【NEWS】BスカイB 世界初4K衛星生中継のトライアルを実施 「衛星は広帯域ビデオに理想的」

　英国の有料衛星放送事業者であるBスカイB（以下、スカイ）は8月31日、サッカーのイングランド・プレミアリーグ「ウェストハム・ユナイテッド対ストーク・シティ」の試合を、4Kで衛星生中継するトライアルを実施した。同社は昨年10月、UEFAチャンピオンズリーグの試合を4Kカメラで収録。クローズドサーキットでは上映しているが、衛星生中継は初。今後、制作・放送機器の進化、テレビの普及を見ながら、4Kの市場性を探り、事業化を検討する意向だ。
（映像新聞 信井文寿）

■ソニー 4Kカメラ「PEM-F55」を4台使用
　中継を担当したスカイ・スポーツのマネージングディレクターであるバーニー・フランシス氏は今回の4K衛星生中継のトライアルについて、「4K解像度の生中継を実体験することで、必要な技術や機材、課題を確認するとともに、その将来性を探ることが目的」と語る。サービス開始を意味するものではないという。
　同生中継は、ウェストハム・ユナイテッド対ストーク・シティの試合会場（上写真）であるアップトンパークから、ソニーの4Kカメラ「PEM-F55」を4台使って実施した。
　この4K映像を、テレジェニック社のOBバン、ユーテルサットの衛星プラットフォームを介して、ロンドン郊外のアイルワースにあるスカイのブロードキャストオペレーションセンターに配信。4Kモニターに映像を表示している。
　トラポンの使用帯域幅は54MHzで、変調方式は16QPSK。伝送ビットレートは104Mbps。映像は3840×2160ピクセル（4K／QFHD）／50p。映像コーデックはH.264、オーディオはステレオ。
　「F55」は、スタジアムの高い位置からの広角用、同様の位置からロングレンズを使い、よりフィールドに寄った撮影用に各1台、ゴールの背後に2台を配置。またサイドラインで1080／50pカメラも使用した。
　カメラからOBバンまでは、ファイバーアダプターにより4KのRAWデータを送信。ここではソニーのプロセッサー「MPU4000」を使って4K映像を、1080／50p信号4ラインでOBバンのスイッチャーに送っている。
　スイッチャーからの4ラインはエリクソン製H.264エンコーダー（4:2:2）4台で同時に信号処理。4本のビデオストリームにそれぞれ25.75bpsを割り当て、それを多重化。104Mbpsで衛星伝送している。PTS（表示タイミングのタイムスタンプ）も付随させて正確なデコーディングを実現した。
　スカイのオペレーションセンターで受けた4K／50p映像は、同スタジオのソニー製84型4Kテレビに表示した。同テレビは4枚のフルHDパネルを継ぎ目なく組み合わせてQFHDを表示できるようにしたものだ。英国内では2万5000ポンド（約390万円）で市販されているという。ちなみに55型は3999ポンド（約62万円）で販売されている。

■「4Kスポーツ生中継の将来性を確認」
　スカイ・スポーツのバーニー・フランシス氏は今回4K生中継のテストについて、「4Kのスポーツ生中継の将来性、衛星プラットフォームが広帯域ビデオのサポートに理想的であることが確認できた。ただし生中継に4Kを活用するには課題も多い。研究開発を続けつつ、家庭への4Kテレビの浸透速度、市場の広がりを観察していく。4Kテレビが普及した段階では、スカイは有利な位置にいるだろう」と話す。
　放送戦略部門のチーフエンジニアであるクリス・ジョン氏は、「ピッチ上の選手の動きに正確にフォーカスを合わせるため、フィールドの深さが課題だった。ワイドショットや複数のフレームショットを多く使ったが、パン撮影には問題はなかった。ただ、モーションブラーは課題と言える。影や日光が映像にかかってしまうこともあったので、今後調整する必要があると感じた。全体としてはHDを進歩させることができたと思う」と述べた。
　スカイは4Kの将来性を見極めるため、受像機メーカーやコンテンツ制作会社などと話し合っているという。
　今回の4K生中継は、スカイのサッカー中継責任者であるトニー・ミルズ氏が指揮した。OBバンを提供したテレジェニック社は、野外中継のサービス全般を提供するプロダクション。2001年に英国初のHD対応OBバン、10年に世界初の3D対応OBバンの運用を開始した実績がある。