【CEATEC JAPAN 2013】拡大する4K映像の用途 対応製品も各社から 4K対応 有機EL、タブレットなど産業用途に期待感
2013.10.20 UP
パナソニックの4Kタフパッド(写真上も)
ソニーが展示した初の民生用4K対応カムコーダー「FDR-AX1」
京セラブースで展示されたLGエレクトロニクスの曲面有機ELテレビ
三菱電機は4Kレーザー液晶を出展
CEATEC JAPAN 2013(10月1-5日/千葉・幕張メッセ)では、テレビ、ディスプレーの4K化が一気に進展した。パナソニック、ソニー、東芝、シャープなど、主要テレビメーカーはいずれも「4K」を前面に自社技術・製品をアピール。4K有機ELパネルも登場したほか、PC用のディスプレーやタブレット端末も4K対応が進んでいた。4K放送への期待がある一方で、医療や設計、監視、ミュージアム、ゲームといった幅広い産業用途への期待感が高まっている。
■パナソニックが「4K World」をアピール
テレビメーカー各社の4K対応は劇的に拡大した。55型以上の高級機をすべて4Kに移行することが各メーカーの戦略である。HDMI2.0への準拠も進み、4K/60p、4:4:4入力という最高画質への対応も可能になっている。放送やエンターテインメントだけでなく、幅広い産業応用を志向している点もメーカー共通の考え方だ。
展示会場では、パナソニックが4Kに大きく舵を切ったのがインパクトを与えた。初日、10月1日に開催したパネルディスカッション「始動!4K/8K時代」において、同社AVCネットワークス社常務CTOの岡秀幸氏は、「現在のハイビジョン放送の際には、EPGやデータ放送、B-CAS、ダビング10など、さまざまなスキームがあり、4Kでもこれと同じ状況になる」と予測。4Kにおいても単にセット・機器をつくるだけでなく、システムLSI、標準化活動、編集・オーサリングソフトといった制作ソリューションなどをトータルで提供することを明言した。
展示ブースでは、55型4K有機ELのプレゼンコーナーを中央に据え、4Kコンシューマープロダクツ、4Kビジネスソリューションのコーナーを設置。4K一色のデモを繰り広げた。
民生用では65型4Kスマートビエラを展示し、動きの解像感を向上する4Kフレームクリエーション、空間の解像感を高めることで奥行き感や立体感を出す4Kファインリマスターエンジンといった技術を披露。HDMI2.0準拠による60p映像の品質も紹介していた。また、4Kゲームも実演。ディスプレイポート1.2aによってPCからのゲーム映像を4K/60pで表示し、精細感と滑らかさを持つ新しいゲームの世界を示した。
今回、力を注いでいたのが「4Kタフパッド」(12月発売)だ。これは重さ約2.35キログラム、厚さ12.5ミリメートルの世界最薄・最軽量の20型4K IPSα液晶パネル搭載タブレット端末。電子タッチペンの開発を見直し、手書きのような書き味を実現している。
同社では4Kタフパッドを、CAD/CAMによるデザイン業務、医療画像、電子カタログなどBtoBの領域にソリューションとして展開していく。同コーナーでは書類の電子化やミュージアムにおける絵画のデジタル化などの応用例をデモしていた。
パナソニックのビジネスソリューションのコーナーでは、4Kの業務用モニター「BT-4LH310」(12月発売)、AVCウルトラコーデックを搭載する開発中のカメラ「4Kバリカム」をモックアップ展示。ポータブルレコーダーやスタジオカメラ、スイッチャーも4K対応機を開発する計画も示している。
■映画「相棒 劇場版Ⅲ」はソニーの4Kカメラで撮影
ソニーは4Kカメラ「PVM-F65」に続き、今年2月から「同F55」「同F5」を発売。4Kの制作環境を整え、世界各国の4K映画制作を促進してきた。前述のパネルディスカッション「始動!4K/8K時代」では、ソニー業務執行役員SVP中長期技術渉外担当の島田啓一郎氏が登壇し、日本では既に映画館の約9割がデジタル化し、その内4割強が4K化していること、現在世界で30作品以上の4K映画製作が進行していることを紹介している。ソニーは、昨年から4Kテレビを発売している。4K/60p撮影対応のハンディカム「FDR-AX1」も発表するなど放送などのプロ領域から家庭の視聴環境まで、4K化を強力に推進している。
