【Inter BEE 2015】INTER BEE CONNECTED:セッション報告（２）4K制作で先行するローカル局や各プラットフォーム 　将来性に期待し多彩な実験的取り組み「4Kはフロンティア」

　INTER BEE CONNECTED内での企画セッション、初日18日の２つ目のセッションは「映像表現としての4Kの可能性」と題して、4K番組の制作や配信について実績を持つパネリストが集まって事例を披露した。4K番組は地上波での放送はまだロードマップが決まっていない。だがローカル局や各プラットフォームではその将来への期待から実験的取り組みが進んでいる。このセッションでは、4Kについての最新の取り組みをまとまって聞くことができ、非常に貴重な場となった。
（コピーライター/メディアコンサルタント　境 治）

　このセッションでは次世代放送推進フォーラム、通称NexTVフォーラムでまさに4K放送を推進する元橋圭哉氏がモデレーターを務め、同氏の呼び掛けによって4Kにすでに取り組んでいる６名のパネリストが集められた。

■最新の技術で故郷を見つめ直す　「4Kの絵の強さ」生かす
　石川テレビ・木下敦子氏は今年の８月から『4Kで綴る映像詩・新ふるさと人と人』という15分のレギュラー番組の制作に取り組んでいる。この春の新社屋完成を「第三の開局」と位置づけ、最新の技術で故郷を見つめ直す番組を、というコンセプトで制作に着手した。毎週、試行錯誤を繰り返しながら感じたのは、4Kの絵の強さ。「絵に力がありすぎてナレーションがうざい」と感じることも多いそうで、石川県がこんなに美しいとはと再発見する日々だという。

■雄大な自然を撮影「4Kはフロンティア」
　北海道テレビの濱中貴満氏はアルゼンチンをロケし、氷河などの雄大な自然を撮影して番組にした。既存の撮影とは多くの違いがあり、例えばピントが合いにくいなどで戸惑ったという。また夜の映像はこれまでとあまり変わらないので昼間の風景を中心に撮影した。感想としては「4Kはフロンティア」で、作り手として果敢に取り組みたいと感じているとのこと。

■12月1日から期待のケーブル4Kが開始
　須高ケーブルテレビの丸山康照社長は、同局だけでなくオールケーブルの番組制作の取り組みについてプレゼンした。4K番組を全国統一編成で放送するもので、「ケーブル4K」と名付けられている。12月1日からとのことで、スタート間近の新鮮な発表となった。参加局も今後増えていくというので期待したい。

■「4Kを生かすには4Kを理解することが重要」
　いまじんCR・堀川健二氏からは番組制作会社としての4K番組制作についてプレゼンがなされた。同社は『行列ができる法律相談所』『有吉反省会』など地上波キー局の人気番組を制作している。そんな彼らが挑戦して制作したのが『4K水中絶景散歩〜慶良間諸島国立公園』だ。取り組んでみて、4K映像の魅力を生かした番組作りには、プロデューサーやディレクターが4Kを理解していることが欠かせないことなどを課題として報告した。

■ひかりTV 4K-VODで700本のラインアップ
　さらに、ひかりTVを運営するNTTぷらら・佐藤久道氏と、スカパーを運営するスカパーJSATの軽部岳大氏からは、それぞれ4K番組を編成・提供してみての経験が報告された。ひかりTVでは4K-VODを昨年開始し、現在は700本のラインアップを揃えている。4Kチャンネルを放送しているスカパーでは、普及期の問題がまだまだ多いが、それらが解決すれば4Kにはメリットしかないと力強い感想が語られた。

■「普及への課題は多いが、普及が進めばメリットを享受できる」
　最後に元橋氏からパネリストに今後への課題について投げかけられたが、回答としてはいずれも普及がまだまだの段階での、機材や環境・理解の不足に対するものだった。スカパー軽部氏の発言を思えば、今後普及が進めば課題も解決し、4Kのメリットが享受できるようになると言えるだろう。パネリスト各人の新鮮で前向きな報告により、4Kへの期待が高まるセッションとなった。