【Inter BEE 2015】INTER BEE CONNECTED:セッション報告(6)「放送通信連携で新境地を拓くローカル放送局の取り組み」海外販売、Facebook視聴向けドラマなど多彩な展開

2015.12.3 UP

九州朝日放送・香月氏のプレゼン。その明るい語り口を聞くだけで元気になれる

九州朝日放送・香月氏のプレゼン。その明るい語り口を聞くだけで元気になれる

アイデアあふれる田尻氏の事例にはヒントが数多く詰まっていた

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ネットワークの力をうまく活用する益村氏の事例はローカル局のひとつのモデルになる

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「満点ママ」とライオン社の仕組みはスポンサーとローカル局の格好の事例

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 INTER BEE CONNECTED内での企画セッション、2日目の19日最終はローカル放送局の取り組みがテーマ。ネットの連携活用でユニークな事例を持つ4つの局のパネリストが集まって、それぞれの取り組みの概要と背景を語ってもらった。ローカル局の困難が言われる中、非常に活力あふれる4人による新鮮な取り組みは、在京キー局にも勇気を与えるセッションとなった。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)

 このセッションのモデレーターは次世代メディア研究所・鈴木祐司氏。まずは鈴木氏によるイントロダクションからセッションははじまった。鈴木氏の話は、ちょうど前週発売の経済誌・週刊ダイヤモンドが組んだ特集、『テレビを殺すのは誰か』の内容を取り上げながら展開。中でも、同誌面に掲載された「地方局122社経営苦境度ランキング」をそのまま掲載し、4人のパネリストが所属する局が何位かをわざわざ示したスライドがあり、場内の空気が少々重さを帯びた。だがそれに続く4人のプレゼンはその重さを跳ね飛ばすような明るく元気なものだった。(上写真=ローカル局をテーマにしたこのセッションも人気が高く、あっという間に満席になった)

■自社制作率22.7%を誇る九州朝日放送 オウンドメディアでも積極姿勢
 九州朝日放送・香月和宏氏は同局の意欲的な姿勢を紹介。自社制作率は22.7%と高く、ネット活用でもオウンドメディア上でのニュースをはじめとする番組配信に取り組み、YouTubeに限らず他社チャンネルへも積極的に配信していることを説明した。オリジナルドラマ『福岡恋愛白書』は昨年3月に世界同時配信し、それが海外10カ国での番販・配信につながったという。さらに「どこにでもウケる番組作りを地方から」のかけ声のもと、『暗闇三太』などアニメのミニ番組を制作し海外でも販売できたという。香月氏と同局の多面的で意欲的な活動には、キー局さえ学ぶべき点が多いのではないだろうか。

■熊本放送 地域の花火大会をラジオとUstreamで生中継
 続いて熊本放送の田尻浩章氏がプレゼンに立った。田尻氏は、「放送」は「免許を持って公道を走る車道」に、「ネット」は「自由に歩いたり走ったりする車道の脇の歩道」にたとえ、「ポイントは車道と歩道の間」だという考え方をまず述べた。事例としては『山鹿灯籠祭り納涼花火大会』で、花火大会の模様をラジオとUstreamで生中継する画期的な取り組みを紹介。さらに自治体の情報をデータ放送で紹介する「デタポン」も解説した。

■広島テレビ 「子育てムービーコンテスト」で動画投稿システム構築
 広島テレビ・益村泉月珠氏は、2007年に新規ビジネスの担当になり、地産全消を命題に与えられた。そこで益村氏は同局が取り組んでいた子育て支援イベントをもとにWEBサイトとして『子育て応援団』を立ち上げ、全国30局のテレビ局と連携した。そして子育てムービーコンテストを展開し、NTTドコモの協力を得た。この時開発した動画投稿システムは、報道向けに日テレ系列で利用されているという。さらに子どもの予防接種の情報発信もスタートし、データ放送で制作してネットワークで配信してもらった。これは民放連の受賞対象にもなった。益村氏の活動は、子育てを軸にネットワークをうまく巻き込んで広げており、ローカル局の手法として参考になりそうだ。

■テレビ新広島 Facebookで視聴するライオン提供のドラマを制作
 最後にテレビ新広島・香川正二郎氏が、同局の人気情報番組『ひろしま満点ママ』のSNSの取り組みをプレゼンした。同番組は月金ベルトの午前中の主婦向け番組で、ファンを大切にするプロデューサーが4年前からFacebookページを立ち上げた。番組休止中も活動するなどでファン数を大きく伸ばしている中、ライオン社とのコラボの話が進んだ。番組出演者と制作陣でホームドラマを制作し、放送ではなくFacebook上で視聴させる企画。ドラマの続きでライオンの研究者が登場し、歯磨きや選択のコツを紹介する仕組み。ライオンとしてはこの取り組みで広島県内の流通事業者に製品をプッシュできたという。

■現実直視しつつ突破口を見いだす強い意志
 後半のディスカッションでは様々な議論が展開された。4人とも非常に前向きな姿勢であるのが印象的で、ローカルの現実、電波媒体の今後の難しさを直視しながらも、突破口を見出そうとする意志に頼もしさを感じた。どのパネリストも、地域メディアらしさを追求しながら同時に新しい取り組みや世界も視野に入れた果敢さを打ち出していた。ローカル局の今後は、こうした人材ひとりひとりに託されていることをあらためて知ったセッションだった。

九州朝日放送・香月氏のプレゼン。その明るい語り口を聞くだけで元気になれる

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アイデアあふれる田尻氏の事例にはヒントが数多く詰まっていた

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ネットワークの力をうまく活用する益村氏の事例はローカル局のひとつのモデルになる

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「満点ママ」とライオン社の仕組みはスポンサーとローカル局の格好の事例

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#interbee2019

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