【プロダクション】アニメインターナショナル 初の自社スタジオを開設 編集からMAまで柔軟な制作ワークフローを実現 ウェブ配信・イベントなど情報発信の基地としても活用
2012.12.3 UP
収録ブース
クリエーターが簡単な編集とMAを作業できる
Ustream用スタジオ
徳久氏(左)と櫻井氏
テレビや劇場用アニメーション、ゲームを制作するアニメインターナショナル(東京都新宿区)は、ポストプロダクション設備の稼働を開始した。東京・練馬から本社を移転するに当たり、素材管理システム「インタープレイ」で、編集室やアフレコ室を接続し制作環境を強化した。
■「映像技術奨励賞」受賞の実績を持つ実力派アニメ制作会社
同社は人気アニメ『放浪息子』(フジテレビ)などを作成。原作の水彩タッチ画を再現したとして、日本映画テレビ技術協会の映像技術奨励賞を受賞した実績を持つ。
9月には、約130人の社員のうち仕上げや背景などのデジタル工程と制作部門の半分が練馬区から移転。10月から段階的に稼働を開始した。
■初の社内大型制作設備 1フロアに各工程を集約し「インタープレイ」で管理
社内に大がかりな制作設備を構えるのはこれが初となる。グループ会社を1フロアに集め彩色や撮影(合成)、編集、音入れの各工程を集約するため、アビッドの素材管理システム「インタープレイ」と素材共有サーバー「ISIS5000」(32テラバイト×2)を設置し、編集室と約15人でアフレコできるMA室を接続した。
さらに、スタジオからやや離れた制作エリアにも、スタッフが自身で映像と音声を編集できるワークルームや、ディレクター用の映像チェックブースも用意し、ネットワーク化と素材管理システムの利点を生かしている。スタッフ試写用のシアターやラッシュルームも設備した。
■編集とMAの連携をスムーズかつ柔軟にするワークフローを構築
インタープレイはエンジンとトランスコーダー、ストリーム、バックアップの各筐体で成る。チェック用にFTPなど外部ネットワークに上げる際は「カーボン」トランスコーダーも利用する。
システム構築を担当した編集担当の櫻井崇氏は、「例えばメディアコンポーザーでの編集後インタープレイでチェックインすれば、MAで同じデータを簡単に再現する。逆に編集側からも、何チャンネルにも分かれている音を簡単に読むことができる」と話す。
アニメの場合、映像完成に先立って音楽や音声制作が始まるため、進行に合わせて映像データをインタープレイに渡せば、MAが次にチェックインする際、最新データを反映して作業できる。
「絵が完成して音声と合わせると、もう少し直したいことがよくある。その際、社内にサーバーシステムがあればすぐ修正し、お互いが納得いくまで何度もやりとりできる。外部にデータを渡さないセキュリティーの高さも利点が高い」(同氏)
編集装置はエディット室に「メディアコンポーザー」を、フィニッシング室に「メディアコンポーザー」と「DS」を設置した。インハウスでの作業は始まったばかりでエディターは3人と少数。このためポストプロ部門でのアクセス権限は細分化していない。
アフレコスタジオは、アビッド「S5フュージョン」と「プロツールス10」を使用。ブースは約15人を収容し、マイク4本で収録できる。室内はプロデューサーなどが前に座れる構造。フロアの広さを生かし、音響効果スタッフもゆったり作業できる広めの卓を設置した。
S5フュージョンは、プロツールスの制御とミックスが可能。操作面からDAWを切り替えたり、トラックをフェーダーに混在して展開することもできる。フェーダーの幅も手になじむという。
レコーディングエンジニアとして協力する徳久智成氏は「クオリティーの高い音が求められるため、機材は最小限だがヘッドアンプなど質の高いものを選んだ」と話す。
プラグインは「ウェーブスマーキュリー」「アルチバーブ」「アイゾトープ」など。ラージスピーカーはムジークエレクトロニクス「RL901」で、ラウドネスはヌーゲンオーディオ製。KVMやUSBセレクターは安定性を重視しアダー社製品を、アナログ-MADIの変換には「XT-SRC」を使う。システム設計・施工はタックシステム。
■劇場作品に加えTVアニメも制作へ ウェブ配信などでイベントも実施
今後は劇場作品に加え、1クール2作品程度を制作する予定。ユーストリームなどのウェブ配信スタジオと多目的スペースでは、声優や作品のファンを招いたイベントを開催していく。
【所在地】東京都新宿区新宿6-27-30新宿イーストサイドスクエア13階
収録ブース
クリエーターが簡単な編集とMAを作業できる
Ustream用スタジオ
徳久氏(左)と櫻井氏