今回のCEATEC JAPANでは、解像度を増幅する超解像エンジン「4K Xリアリティプロ」、色の領域を拡大する「トリルミナスディスプレイ」の技術を紹介していた。
ソニーは55、65、84型の計5機種の4K「ブラビア」を展開しているが、今回は65型をメインに展示した。4Kの解像度をより感じられるのは55型よりも65型ということのようだ。HDMI2.0に準拠し、60p入力にも対応する。
現在、ソニーの直販サイトでは55型が40万円台に対して65型は69万円ほどと差が大きい。1インチ1万円以下になれば65型への見方も変わってくると見ている。
コンテンツについては、2014年に予定されているサッカーW杯の4K中継に期待しているが、現在、4Kテレビ購入者にHD画質を4Kにアップスケーリングした映画コンテンツをプレゼントすることも実施している。
ブースでは、2014年のゴールデンウィーク公開予定の映画『相棒 劇場版Ⅲ』がソニーの4Kカメラで製作されることも紹介されていた。
■4K 有機ELも各社から 京セラブースにはLGの曲面有機ELテレビが展示
4K有機ELもパナソニックが55型、ソニーが56型の試作機をそれぞれ展示。繊細な画質が際立ち、大きな関心を呼んでいた。パナソニックの試作機は、オール印刷プロセスを用いており、有機ELの課題である量産化への道を開いている。発売時期は未定。また、京セラのブースでは、同社が展示した世界最薄、厚さ1ミリの超薄型ピエゾフィルムスピーカーを、LGエレクトロニクス製の曲面有機ELテレビに搭載してデモを行った。同テレビはすでに日本以外で発売を開始している。
東芝も大画面の4K化を積極的に進めている。「始動!4K/8K時代」のパネリストに登壇した東芝デジタルプロダクツ&サービス社統括技師長の安木成次郎氏は、国内市場での50型以上の大型ディスプレーにおける4Kの構成比がここにきて急速に伸びているとの見方を示した。
そのうえで、55型以上のフルHDテレビ「Z7シリーズ」を4Kにシフトしてくことを明言。「Z8Xシリーズ」として、58、65、84型の3サイズの4Kテレビをラインアップ。6月から国内に投入している。
東芝では来年からの4K放送を待たずに4Kが楽しめるよう、写真モードを搭載。また、プロ用モニターに近い4K映像表示ができる画質設定の値をウェブで公開するといったサービスを実施している。サイネージなどBtoBへの展開も計画している。世界市場に向けて販売していく。
同社は、複数フレーム、色、カラーテクスチャー復元、画像の自己合同性の各超解像技術を持っており、これを組み合わせて、2Kコンテンツも4Kに近い品質で表示できるようにしている。また、4Kの入力画像を分析し、最適な映像にする技術も搭載。クラウドサービスでの4Kコンテンツの提供にも取り組む意向だ。
シャープは、70、60型のAQUOS4K液晶テレビを展示。特徴は、「モスアイパネル」を採用した点だ。12年のCEATECで発表し、同年末から4K液晶テレビに搭載している。反射を抑えつつ、クリアパネルのようなつやのある映像を実現できる。
フルHDパネルで4K相当の高精細表示を実現する「AQUOSクアトロンプロ」を搭載した52型液晶テレビも参考出展し、注目を集めた。
三菱電機は、同社初の民生用4K液晶テレビの試作品をお披露目した。発売時期は未定。同社の得意技術である高色域を実現したレーザー光源をバックライトに採用した4K液晶テレビの投入で他社との差別化を図る。
パナソニックの4Kタフパッド(写真上も)
ソニーが展示した初の民生用4K対応カムコーダー「FDR-AX1」
京セラブースで展示されたLGエレクトロニクスの曲面有機ELテレビ
三菱電機は4Kレーザー液晶を出展