【Inter BEE 2014】空前絶後! 9対のラインアレイスピーカー「フライング」設置!! 「誰も見たことがないプロオーディオの現場を体験せよ」 PA担当 ビィズ・クロコ サウンドデザイナー 大内健司氏 直前インタビュー
2014.11.18 UP
ビィズ・クロコのサウンドデザイナー 大内健司氏
マル秘内部資料を一部公開。入り口、ステージ、リスニングポイントの位置関係が分かる。
会場となる幕張のイベントホール。9000人が収容できる規模だ。
「ぜひ会場に足を運んで、ラインアレイスピーカーの世界を堪能してください」(大内氏)
Inter BEE 50年を記念する催し「Inter BEE EXPERIENCE」の第1部「ラインアレイスピーカー体験デモ」では、9社のラインアレイスピーカーが一堂に会し、それぞれの性能を存分に発揮する。通常、どれだけ大きなコンサートホールでもラインアレイスピーカーは1式しかない。それが、この日、幕張メッセのイベントホールには、9セットものラインアレイスピーカーが出そろうのだ。
■片側だけで最大約1tのスピーカーを9セット「フライング」設置
想像してみて欲しいーーー。 最大9,000人が収容できるホールとはいえ、これだけのラインアレイスピーカーをどうやって並べるのかーーーーー。それぞれに与えられた時間はわずか30分。昼休みの30分(13:00-13:30)を除き、30分ごとの間隔で次々と名だたるラインアレイスピーカーが本領を発揮する。主役となるスピーカーは、自分の出番が来たら10分でベストポジションにいなければならないのだ。
今からお伝えしておこう。11月20日の幕張メッセ イベントホールでは、スピーカーは、床置きの「グランドスタック」設置ではなく、「フライング」設置、すなわち、吊り下げた形で試される。朝10時から夕方17時まで、世界最高峰のラインアレイスピーカーが9セット、フライング設置された状態で、次々とその性能が試される。各スピーカーの重量は、片側だけで800kgから1tはある。これだけの重量の装置が、9セットも空中に吊り下げられた光景の迫力は、現場に来てみなければ感じることはできない。
■ステージも聴き手もプロの世界
ある意味、無茶ともいえるこの荒技を実現するには、ホール全体の強度計算からしなければならない。当然だが、これらのスピーカーに音を供給するアンプもそれぞれ9セット居並ぶことになる。電力も通常のコンサートの9倍必要になるわけだ。
企画主催者のクリエイティブな発想とともに、それを支える多くのエンジニア、アーチストの存在がなければ、日本で初となる「ラインアレイスピーカー9社競演」は実現しなかっただろう。
さらにいえば、各メーカーが技術の粋を集めて作り上げた"渾身の作品"ともいえる製品が、同じ音源、環境で比較され、その実力が白日の下に晒される。聞く側もまた、コンサートの運営会社から、レンタル会社、大型コンサートを手掛けるPA担当者などなど、いずれも百戦錬磨のプロフェッショナルが集まる。 ステージ側もプロ、そして聞く側もプロという、いわば「戦場」ともいえるその場を仕切ることができる人物はそれほど多くは存在しないだろう。
そういう意味では、この会場でPAを務めるビィズ・クロコのサウンドデザイナー 大内健司氏こそ、「しきり役」にふさわしい人物に違いない。数多くのアーチストのコンサートのPAを担当。また、テレビ朝日の生放送音楽番組『ミュージックステーション』(Mステ)のPA担当として長年活躍している。Mステの特別番組として、年末に開催される「スーパーライブ」は、2005年からこの幕張メッセ・イベントホールが会場となっている。
数多くの生放送の音楽演奏やライブ・コンサートのPAを担当し、しかも会場となるイベントホールを知悉している大内氏こそ、今回のPAは適役といえるだろう。
■世界的にも珍しい屋内でのラインアレイスピーカー競演
20日の本番を前に、東京・青山のビィズ・クロコのオフィスを訪ね、大内氏に今回のイベントの構成やイベントに対する思い入れなどを聞いた。
ーー今回のイベントについて、最初にお話があったとき、どのような印象を持ちましたか。
「私自身、それはぜひ聞いて見たい、という思いとともに、 9つものラインアレイを吊すという話を聞いて『ほんとにやるの!?』と思いました(笑) 」
「ラインアレイスピーカーの試聴会は、日本でもありましたが、ステージ上にグランドスタック設置した状態で聴く形態でした。ラインアレイは本来、フライング設置して使うものですから、今回のような設置こそ実際の環境を想定したものといえるのですが、コンサートでも、1台吊すだけで大変な作業なのを知っているので、最初は大丈夫かな、と思いましたね」
ーースピーカー、それもラインアレイスピーカーを比較できる機会というのは世界的にも珍しい?
