【NEWS】ドリームワークス・アニメーション 事業再構築へ向け制作拠点を縮小・統合し収益態勢を改善へ 長年の制作拠点PDI/ドリームワークスは閉鎖

2015.1.25 UP

今回の事業再構築で閉鎖となった制作拠点PDI/ドリームワークス

今回の事業再構築で閉鎖となった制作拠点PDI/ドリームワークス

かつてのPDIのロゴ

かつてのPDIのロゴ

 映画製作会社ドリームワークス・アニメーションSKG(DWA)は1月22日、同社の中核事業であるアニメーション事業の再構築へ向けた新戦略計画を発表した。 
 アニメーション事業の全面的な見直しの一環として、役員も含めた大幅な人員削減や、年間で制作するアニメーション作品数を減らし、収益性を上げることを目指すという。アナリスト向けのカンファレンスコール(電話会議)において、CEOのカッツェンバーグ氏は、製作拠点の一つであるPDI/ドリームワークスを閉鎖し、希望するスタッフをロサンゼルス・グレンデールにあるもう一つの製作拠点に統合することも明らかにしている。北カリフォルニアに位置するPDI/ドリームワークスは長年、DWAのアニメーション映画を支えてきた。PDI/ドリームワークスの母体ともいえるPDI(パシフィック・データ・イメージ)は、ILMやピクサーと並ぶ、商用CGプロダクションの先駆け的な存在だった。
(ザッカ・メッカ 山下香欧)
 
■「コアビジネスへの回帰」を強調
 DWAは、映画「シュレック」、「マダガスカル」、「カンフーパンダ」、最近では「ヒックとドラゴン」など、日本でもおなじみの劇場用アニメーション作品を手掛けてきた。この数年、テレビやデジタルコンテンツ事業に着手しており、メディア企業を買収して事業拡大を進める中で、財務状況が悪化していた。カッツェンバーグCEOはカンファレンスコールで「今まで多くの時間を企業の拡大に注力してきた。これからはコアビジネスに戻り、ドリームワークス・アニメーションの再編に100%のコミットを持って尽くしていく」と話している。
 同社のプレスリリースによると、映画本数の削減など縮小計画を次のように記している。
 今後3年で、オリジナル作品6本を市場に投入。年間オリジナル作品を1本、続編作品を1本という構成で実施する。2017年に公開予定の「Captain Underpants」に関しては、アニメーション制作をすべて外部発注することで制作費を低減する。オリジナル作品も、それぞれ制作予算を2500万ドル縮小し1億2000万ドルにおさえる。

■新社長にベテランプロデューサーを抜擢
 上記の発表に先立つ1月4日に発表したリリースによると、今回の構造改革の一環として、1月初めにフィーチャーアニメーション部門のチーフクリエイティブ・オフィサーのビル・ダマスク氏を解雇。さらに、マーケティング・チーフのドーン・タウビン氏と最高執行責任者のマーク・ゾラディ氏も退陣し、副会長のルー・コールマン氏は3月末で引退するという上層部の人事も発表している。ゾラディ氏は、元ウォルトディズニースタジオ モーションピクチャー部門の社長で、昨年7月に現在のポジションに就いたばかりだった。
 そして、新たに同社のベテランプロデューサーである二人を共同社長に起用する。この二人の共同社長は、長年DWAでリードプロデューサーを務めた、ボニー・アーノルド女史とミレイユ・ソリア女史だ。両氏は、これまでに社内で8本の作品を手掛け、合わせて35億ドル以上の総利益を挙げている。

■500人を削減し2200人態勢に
 前述のカッツェンバーグ氏によるカンファレンスコールでは、さらに雇用全体の18%に当たる500人の雇用削減を実施するとしている。PDI/ドリームワークスでは22日の午後、カッツェンバーグCEOからスタッフ全員に向けて説明会が開かれ、同拠点を閉鎖し、LAとオペレーションを統合することが明らかにされた。PDI/ドリームワークスにいるスタッフの半数はLAグレンデールキャンパスに移動できる機会が設けられる。解雇の告知は既に先週から始まっており、順次異動についての個人面談が始められている。
 DWAはリリース文で、再編に関連して約2.9億ドルの税引前費用を負担する見通しを示しており、そのうち約6000万ドルを退職手当や拠点を移動する雇用向けの資金として費やすという。雇用削減の後、DWA全体の雇用数は2200人程度になる。
 カッツェンバーグCEOは、ソフトバンクをはじめ、玩具メーカーのハスブロと21世紀フォックスとの合併やスタジオ売却について交渉の場を持ったことが過去に話題になっていたが、今回のカンファレンスコールでは話に上がらなかった。

■CG技術の進化に貢献したPDI
 DWAは1994年、映画監督、プロデューサーのスティーヴン・スピルバーグ、レコード会社経営者のデヴィッド・ゲフィン、元ディズニー幹部のジェフリー・カッツェンバーグの3人によって設立された。今回閉鎖となったPDI/ドリームワークスは、1995年、PDI(パシフィックデータイメージング)がDWAのアニメーション事業部と合併して誕生。長年にわたりドリームワークスのアニメーション制作拠点として重要な役割を担ってきた。母体であるPDIは1980年に設立したCGプロダクションの老舗で、商用CG制作プロダクションとしてピクサーやILMと並び先駆者的な存在だった。1980年後半からは映画やテレビCMの特殊効果(VFX)やキャラクターアニメーションの作品を通してCG技術の進化に貢献した。
 マイケルジャクソンの”Black or White”のミュージックビデオのモーフィング技術など、自社開発の技術によりクリエイティブな映像制作に貢献してきた。PDI/ドリームワークスとして制作した初めてのオリジナルアニメーション作品「Antz」(1998年)の成功で、3Dアニメーション制作へ本格的に参入した。


(1月22日のプレスリリース)
http://www.prnewswire.com/news-releases/dreamworks-animation-implements-new-strategic-plan-to-restructure-feature-film-business-300024425.html
(1月4日のプレスリリース)
http://ir.dreamworksanimation.com/files/doc_news/2015/FNL_Production-Leadership_v001_w9ov6p.pdf
(deadline.comの記事)
http://deadline.com/2015/01/dreamworks-animation-bonnie-arnold-mireille-soria-bill-damaschke-1201340878/
(閉鎖を発表したことなどを紹介しているスタッフのブログ)
http://www.eric3d.com/blog/pdi-1980-2015

今回の事業再構築で閉鎖となった制作拠点PDI/ドリームワークス

今回の事業再構築で閉鎖となった制作拠点PDI/ドリームワークス

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