【プロダクション】デジタルドメイン 香港 サン・イノベーション・ホールディングス傘下に

2013.8.26 UP

ロサンゼルスのデジタルドメイン社屋

■ギャロッピング・ホースの親会社が買収される
 大手VFXスタジオ、デジタルドメイン(本社ベニス / ロサンゼルス)が、香港の上場企業サン・イノベーション・ホールディングス(奧亮集團)の傘下となった。
 7月末に発表したプレスリリース、及びハリウッドの各メディアの報道によると、過去10ヵ月にわたる手続きを経て、デジタルドメインの権利70%を保有してきた米国ギャロッピング・ホース(小馬奔騰)の親会社を買収したことによるもの。残りの権利30%については、引き続きインドのリライアンス・メディアワークスが保持している。
 サン・イノベーションは、香港に拠点を置く多国籍企業で、1992年に設立された。中国本土の不動産やメディア関連企業に積極的な投資を行う投資会社で、香港の証券取引所に上場している。

 昨年9月のデジタルドメイン倒産オークションの際、売却額は合計3,000万ドル(約30億円相当)だったが、今回サン・イノベーションは、それを上回る、5,050万ドル(約50.5億円相当)でデジタルドメインの権利を獲得。結果的に、米国ギャロッピング・ホースは差額によって投資利益を得られる事になったという。

■CEO交代
 今回の買収により、サン・イノベーションのエグゼクティブ、ダニエル・シャア(Daniel Seah)氏がデジタルドメインの新CEOに就任。これを受けて昨年9月以来、「デジタルドメイン3.0」のCEOを務めて来た、生え抜きのエド・ウルブリッチ氏は降格し、プロデューサーとしてデジタルドメインに留まるという。

 エド・ウルブリッチ氏は1993年のデジタルドメイン設立当初からの生え抜きメンバーの1人で、主にコマーシャル部門を率いて来た。氏が携わったCMの数々には話題作も多く、その中には2002年に日本でも話題を呼んだ大塚製薬の「ポカリ・スエット / 水中テニス編」等が含まれている。また近年では、「ベンジャミン・バトン」「トロン:レガシー」等の映画作品のVFXにも携わっている。
 ちなみに、ウルブリッチ氏は「デジタルドメイン3.0」のネーミングについて、昨年開催されたVES サミット2012の中で、次のように説明していた。
 「私は、デジタルドメインが設立された1993年をデジタルドメイン1.0、2006年に売却されたのが2.0、長編アニメーション・スタジオの新設や中東アブダビのスタジオ新設が浮上した頃が2.5、そして倒産処理完了後の再スタートを3.0と呼んでいます」

 ちなみにサン・イノベーションのホームページには、「デジタルドメイン3.0」がメディア・エンターテインメント・セグメントの欄に既に登場している。
 http://www.suninnovation.com/company_contacts.php

■サン・イノベーションによる買収の影響は?
 デジタルドメインは、6月13日に行われた全社員を対象としてカンパニー・ミーティングにおいて、映画VFX制作作業の大部分をバンクーバーに移管する方針を発表したのが記憶に新しいが、今回の買収及びCEO交代によって、今後の運営方針にどのような影響が見られるのかが、業界では注目されている。
 買収プランの中には「利益率および収益性を向上させる為、今後数年間で、比較的低技術要件とその作業の約30%を中国やインドへ徐々に委託する」という内容も含まれているというが、これが実際にどの程度実施されるのかは、現段階では全く未知数と言える。

■業界内外や各方面で対策を講じる動き 西海岸のVFX業界の未来は
 現在、西海岸を中心とするVFX業界では、カナダやイギリスが実施している大規模なTAXインセンティブによって仕事の大部分が外国へと流れてしまい、非常に深刻な空洞化が課題となっている。
 前述のデジタルドメイン・バンクーバーへの移管方針に関連し、新CEOのシャア氏は、米報道の中で次のように述べている。「我々は人材をバンクーバーへとシフトしているが、それは本意ではない。本当の理由は、クライアントであるメジャー映画スタジオが、税優遇制度の恩恵を受けられる地域でのVFX制作を強く要求している為だ」

 また、これらの報道によると、シャア氏はジェリー・ブラウン / カリフォルニア州知事に対して、カリフォルニア州での「ポスト・プロダクションに対するTAXインセンティブの拡張」を訴える構えもあるという。
 一方、これと同時期にして、カリフォルニア州のVFX業界内では、プロジェクトの海外流出に歯止めを掛けるべく、法的な対策を講じる為の具体案が「ようやく」動き始めた。
 また、7月1日からロサンゼルス市の新しい市長に就任したばかりのリック・ガーセッティー氏は、「LA市内での映画制作振興支援」を自身のマニフェストの1つとして掲げており、カリフォルニア州での映像業界に対するTAXインセンティブについて前向きな姿勢を示している。
(鍋 潤太郎)

#interbee2019

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