「海外では、ドイツのprolight+soundというイベントで行われています。あと、ラスベガスでもありますが、いずれも屋外に設置して比較しています。屋内での比較視聴は世界的にも珍しいかもしれませんね。通常、我々プロでも、どのホールにどういうスピーカーがあるかを全部把握してはいません。ましてや、同じ環境で異なるスピーカーを聴き比べることができるということはめったにない状況です。スピーカーの特性や違いを知ることは、PAにとってもコンサートなどの参考になりますね」
ーー今回の9社のラインアップは、どのようにして決まったのですか。また、会場ではどのように設置されますか。
「メーカーや販売会社から参加申込みがあり、9社が揃いました。小型、中型、大型とそれぞれ、特徴を持った製品です」
「スペースや重量バランスの関係もあり、すべてを横に並べることはできないので、前列に小型スピーカー、後列に中型・大型スピーカーを並べて吊しています」
ーー各社の持ち時間、30分はどのような内容になるなのでしょうか。
「30分のうち、はじめの5分は全製品共通の内容です。ナレーションと音楽のCD音源、それに加え生バンドによるリファレンス楽曲の演奏です。残りの25分は、各社が思い思いの趣向を凝らして、自社の製品の特徴をアピールする時間になります」
■各社が腕によりをかけたプレゼン 「最高の性能を発揮して欲しい」
ーー大内さんの今回の役割は、どのようなものでしょうか。
「サウンドディレクター兼エンジニアとして、会場の環境を整え、各社に最高の条件で音を出してもらうように気を配っています。国内で初めて音を披露する製品もあるので、ぜひ良い条件で最高の性能を発揮して欲しいと思っています」
ーー会場でオススメの聴きどころ、聴き方はありますか。
「ラインアレイスピーカーの特性を生かすため、会場内にターゲットとなるリスニングエリアを設けています。18m×18mのエリアですが、各社は、ここに向けてチューニングをします。通常、プロの聴き手ばかりの試聴会では、一カ所に留まらず、このエリアを中心に移動しながら音の変化を確認します。リスニングポイントから外れた部分にはちゃんとねらい通り"音が行ってない"ということも、確認するわけです」
「スピーカーの調整は、音圧だけでは計り知れないものがあります。そうしたサウンドの機微の部分に、各社の特徴が出てくるはずです。それを聞き比べることも、今回の『体験デモ』の醍醐味といえるでしょう」
「ハイテクを駆使したラインアレイスピーカーですが、それぞれ設計思想やデザインが異なります。1台のスピーカーの中に何十台ものDSPを搭載しているものや、アンプが別になっているものなどいろいろあります。ステージ前には、それぞれのアンプも展示してありますので、そちらも確認してもらえます。各社とも、今回のイベントに向け、チューニングからプレゼン内容まで、腕によりをかけ、相当な力を入れて取り組んでいますので、ぜひ会場に足を運んで、ラインアレイスピーカーの世界を堪能してもらいたいですね」
【Inter BEE EXPERIENCE「第1部 ラインアレイスピーカー体験デモ」】
企画:一般社団法人日本エレクトロニクスショー協会(JESA)
会場:幕張メッセ イベントホール
日時:11月20日(木) 10:30-16:40
入場:無料(Inter BEE 2014登録制)
後援:一般社団法人日本舞台音響家協会、日本舞台音響事業協同組合
ビィズ・クロコのサウンドデザイナー 大内健司氏
マル秘内部資料を一部公開。入り口、ステージ、リスニングポイントの位置関係が分かる。
会場となる幕張のイベントホール。9000人が収容できる規模だ。
「ぜひ会場に足を運んで、ラインアレイスピーカーの世界を堪能してください」(大内氏)