー世界を、説得性のある圧倒的な映像で見せる『精霊の守り人』。4K撮影のドラマというアプローチにとどまらず、HDRでの映像表現も加えていこうというチャレンジが行われている。
ただし、基本的に放送はHDであるという点が第一。そのため以下の3ステップを目指している。
シーズン1●4K SDRで制作したものを、再グレーディングでHDR化
シーズン2●4K SDRと4K HDR、両方のグレーディングデータを保持
シーズン3●4K HDRのグレーディングデータを、4K SDR制作に利用
2016年に放送されたシーズン1に関しては、Rec.709で作られたSDRの映像をベースに、ハイライト部を伸長し、色調補正する事でHDR化している。また、一部のカットでは、S-Log3現像したデータに戻ってHDRグレーディングする事で、SDRでは得られなかった美しい映像を実現している。講演では、このあたりの試行錯誤やどのようなデータ変換を行ったかなどが丸山氏から語られる予定だ。
2017年1月から放送されるシーズン2では、一つの映像素材(RAW)に対し、SDRとHDRの両方のグレーディングデータを保持している。
単にデータの収録を2種類にすればいいというわけでなく、「SDRでの見え方、HDRの見え方」を常に確認しながら収録を行わなければならない。片方が成立していても、片方が破綻していたら意味がないためだ。そのため、現場には、SDRとは別にHDR専用のVEを配置している。
一番気になるのは、SDRで可能だった映像表現がHDRではどうなるのか、といった部分だ。例えば、強い光源によってわざとハレーションさせたり白飛びさせるような表現も、HDRではしっかりと光の階調が収録される。また、黒くつぶしてしまいたい部分なども、見えてしまったりする。
こうした懸念部分は、テスト撮影である程度解決法を見出していたが、実際に撮影に入ってみると「テストでは分からない発見の連続だった」と前田氏は言う。
しかもそれはネガティブ要素ではなく、「こんな表現が可能なのか」といった驚きのほうだったという。
また画作りの部分においても、HDRではSDRとは異なったアプローチがあるという。例えばハイライトの強いシーン。当然、視聴する側の瞳孔が狭くなるわけで、それに合わせたシャドウ部分の調整が必要になってくるなどだ。
そしてシーズン3では、シーズン2でのノウハウを基に、HDRでグレーディングしたものをSDRに変換するアプローチへ挑戦している。HDRでの表現力をどの程度SDRで再現できるのかなど、注目したい部分は多い。
こうしたHDRでの制作上の発見やノウハウ、実際に使った機材やフォーマット、どのようなワークフローで撮影を行ったか、何を基準にしているのかといった部分など、16日の講演で明かされるので楽しみにしていただきたい。
INTER BEE CREATIVE クリエイティブセッション
【 4K HDRへの挑戦! ~「精霊の守り人」シーズン2の制作現場より~】
■開催日時: 11月16日(水) 16:00-16:45
■会場:展示ホール8 INTER BEE CREATIVE内オープンステージ
■聴講無料:Inter BEE会場へ入力のための事前登録が必要になります
事前登録サイト
https://regist.jesa.or.jp/interbee-regist/index.php?lang=0
■登壇者
前田 貢作 氏(日本放送協会 放送技術局 制作技術センター 制作・開発推進部)
丸山 祐太 氏(日本放送協会 技術局 番組施設部)