【コラム】ソニーピクチャーズ・イメージワークス VFX制作拠点をカナダ・バンクーバーに インド・スタジオも3月末に閉鎖

2014.2.7 UP

 ソニーピクチャーズ・イメージワークス(SPI)は、これまで同社が強く推し進めてきた「VFX制作拠点をカナダのバンクーバー支社にシフトする」というプランを、更に拡大させる方針を示した。1月21日、カルバーシティのSPI本社で行われた全社ミーティングの場で、全クルーに向けて発表された。SPIはまた、チェンナイ(インド)にあるインド・スタジオを3月末をもって閉鎖する事を決定し、1月29日に社内告知した。SPIは2012年7月にも、ニューメキシコ・スタジオを閉鎖しており、これによってカルバーシティ(米ロサンゼルス)にヘッドクォーターを残しつつ、VFX制作はバンクーバー(カナダ)へ段階的にシフトすることになる。関係者からの情報によれば、カルバーシティでの次期プロジェクトとして期待されていた2015年に公開予定作品のVFX作業は、大部分がバンクーバー・スタジオへとアサインされる事が全社員へのメール通達によってアナウンスされたという。(上写真はSPI本社)
(鍋潤太郎)

■不作続きにより迫られる事業見直し
 SPIは、これまでにも多くの人材をバンクバーへとシフトする方策を推し進めて来た。今回のバンクーバーへのシフトの一環として、カルバーシティの開発チームの一部をバンクーバーへ異動させ、対象となる人員については、カナダへの引っ越し等に掛かる費用を会社が負担する。しかし、異動の対象外となる人材については、レイオフになる可能性が残されているという。
 米報道によれば、SPIの親会社である米ソニー・エンターテインメントは、2013年度に映画「キャプテン・フィリップス」が興行成績$105million(日本円で約109億円相当)とヒットしたものの、夏以降に公開されたローランド・エメリッヒ監督の「ホワイトハウス・ダウン」、ウィルスミスが親子で共演した「アフター・アース」等の話題作が期待以下の興行成績で終わったという。また、傘下のソニー・アニメーション・スタジオが制作した劇場用長編アニメーション作品の数々もメガヒットには至らず、現在のところ次期アニメーション作品のラインナップは白紙の状態という。こうした中、ソニー・エンターテインメントでは株主や投資家の理解を得る為、全社レベルでの事業見直しを進めており、今回の発表はその一環と見られている。

■インド・スタジオを3月で閉鎖
 同様に、コスト削減の一環として、SPIインド・スタジオを3月末に閉鎖する。インド・スタジオで勤務するクルー約100名は解雇される見通し。
 SPIは2007年2月、インドのアニメーションサービス会社のFrameFlow LLCを買収する形でImageworks Indiaとして発足させ、まず手始めとして「Spider-Man3」「Click」「Ghost Rider」等の作品における2D部分の処理を担当。設立当時インドでは60人のアーティストが勤務しており、当時は「最終的に300人規模まで成長させたい構え」というプランを打ち出していた。近年では、「メン・イン・ブラック3」(2012)や「アメイジング・スパイダーマン2」(今年4月公開)のVFX制作に参加するなど、SPIグループの一員として制作を支えて来た実績を持つ。
 ハリウッドのVFXスタジオやアニメーション・スタジオがインドにスタジオを新設する動きは2005年頃から静かな「ブーム」となり、最初に進出したリズム&ヒューズを皮切りにSPI、ドリームワークス等が相次いでスタジオをオープンした。しかし、昨年秋にはリズム&ヒューズ・スタジオがインド支社で大規模なレイオフを実施、そして今回のSPIインド・スタジオ閉鎖のニュースも加わると、一連の「インド・ブーム」にブレーキが掛かった感がある。 

■海外の助成金や税優遇に対抗する動きも
 今回のバンクーバーへの拠点の集約はカナダのBC(ブリテッシュ・コロンビア)州が実施する大規模な税優遇制度を想定しているとみられる。今のところ、本社はそのままカルバーシティで継続させるという。
 昨年夏頃から、米VFXコミュニティーでは、カナダを中心とする諸外国の税優遇制度に対抗する為、CVD法(Countervailing duties =相殺関税、anti-subsidy duties=助成金対抗税ともいう)の適用をアメリカ合衆国政府に請願する計画に取り組む動きが起こっている。このCVD法は、外国政府が実施する助成金や税優遇策によってアメリカの自国産業が損害を被ったと認められた場合、外国政府から還付金を得た企業に対して、関税を掛ける事で相殺させる事が可能だという。もし仮にこのCVD法が適用されれば、現在海外に流出しているハリウッド映画の撮影及びポストプロダクションが、アメリカ国内に戻ってくる可能性がある。

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